フォルクスワーゲン・パサートワゴンV5(5AT)【ブリーフテスト】
フォルクスワーゲン・パサートワゴンV5(5AT) 2001.10.18 試乗記 ……361.0万円 総合評価……★★★非凡な平凡
2000年のパリサロンでフェスリフトを受け、フォルクスワーゲンの次期フラッグシップ「D1」似の顔つきとなったニューパサート。ヘッドランプカバーがクリアになり、グリルやボディ各部にクロムモールといった“光モノ”が配されて、現行トップモデルたる上級感を……って、気取っちゃってェ。ひとたび「黒内装+控え目な焦げ茶ウッドパネル」のドライバーズシートに座れば、地味な眺めに感じるドイツの質実剛健。
「実用」という言葉を詰め込んだ空荷のパワートワゴンが走り出す。街なかではやや硬め、高速巡航ではフラットで、峠でもハンドリングが破綻することなく、マジメ一徹、ご主人に尽くす。
注目は狭角15度のV5ユニット(170ps、22.4kgm)。前後方向のコンパクトさがジマンのエンジンは、SOHCながら、DOHC同様、片バンクそれぞれのカムが両バンクの排気もしくは吸気バルブを駆動する。直5ツインカムユニットのシリンダーが、互い違いにズレたと考えるとわかりやすい。計20個の吸排気バルブが交差しながら駆動する、いかにもメカオタクなジャーマンエンジン。アウディ由来のV6モデルより、血が濃い、かも。ステアリングホイールを握るドライバーに、しかしその特異さをまったく感じさせないのもまた非凡な平凡。
【概要】 どんなクルマ?
(シリーズ概要)
1996年8月にセダンが登場した4代目パサート(VWいうところの5代目。シリーズIIIのフェイスリフトを一代と数えるため)。アウディA4用をストレッチしたフロアパネルを用いるフォルクスワーゲンの旗艦である。97年に、ワゴンと4WDモデル「シンクロ」が加わった。2000年10月に開催されたパリサロンで、いわゆるビッグマイナーチェンジを受け、ドアとルーフ以外のボディパネルを一新した。本国では、1.6リッター直4から用意されるが、日本には、当初1.8リッター直4ターボと、2.8リッターV6の2種類、2001年10月30日から販売が開始されたニューバージョンは、1.8ターボに代わった2.3リッターV5(FF)と、従来通り2.8リッターV6(4WD、FFは受注生産)がラインナップされる。注目の4リッターW8モデル(275ps、37.7kgm)は、2002年の日本導入が予定される。
(グレード概要)
パサートワゴンも、セダン同様、2.3リッターV5のFFモデルと、2.8リッターV6のヨンク版「シンクロ」が用意される。V5、V6車の装備の違いは、前者がファブリック内装、後者が「レザー+アルカンタラ」のパワーシートとなること。また、V6モデルは、フルレザー仕様もオプション(11.0万円)で選択可能だ。ヘッドランプをガスディスチャージ式にできるのもV6のみ(スライドルーフ、革内装、HIDランプのセットオプション:33.5万円)。
【車内&荷室空間】 乗ってみると?
