ジャガーXタイプ 2.5 V6 SE(5AT)【ブリーフテスト】
ジャガーXタイプ 2.5 V6 SE(5AT) 2001.10.03 試乗記 ……482.35万円 総合評価……★★★★鉱脈、掘りあてた
ジャガーといえば「XJ」。「XJ-S」や「XK」も含めて。と、私あたりは思ってるわけです。ああいうクルマはほかにない。クルマお好きな方は、乗ればたいがい好きになります。見ただけで、あのカタチだけで好きになっちゃう方も多いようです。私も大好き。広報車、借りて乗るたび感激してるくらいで。
たしかにXJのジャガーは、あれはちょっといわくいいがたい乗り心地、乗り味があります。具体的にどこをどう設計すればああなるのか、詳しくはわかりませんが、ひとつはクルマの基本、体型というかディメンションが大きいんじゃないかと思っております。図体はあんなにでっかいクルマなのに、運転席に座ったらまるでユーノスみたいに細くて低くて。キツキツのペッタンコ。太った人あたりは、乗るだけでも少々難儀じゃないでしょうか。
また天井も低い。4ドアのほうでいうと、全高1360mm。これは低いです。ヘンな話、あのXJを比率そのままで85%なんて縮小したようなクルマをつくったら、ちょっと人の乗れないような、そういうものになってしまう。近いところでは昔のトヨタ・カリーナEDみたいな。カリーナEDはFFなぶんまだよかったんでしょうけど。ですから逆に、ああいう寸法配分でなんとか人が乗れるクルマにするためには、あれだけのでっかい図体が必要だったと。そう考えることもできるわけです。ジャガーは。
こないだSタイプが出たとき乗って、私はあれにジャガーを感じることはあまりありませんでした。たしかに姿あたりはその、XJの前のジャガーのセダンというかサルーンだった「マーク2」の感じをよく再現してました。でも、私にとってのジャガーはXJ以降です。あの、ペッタンコの。それにあれ、Sタイプは、乗った感じが。どうも違う。
いや、優秀は優秀ですよ。腕のいい方が盛んにおトバしになったときの踏ん張り具合だとか。あるいはまた、前後の空間の広さとか。そういう意味ではXJよりはるかにちゃんとしてました。高性能車として。またセダンとして。いささか注文つけたいところがないじゃなかったですけど、でも速くて広くて。FRで。見ればこれもまたジャガーで。ミツオカっていってる失礼なヤツもなかにはいましたけど、あれ、元がジャガーなんですから。
その点、このたびのXタイプはいささか様子が違いましたね。ああこれは、この感じはジャガーだなあと、乗ってホントに思いました。外見も、またダッシュボードの眺めなんかもXタイプは前回と較べるとXJというお手本に対してずっと忠実なんですが、それと同じぐらい乗った感じもよく再現されてたわけです。クルマの基本の素性はXJとは全然違いますから、これがチューニングの妙なんでしょうか。エンジン横置きのFFの土台を使って、元がフォードだってのはSタイプもそうなんですが、こんどは非常に上手いことやっておりました。
スポーティなセダン一般として見た場合のいわゆる優秀さも、やっぱりちゃんと優秀でした。少なくとも、あからさまに後ろ指さされるようなところはなかった。仮にXタイプがジャガーのブランド品じゃなかったとしても、これなら怒られはしないだろうと。そのぐらいには十分ちゃんとしておりました。
それでもって、値段は425.0万円から買えます。エンジンも小さいほうの2.5で何ら文句ない。むしろベターなくらいで。しかも誰がどう見ても、また乗っても、あの憧れのジャガーの風味がちゃんとあって。あ、これは売れるわ。
やったねジャガー、という感じでした。鉱脈、掘りあてたんじゃないでしょうか。私もちょっと、これは欲しいなと思いました。XJが乗るとどういう感じか、それなりわかったうえで乗っても別にミジメな気持ちになってこないし。近頃のクルマ商売は、「ブランドの強みをもってるかどうか」がなにより大事になってきてますから、こうなると強いでしょう。ジャガーみたいな有名どころは。XJがどんなに美しくてどんなに乗っていわくいいがたいとしても、普通の皆さんはあれは普通の人間が乗るようなクルマじゃないと思ってましたから。いまでも思ってるはずです。
でも、これは違います。普通の人が、普通の人のまま乗ってもいいジャガーなんだと思えるジャガー。その点、Sタイプあたりは実際は特に安くもなかった。XJと較べて。こんどは違いますから。そういえば、小林彰太郎さんもいってたそうです。Sタイプに毎日乗ってるあの人が、Xタイプに試乗して「早く乗り換えたい」って。それとそう、『webCG』を運営する二玄社関係では、webCGエグゼクティブディレクターたる大川悠さんが早々とカンパニーカー用に1台オーダー入れたという。私はそれ、プレス向け試乗会の場でききました。ドイツ車が席巻してきた「コンパクトプレミアムマーケット」、これからが大変です。
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【概要】 どんなクルマ?
