ポルシェ911タルガ【試乗記】
全天候型オープンエアマシン 2001.11.13 試乗記 ポルシェ911タルガ(6MT/4AT)……1110.0万円/1190.0万円 ポルシェのカブリオレでないオープンモデル「タルガ」。993タルガで採用されたガラスルーフに加えて開閉式リアウインドウを備えた新型タルガを、河村康彦がオーストリアで試乗した。全体の1割
往年の名レース“タルガフローリオ”からその名を採ったポルシェ911タルガの初代モデルが登場したのは36年前。1965年にお披露目の舞台となったのはフランクフルトモーターショー。そして、最新の911タルガが初めてぼくらの前に姿を現したのも、先日開催されたフランクフルトショーの場……というのは、もちろんポルシェ社によって仕組まれた演出と考えるべきだろう。
“21世紀型タルガ”のベースは、先日996型となって初めてのフェイスリフトを受け、「『ターボ』同形状の目玉」と「ボクスターSに400ccの差を付ける心臓」を手に入れた最新のカレラ・クーペ。ただし、クーペに用意される4WD仕様やターボエンジン搭載モデルは、「タルガには今後も用意するつもりはない」とポルシェは言い切る。「タルガを選択するようなユーザーは、4WDのシャシーなどには興味を示さないハズ」というのが、一応同社のオフィシャルコメント。しかし、それにしては『カブリオレ』に4WD仕様が設定されているが……と突っ込んでみると、「シリーズ全体の10%程度というタルガの台数で、多くのバリエーションを抱えることは経営的にも得策ではない……」と本音も漏れ聞こえてくる。
タルガだけの世界
インナースライド方式になったガラス製のトップ部分と、Cピラー部から分離されて開閉の出来る“ガラスハッチ”を成すリアウインドウ部分により構成されるのがニュータルガのルーフシステム。ボディのシルエット自体は、ほとんどクーペのそれと同イメージだ。
クォーターウィンドウには専用品を用いているし、ルーフラインもわずかに異なるというタルガだが、特にサイドビューを“遠目”で見た場合、ほとんどクーペと識別がつかない。ルーフシステムにより重量はクーペの70kg増だが、サスペンションのリファインでボディ下がりを防いでいるので、ボディ高に変わりはない。
一方で、正面及び真後ろからの眺めには「タルガだけの世界」がある。ルーフ前端のパネル部分は、ガラス部分と視覚的調和を図るためにブラックアウトされているし、リアビューではガラスの両サイド部分に「ピラーが立っている」ように見えるのが特徴。ルーフ部分との2トーンを明確にアピールしたいのならば、選ぶべきは明るいボディカラーだ。ぼくは明るいシルバーが気に入った。と言っても、個人的好みとしてもしも996を買うとしたら、それはクーペのボディになるとは思うけれど……。
雰囲気こそがウリ
実際に触れてみてのクーペとの最大の違いは、ボディの剛性感でも走りのテイストでもなかった。それは「室内の明るさ」に尽きる! ルーフを閉じた状態でもキャビンが極めてルーミーなことは、クーペにもカブリオレにも真似のできないこのクルマだけの特権だ。
センターパネル下部にあるスイッチでルーフを開いてみると……確かに開放感は大きいが、やはりカブリオレには遥かに及ばない。と言うよりも、シビアな表現をしてしまえば、空気の侵入をほとんど感じないことも含め、「ちょっと幅広のサンルーフ」という感じがしないでもない。ちなみに、ガラス二枚を通して見ることになるオープン時の後方ミラー視界はぼんやりと暗く、「クルマの大小は分かっても車種までは判別出来ない」という感じ。
もうひとつの売り物である開閉可能なハッチゲートは一見収納性に優れそうだが、開口部が極めて高い位置にあるので、重いものの出し入れは、ひとりでは不可能に近い。後から積もうとすると、エンジンがジャマだしね。
というわけで、カブリオレよりクーペに近い走り味をキープ(実は、重心位置が上がったことに対処すべくスタビライザーが強化された)したこのクルマは、やはり雰囲気こそが売り物の一台。カブリオレの軟派イメージには抵抗があるが、クーペの閉塞感も息苦しい――そんな“全天候型オープンエア・マシン”が最新の911タルガなのだ。
(文=河村康彦/写真=ポルシェジャパン/2001年11月)

河村 康彦
フリーランサー。大学で機械工学を学び、自動車関連出版社に新卒で入社。老舗の自動車専門誌編集部に在籍するも約3年でフリーランスへと転身し、気がつけばそろそろ40年というキャリアを迎える。日々アップデートされる自動車技術に関して深い造詣と興味を持つ。現在の愛車は2013年式「ポルシェ・ケイマンS」と2008年式「スマート・フォーツー」。2001年から16年以上もの間、ドイツでフォルクスワーゲン・ルポGTIを所有し、欧州での取材の足として10万km以上のマイレージを刻んだ。
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