ポルシェ・ボクスターS(6MT/5AT)/ボクスター(5MT/5AT)【海外試乗記】
ニューバージョンの“残念” 2002.07.06 試乗記 ポルシェ・ボクスターS(6MT/5AT)/ボクスター(5MT/5AT) ポルシェのミドシップモデル「ボクスター」に、マイナーチェンジが施された。見た目の変化は地味だが…。イタリアはローマで開かれた国際試乗会で、ジャーナリスト河村康彦が乗った。好調なセールスを背景に……
ポルシェのミドシップモデル「ボクスター」がマイナーチェンジを受けた。2001年に行われた「911」のフェイスリフトと較べると、その変わりばえはご覧のように、はるかに控えめだ。1996年の誕生から6年間、ボクスターは、ポルシェ社が「10年前には危機的状況にあった弊社の経営状況を、焼跡の不死鳥のごとく蘇らせた」と自ら語るほどの、大成功を示したのである。だから、“弟分”と見た目のイメージが接近し過ぎている911のように、大規模なフェイスリフトを行う必要など、ボクスターには全く必要なかったというわけだ。
かくして見た目の変更点は、いまだ衰えを知らない世界での好調なセールスを背景に、小規模なものとなった。前後樹脂バンパー部分の若干の変更(フロントのそれは、エアロダイナミクスや、ラジエターへの冷却風取入れ性能の向上という役目も果たすという)や、120km/hで姿を現すリアスポイラーの形状変更。そして前後ウインカーレンズのクリア化などが、“新型ボクスター”をこれまでのモデルと見分けるための、主だった外観上の違いだ。そうそう、ボクスターのソフトトップにも、911カブリオレが行ったリアウインドウの樹脂からガラスへの変更が、予想通りに実施されたことを付け加えておく。
ダッシュボードは911
一方、インテリアのリファインも、911マイチェンの内容を知った誰もが想像できるものだ。すなわち、ダッシュボード両サイドの空調吹き出し口に差し込む、高級車として納得のいかないチープなカップホルダーを、センターパネルに格納するタイプへ変更。これまで用意されなかったグローブボックスは、容量5リッターでA4サイズの書類が収納可能なものが、911同様新たに装着された。むしろ、911とボクスターでセンターパネル部のデザインが一部異なっていたダッシュボードが、「マイナーチェンジ後の911用に統一された」と表現するのが適切だろう。
オプション設定で、BOSE社製10スピーカーサウンドシステムが用意されたのもニュースである。ミドシップの場合、大容量ウーハーシステムを設置するスペースの捻出は、悩むところだ。しかしボクスターの場合、これまでボディ幅一杯の小物入れが用意されていたシート背後のスペースをあてることで、容量11リッターというバスレフボックスを搭載することに成功した。
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クリア度を増したエンジンサウンド
では、注目の走りに関わるリファインについて。結論からいうと、3.4から3.6リッターへと、200ccの排気量アップによって一挙に20psもの出力向上を果たした911のマイナーチェンジほど、劇的なものではなかった。
新しいボクスターのラインナップは、従来と同様。2.7リッターの「ボクスター」と、3.2リッターを搭載する「ボクスターS」の2種類が用意される。前者には5段MTと5段AT“ティプトロニック”、後者には6段MTと同じく5段ティプトロニックが組みあわされる構成も同じだ。エンジン出力は、前者が228ps、後者が260psとなり、それぞれ8psアップした。これは、「吸気側に設けられるバルブタイミングシステム“バリオカム”を、従来の切り替え式から連続可変式に変更し、カムシャフト回転角を40度に拡大したこと。さらに、エンジンコントロールコンピューターの進化が、パワーアップを可能にした」というのが、担当エンジニアの説明である。
走りのテイストは、両モデルとも従来型のそれを彷彿とさせる。率直にいうと「8psアップ」をハッキリ体感するのは簡単なことではない。それよりも、“バリオカム”の進化に合わせたカムチェーン形状リファインなどの効果もあってか、背後から耳に届くエンジンサウンドが「そのクリア度を増した」ことが印象に残る。
感動的なフットワーク
フットワークの仕上がり具合は、相変わらず感動的。国際試乗会に用意されたモデルは、すべてオプション設定の18インチシューズを履いていた。だが乗り心地を含め、大径タイヤを無難に履きこなすところはさすがである。ただしルーフを開くと、クローズ時に較べてオープンカー特有のスカットルシェイクが、確実に1ランク増す。この点が気になるなら、「S」では標準、「ボクスター」では1サイズアップとなる17インチタイヤにとどめるのが賢明だろう。ただし、18インチを履いたその姿が何とも魅力的であることは、疑いのない事実ではあるのだが。
というわけで、どうやら「価格は据え置き」を前提に考えられたフシのある新型ボクスターは、再び“最新・最良のモデル”と呼ぶに何ら抵抗のないオープンスポーツに仕上がっていた。ただし“今回も”残念だったのは、1リッター当たり81.79psという「S」の排気量あたりの出力である。これは、84.85ps/リッターの、標準のボクスターに及ばない。そういえば、ライバルBMW「M3」の出力は、343psもある。となれば、ボクスターに“300psバージョン”の登場を要求しても、バチは当たらないような気がするのだけれど……。
(文=河村康彦/写真=ポルシェジャパン/2002年7月)

大川 悠
1944年生まれ。自動車専門誌『CAR GRAPHIC』編集部に在籍後、自動車専門誌『NAVI』を編集長として創刊。『webCG』の立ち上げにも関わった。現在は隠居生活の傍ら、クルマや建築、都市、デザインなどの雑文書きを楽しんでいる。
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