(シリーズ概要)
2001年2月のジュネーブショーでデビューしたコンパクトジャガー。フォード・モンデオと、一部コンポーネンツを共有する。2.5リッター、3リッター、2種類のV6エンジンが用意され、5段ATと組み合わされる。FFプラットフォームを用いながら、「トラクション4」と呼ばれるフルタイム4輪駆動システムを搭載、ビスカスカプリングを介して、通常「前:後=40:60」にトルクを振り分ける。
(グレード概要)
2001年9月1日から日本でもXタイプの販売が開始された。フラッグシップ「3.0V6SE」(525.0万円)、革内装が標準の「2.5V6SE」(475.0万円)、17インチを履き足を硬めた「2.5V6Sport」(455.0万円)、クロスシートの「2.5V6」(425.0万円)の4車種がラインナップされる。
【車内&荷室空間】 乗ってみると?
(インパネ+装備)……★★★★
この部分だけ写真で見たら、多くの人がXJだと思うのではないか。ジャガーをほしいと思う人々の気持ちを実によく理解した造形は、Sタイプのときとは対照的。といってそこだけがXJで、ほか全体に対して場違いということもない。Aピラーの角度(立っている)やダッシュボード天井部分の奥行き(きわめて浅い)までそっくり同じ、というわけにはさすがにいかないが、まったく違和感なくうまくハメ込んで、いや調和させている。
(前席)……★★★
着座位置や天井の低さ、あるいはフットルームや全体のタイトさに関してはXJよりずっと一般的。フツー。なんだけど、その雰囲気は漂っている。シートのかけ心地も同様。「これに慣れてね」というような(実際すぐ慣れて気持ちよくなるのだが)マイペースぶりが矯められている一方で、特にレザーの質感なんかはいかにもXJを思わすゴワっぽさがちょっとあって。たしか、Sタイプのレザーはもっとモワッとしていた気がする。
(後席)……★★★
これまた、スポーティなサルーンのものとしては大筋オッケー。このサイズの、エンジン横起きプラットフォームであることを考えれば、特に不思議でもない程度のスペースはある。着座姿勢もイビツではない。ただ、座面の両脇が真上からみて大きなアールで切り取られていて、そこのエッジの部分がレザー仕様だと腿の裏に当たる感触がやや目立った。
(荷室)……★★
床面最大幅128cm、奥行き108cm、高さは45cm(ただしスピーカーの突起でマイナス5cm)。ヨンクの駆動系があるせいか、天地は浅い。奥行きは、サイズを考えればこれで普通。ジャガーとしては画期的に実用性の高いトランクらしいが、それは大声でいうようなことではない。これまでが特殊すぎたのだ。
【ドライブフィール】 運転すると?
(エンジン+トランスミッション)……★★
旧型モンデオに乗っていたV6と較べると、この2.5の感触は非常にサラッと上品。パフォーマンスも含めてガッカリ感なし。JATCO製の5段ATは、すくなくともSタイプについていたオートマより確実に好感触。Jゲートの操作感も、すくなくともこれだけ乗ってるかぎりは格オチ感別になし。
(乗り心地+ハンドリング)……★★★★
普通のアシの仕様に使われるタイヤ、“パワジィ”のサブネームがついたマイチェン版あるいは派生型のピレリ「P6000」がまず好感触。ただのP6000のような、なんというかドチャッとした、デリカシーにイマイチ欠ける感じがない。なにより、いかにもジャガー(XJ)みたいな、やはりサラッとした乗りアジがある。カルく頼りなげでいて正確なステアリングと、それへの車体の反応もやはりジャガー風。トルク配分比を前後重量配分比(もっといえば瞬間ごとに変わるそれ)に揃えるというセオリーにあえて反してまで採用した「前:後=40:60」の設定も効いたか。同じ理由で、いわゆるFFクサさもない。一方、スポーツ仕様「2.5V6Sport」はダメでは全然なかったが、いささかバネ下重めな印象。実際そうなのだから当然だが、いかにもタイヤ太そう。較べると、ジャガーというよりは高性能サルーン一般に近い。ただ、こっちの場合はタイヤがピレリ「P-ZERO Asimmetrico」。そのスバラシさを味わえるというおまけがついてくる。インチアップしても乗り心地を損ねたくないというときに、このタイヤはちょっとした魔法のような効き目を示す。
(写真=郡大二郎)
【テストデータ】
報告者:森 慶太
テスト日:2001年8月21日
テスト車の形態:広報車
テスト車の年式:2001年型
テスト車の走行距離:3645km
タイヤ:(前)205/55R16 91Y/(後)同じ(いずれもPirelli P6000)
オプション装備:メタリックペイント(7.35万円)
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(9):山岳路(1)
テスト距離:--
使用燃料:--
参考燃費:--

森 慶太
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