(インパネ+装備)……★★★
リファインなったエクステリアに対し、ガンコに“質実剛健してる”インパネまわり。単一質感のシボに覆われた黒基調のフェイシアに、こげ茶のウッドパネルが渋い。メーターナセル内も黒く、細いシルバーのメーターリングが新パサートの地味なアクセント。計器類の文字は小さいが、回転、速度計とも径が大きいので、視認性に問題はない。ヘッドランプをつけると、薄い紫色のバックライトが目に妖しい。
(前席)……★★★
いかにも素っ気ないファブリックシート。ザラッとした触感の硬めのシートで、大きめのサイズが平板な座り心地に拍車をかける。見た目に控え目なサイドサポートは意外に有効。運転席、助手席とも、ダイヤル式のランバーサポート、ラチェット式のハイトコントロールレバーが備わる。バックレストの調整もまたダイヤル式だ。
(後席)……★★★
なぜか前席よりクッション豊かなリアシート。標準的な大きさの座面は後下がりで、背もたれはやや寝気味。前席バックレストが大きくえぐれ、またボクシーなスタイルなので、膝前、頭上とも、スペースに不満はない。ただ、天井が薄いグレーになっているとはいえ、ブラック内装だと視界に黒が多く、閉塞感が強い。オプション装備10.0万円也のサンルーフは必需かも。小物入れになったセンターアームレストには、カップホルダーも用意される。ダブルフォールディング時に、前に倒した座面の裏側に、ヘッドレストを抜いて倒した背もたれを支える爪が備わるのも、ゲルマン流凝り性?
(荷室)……★★★★★
電磁式の開閉ボタンをもつハッチゲイト。ゲイトの裏側のクッションがキレイにデザインされているのが印象的。ラゲッジルームの大きさは、床面最大幅118cm、奥行き110cm、パーセルシェルフまでの高さ50cm、天井までは88cm。ストラットタワーの張り出しがごく小さく、使いやすそうな形状だ。カーペットに幾筋ものリブが入り、重量物を滑らせて奥に入れることができる。フロアはしっかりとした厚いプラスチックで、床下にはフルサイズのスペアタイヤが収納される。センターに、室内が汚れないようカバー付きのトランクスルーが備わるほか、後席をダブルフォールディングすれば約175cmもの奥行きが確保される。
【ドライブフィール】 運転すると?
(エンジン+トランスミッション)……★★★
特異なヘッドメカニズムをもつV5ユニット。スムーズだがややゴロゴロしたフィールに、V5という予備知識があれば、「なるほど4気筒と6気筒の中間だ」と納得することができる。実用トルクは十分で、1590kgのボディをモリモリ加速する。けっして静かなエンジンではないが、100km/h巡航時の回転はわずか2000rpmなので、長距離でもノイズで疲れることはない。5段ATは、渋滞がちの街なかドライブでもショック少なくスムーズ。DSP(Dynamic Shift Program)と呼ばれる学習機能付き。リポーターは、シフトスケジュールに不満を感じなかった。スポーツモードたる「ティプトロニック」は、クルマの性格上ほぼ不要。
(乗り心地+ハンドリング)……★★★
フロントは、アルミ製アームを上下2本ずつ用いて機能上ダブルウィッシュボーンとした「4リンク」、リアはアウディ発祥のトーションビーム。これは、左右のトレーリングアームを捻れるビームで結んだ半独立式だ。街なかではやや硬いファームな乗り心地、一方、高速ではフラットで直進性高い走りが身上。味は薄まったがいまだに“ドイツっぽい”。ハンドリングは、よく言えば安定志向、悪く言えば鈍くさい。
(写真=難波ケンジ)
【テストデータ】
報告者:webCG青木禎之
テスト日:2001年9月28日から29日
テスト車の形態:広報車
テスト車の年式:2001年型
テスト車の走行距離:1430km
タイヤ:(前)205/55ZR16 91W/(後)同じ(いずれもMichelin Pilot HX)
オプション装備:−−
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(2):高速道路(7):山岳路(1)
テスト距離:416.7km
使用燃料:56.0リッター
参考燃費:7.4km/リッター

青木 禎之
15年ほど勤めた出版社でリストラに遭い、2010年から強制的にフリーランスに。自ら企画し編集もこなすフォトグラファーとして、女性誌『GOLD』、モノ雑誌『Best Gear』、カメラ誌『デジキャパ!』などに寄稿していましたが、いずれも休刊。諸行無常の響きあり。主に「女性とクルマ」をテーマにした写真を手がけています。『webCG』ではライターとして、山野哲也さんの記事の取りまとめをさせていただいております。感謝。
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