フォルクスワーゲン・ゴルフXE(4AT)【ブリーフテスト】
フォルクスワーゲン・ゴルフXE(4AT) 2002.06.14 試乗記 ……281.5万円 総合評価……★★★★尊敬に値するクルマ
「ゴルフ」に乗った数日後、新型「ポロ」の発表会に行った。新しいポロは、とても魅力的に見えた。先代よりもはるかに上がった品質感、ひとまわり大きくなったボディ、「まるでゴルフIIIみたいですね」、多くの人がそういった。
それは間違いじゃない。だってルポは最初のポロぐらいまで成長した。だからポロが前のゴルフ・クラスにまでなっても、何の不思議もないのだ。
でもそこで僕は思いだした。
ゴルフを思い出したのじゃない。その兄弟版の「ボーラ」を思い浮かべたのだ。実はボーラを何度か「ちょっといいな」と感じたことがある。それはサンフランシスコや、場合によってはアジアの都会などで見たときで、あのボーラ、すごく高級なクルマに目に映る。そんなに大きくないけれどバランスのいいデザイン、それが大型高級車をふた回りほど凝縮したようで、小さいけれど見事な品質感を漂わせている。
小さくて高級なクルマは、トヨタ「プログレ」も狙っているけれど、ボーラは内部から発散する品質感というか、ユーザーのプライドを満足させる雰囲気を持っている。
で、ゴルフである。
実はゴルフに乗るのは、本当に久しぶりだった。こういう古典物は歌舞伎と同様に、「ようございます」と一回だけ触れて、後は別の種々雑多な新車に追い回されているうちに、いつの間か縁遠くなってしまうことが多い。
ともかく、本当に久しぶりに最新のゴルフに乗った。そして正直いって驚いた。「やっぱりゴルフって、世界標準車だったんだ」ということである。もう、そろそろ世代交代を控えているが、それでも新型ポロとは違っていた。ゴルフはきちんと君臨していた。だからそこから生まれたボーラもまた、あれだけ立派に見えたのだと言うことが、改めて理解できた。「好き嫌いとは別に尊敬に値するクルマ」というのが、久しぶりに会ったゴルフの結論である。
【概要】どんなクルマ?
(シリーズ概要)
御存知ドイツを、いや世界を代表するボリュームセラー。ジウジアーロの手になる1974年デビューの初代は、ハッチバックを大衆車のスタンダードにした、エポックメイキングなクルマ。1997年に登場した現行モデルは4代目。日本での5ドアハッチのラインナップは、下からE(1.6リッターSOHC/4AT=229.0万円)、CLi(2リッターSOHC/4AT=253.0万円)、GLi(同/4AT=270.0万円)、GTI(1.8リッターDOHCターボ・インタークーラー付き/5MT=290.0万円、同/4AT=299.0万円)、GTX(同/4AT=340.0万円)の5種類。
(グレード概要)
限定車の「XE」は、2002年1月29日に販売された1500台限定のスペシャルモデル。ノーマルが275.0万円で、フォルクスワーゲンのナビゲーションシステム「MMS」(マルチメディアステーション)搭載車は、281.5万円(1500台のうちの544台)となる。上級装備が施され、外装にディスチャージヘッドランプ(オートマチックハイトコントロール付き)、16インチアルミホイールを装着。内装は、革巻き3本スポークステアリングホイール、革巻きシフトノブ、革巻きハンドブレーキレバーを採用した。シートはゴルフのスポーティモデル「GTi」と同じスポーツシート。ヘッドライトウォッシャーとクルーズコントロールが、標準で備わる。「XE」という名前は、ゴルフシリーズに初めて採用されたディスチャージヘッドランプに充填される、キセノンガス(元素記号:Xe)に由来する。
【車内&荷室空間】乗ってみると?
(インパネ+装備)……★★★
「XE」は、ディスチャージヘッドランプやアルミホイール、内装には革巻きステアリングホイールとシフトノブなどが与えられ、クルーズコントロールまで備わる豪華装備の特別仕様車。デザインは、奇をてらったような奇抜なものでも、目を引く造形があるわけでもないが、本気になって計算し、材料を吟味し、そして機能を全面に打ち出してデザインしたことがはっきりとわかる。
(前席)……★★★★
ランバーサポート付きのスポーツシートは、サイズはやや小ぶりだし、クッションも硬めだが、サポートも座り心地もよい。特にロングドライブでの疲労を軽減してくれるだろう。Aピラーは寝かせすぎず、ヘッドクリアランスに余裕があり、かつ視界は良好だ。
(後席)……★★
前席に普通の体型の人が座るなら、レッグルームには余裕がある。3人座れることになっているが、センターは収納式のアームレストが備わり、座面も平板。2人がけと考えた方がよい。前席と同様クッションは硬めだが、座り心地は悪くない。
(荷室)……★★★
特に広くはないが、フラットでホイールハウスの張り出しも少なく、使いやすそうなラゲッジルーム。床面が低いので、荷物の積み卸しも楽だろう。後席はダブルフォールディング可能で、330リッターの荷室を1184リッターまで拡大(ともにISO方式)できる。しかし、ダブルフォールディングする際、ヘッドレストをはずすのにシートバックを斜めにしてからでないと、天井につかえてはずれない。倒したあとは、座面後ろにある穴に、ヘッドレストをさしておくのだが、穴の形状のせいか、引っかかって入らないことがある。
【ドライブフィール】運転すると?
(エンジン+トランスミッション)……★★★
ゴルフに乗って走り始めると、その瞬間から「いいクルマだなあ」という感じがする。すべての感触、機械の反応、それらがビシッとしていて、なんだかゆるぎないものを操っていることが全身で分かるからだ。
だが、ゴルフはうるさい。うるさいといったら語弊があるなら、一定以上の速度域では、昔から伝統的なノートは残っている。特に合法速度よりやや上で、エンジンがうなる。ロードノイズも一級ではない。でもその音が決して不快ではないのだから、それにそのうち慣れてしまって気にならなくなるのだから、それはそれでいいだろうと思う。
(乗り心地+ハンドリング)……★★★★
走り出して、ステアリングは重いと思った。確かにドイツ車というかゴルフ独特の重さというか、ゴツさのようなものが感じられた。でもすぐにそれらが大きな安心感に変わってくる。あくまでドイツ的小型車であり、洗練性や走りの喜びはそれほどないが、きちんきちんとつくってあって、ステアリングホイールに素直な反応をする。
乗り心地は、やっぱり、「しっかりしている」という表現になる。安楽で快適というよりはやや固めで、サイズに似合わぬ重厚さを見せる。前述のようにやや重めのステアリングは、綿密に観察するしようというドライバーには、FWD(前輪駆動)であることを暴露する。そのかわり直進性は、サイズからするならとても感心できる。
(写真=高橋信宏)
【テストデータ】
報告者:webCG大川悠
テスト日:2002年5月21日
テスト車の形態:広報車
テスト車の年式:2002年型
テスト車の走行距離:4612km
タイヤ:(前)205/55/R16(後)同じ
オプション装備:--
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(4):高速道路(6)
テスト距離:584.6km
使用燃料:72.9リッター
参考燃費:8.0km/リッター

大川 悠
1944年生まれ。自動車専門誌『CAR GRAPHIC』編集部に在籍後、自動車専門誌『NAVI』を編集長として創刊。『webCG』の立ち上げにも関わった。現在は隠居生活の傍ら、クルマや建築、都市、デザインなどの雑文書きを楽しんでいる。
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