プジョー307SW(4AT)【海外試乗記】
“青空天井”の足がいいヤツ7人乗り 2002.04.20 試乗記 プジョー307SW (4AT) ヨーロッパにもミニバンの波が押し寄せつつあるのか。「5+2」のシートレイアウトをもつプジョー307の派生車種「SW」に、自動車ジャーナリストの笹目二朗が乗った。「5+2」のシートレイアウト
プジョー「307」は、2002年度の「欧州カーオブザイヤー」を獲得したクルマである。2001年10月の「第35回東京モーターショー」に出品されたそのワゴン版「307SW」が上梓された。日本では、2002年の秋に販売される見通しだ。
通常、フランス車のワゴンは「ブレーク」と呼ばれるが、このSWの“S”は、本格的なワゴンというより、むしろ“スペース”とか“スポーツ”を意味すると考えられる。つまり、今後SWに続いて通常のブレーク仕様も追加される可能性がある、ということだ。
307SWは、2001年秋のIAA「フランクフルトショー」で初披露されたが、この度いよいよ販売される段階を迎え、プレス試乗会がモロッコで行われた。
307SWの特徴は、7人を収容できるモノスペース的なボディにある。フォルクスワーゲン「ゴルフ」や、オペル「アストラ」などが属する「M1セグメント」にしてはもともと大柄な「307」をベースに、大きなバブル状のガラスルーフを与えたのだ。
ホイールベースとリアオーバーハングは、ハッチバック車と比較してそれぞれ98mmと120mm延ばされた。車内にソケット式の独立したシートを都合3列に配置、プジョーはこのレイアウトを「5+2」と呼んでいる。フル7シーターではないものの、車検証の上では7名乗車が許され、さらにいろいろなシートアレンジができると説明される。「5+2」シータ−を実現したため、全長は4419mm、全幅は1757mm、全高は標準装備のルーフレールを含んで1544mmで、ハッチバックと較べて209mm長く、14mm高くなった。
搭載されるエンジンは4種類。ガソリンは1.6リッター(110ps/15.0kgm)と2リッター(137ps/19.4kgm)、ディーゼルはやはり2リッターで、ターボチャージャーの過給圧とインタークーラー有り無しの違い、90ps/20.9kgmと108ps/25.5kgmという2種のチューンが用意される。トランスミッションは、ガソリンには5MTと4AT、ディーゼルは5MTのみの組み合わせだ。
SWならではの装備とESP
サスペンションは、基本的に307ハッチバックを踏襲する。リアサスペンションのトーションビームは、トレーリングアームと左右のそれをつなぐビームが一体式に溶接されたタイプ。デフォーマブルクロスビームは、下向きU字断面のケース内に中空のアンチロールバーが組み込まれる。
スプリングレートは荷重変化が大きくなった分、ハッチバックより硬めに設定。ダンパーは、荷重変化に対応する感応型が採用された。これは荷重が増すとピストンが奥の方にある異なる溝に達し、オイルの流通抵抗を変えて減衰力を上げる仕組みになっており、一種のストローク感応型である。だから多人数乗車に対応することはもちろん、軽荷重時においても、大きな段差などを通過する際には、大きくストロークすれば自動的に調整された強い減衰力が働く。
流行の(?)電子デバイスとしては、4輪のブレーキを個別にコントロールして乱れた挙動を強制的に修正する、「ESP(Electric Stability Program)」が採用された。これはガソリン/ディーゼルを問わず、全車に標準装備される。前輪駆動モデルのESPは、FR(後輪駆動)車のようなオーバーステア対策だけでなく、路肩に脱輪して砂利の上に片輪が乗るスプリットミューのような場合にも効くから、スロットルを踏んだまま危機を脱したい状況にも有効である。
ハンドリングのよさ
307SWのSWたる所以は、スポーツカーのように楽しめるハンドリングを有することだ。そもそも307が欧州カーオブザイヤーを獲得した理由は好ハンドリングにあるからして、当然、307SWにもそれを期待した。
ハンドリングを考えるうえでのマイナス要因として、重心高を上げることになる、広大なガラスルーフによる上屋の重さがある。しかし通常のドライブでは、ロール感は急激に「グラッ」と傾くことなく、ハッチバック同様「シューッ」とニュートラルな特性を保ったまま水平にまわっていくものだった。旋回中さらにパワーをかけても、反対にスロットルを閉じても、クルマの姿勢にほとんど影響なく、軌跡を変化させない。このニュートラルステア感は大したものだ。うれしいことに、ハッチバックモデルで見られたハンドリング面での長所は、SWもまったく変わっていなかったのである。重心高の違いを感じるのは、テストとして故意に細かく左右にステアリングを振ってやった時だけで、一般的な状況やS字カーブの切り返し程度では、これを感知するのも難しい。
もうひとつ、98mmのホイールベース延長ゆえ「アンダーステアが増す」「挙動がおとなしくなる」といったことを考えた。ところが、ニュートラルなステア感覚が、旋回時に長くなったホイールベースを感じさせることはなかった。
ドライブフィールに与える影響としては、タイヤサイズの違いが大きい。1.6やディーゼルの低パワー版に装着されていた「195/55R15」の方が、大きいエンジンを積む「205/55R16」装着車よりも軽快さが感じられた。
トーションビームによるリアサスペンションの動きは、バタバタ上下動する動きに対し、位相差をもって独立した作動感がある。横力に対しては、コーナー途中に段差などがあると、日本車の同形式のものは横っ飛びするものがあるが、307SWのそれはそうした傾向になく、接地性の良さが抜群である。
2リッター+4ATで300万円前後
シートアレンジは写真でご覧いただく方が判りやすいだろう。
2列目シートの乗り心地に関しては、「このままズーッと居てもいい。敢えて前のシートへ戻りたいとは思わない」ほど良かった。これはフラットにして上下Gや変位をまったくといっていいほど感じさせない、プジョー独特の乗り心地の良さが効いている。
3列目シートは、足元の余裕がないことは明白ながら、短時間の送迎程度なら我慢できるレベル。ただし、2列目シートを外して使うことも可能だから、その場合は足をのばしてゆったり座ることができる。
ヘッドクリアランスはどこの位置でもたっぷりあり、全席に3点式シートベルトがちゃんと備わる。
最後に、307SWの特徴である大きなガラスサンルーフについて述べる。これはフロントスクリーンと連結しているかのような開放感があり、広い室内が更に広く感じる。心配される熱の問題は、電動のシェードを使わなくても、意外と暑くならなかった。ガラスの熱対策処理が効いている。開放することはできなくともバブル形状をとるゆえ、頭上の空間はたっぷりしており、“青空天井”の気持ちよい空間を提供してくれる。
プジョー307SWの日本仕様は、2リッター+4AT右ハンドルの1種のみ。価格はおそらく300万円を切る設定で販売されるだろう。
未定ながら後に続くブレークモデルは、1.6リッターのマニュアルモデルも導入されるかもしれない。
(文=笹目二朗/写真=プジョー/2002年3月)
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大澤 俊博
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