ジャガーSタイプ R(6AT)【試乗記】
色濃い「ジャガーらしさ」 2002.07.09 試乗記 ジャガーSタイプ R(6AT) ……960.0万円 1998年のバーミンガムショー以来、4年ぶりのマイナーチェンジを受けたジャガー「Sタイプ」。ニューバージョンの目玉は、6段(!)ATと、406ps(!!)ヴァージョン「R」。自動車ジャーナリスト、河村康彦が、Sタイプの最強モデルに乗った。史上最強のサルーン
「弊社始まって以来の最強サルーン」。ジャガー社がそうアピールするのが、1998年にデビューし、このほど初のマイナーチェンジを受けた新型「Sタイプ」のニューモデル「R」だ。
4.2リッターV8DOHCユニットに、ジャガーが好んで使うスーパーチャージャーをドッキング。6100rpmという比較的低めの回転で、最高出力406psを発生する強心臓を得たこのクルマは、見た目も“別格”な存在。他のSタイプが、いかにも“英国調のジェントルかつフォーマル”なたたずまいを前面に押し出すのに対し、こちら「R」のエクステリアデザインは、コワモテ風な(?)雰囲気が持ち味(?)。ボディ色で統一されたフロントグリルサラウンドに収まる、細かい編み目模様のメッシュ状グリルが、いかにもスポーティ。フロント8J、リア9.5Jというファットなホイールに組み合わされるタイヤは、フロントが245/40の18インチ、リアは275/35の18インチ。強烈なタイヤサイズが、独特のオーラを周囲に放つのだ。
ド派手なホイールにファットなタイヤを履く、メルセデスベンツやBMWの“若頭仕様”を目にする機会はあるが、「R」のルックスはそれに対抗するにも十分な迫力である。もっともこちらには、目隠し効果を狙った濃色のウィンドウフィルムはきっと似合わない。そのあたりが、ジャガーとメルセデスベンツやBMWとの、ブランドイメージとの差ということにもなるのかもしれないが……。
200km/hは日常域
インテリア各部のデザインは、基本的に他のSタイプと同じ。「血縁関係にあるフォード・リンカーンLS用の構造と決別することによって実現できた」という新デザインのダッシュボード形状も、エントリーグレードの「2.5 V6」と同じだ。
タイプRは、木目パネルにダークグレー色のバーズアイメープルウッドを用いたことで、上品ななかにもスポーティな雰囲気をかもしだすことに成功した。日本では高級サルーンメーカーのイメージが強いジャガーだが、歴史を辿れば生粋のスポーツカーメーカー。ちょっとした見た目の演出手法は、さすがに巧みだ。
走りは力強い。アクセルペダルを軽く踏み込むだけで、メカニカルチャージャー独特のエンジン回転数にシンクロした高周波サウンドと共に、1.8トンのボディは重さを忘れさせる勢いでスピードを増す。このクルマにとっては、200km/hというスピードさえ“日常域”だ。そして、その気になればリミッターの利く250km/hという最高速度に、“苦もなく”到達できそうである。マイナーチェンジを受けたSタイプの全車に採用された、ZF社製6段ATとエンジンのマッチングは、このモデルの場合も良好。ちなみに100km/hでの走行は、1速以外のすべてのギアでこなすことができる。6速ギアでのクルージング走行時、エンジン回転数はわずかに1700rpmに過ぎない。
個性的な走り味
フットワークテイストは、「ジャガーらしさ」が色濃い。ドイツ車のような高い剛性感はないが、どこか身体にやさしい。路面からの振動をひと呼吸おいて乗員に伝えるような感触が、独特の走り味を演出する。しかも、前述のファットなシューズを履くこともあって、コーナリングの限界点は高い。とはいえ、このクルマに、路面にブラックマークを残すような走りは似合わない。
ちなみにこれまでのジャガーといえば、タイヤ開発を共同で行うイタリア「ピレリ社」との蜜月状態が知られてきたが、このトップモデルに限っては、ドイツ「コンチネンタル社」製の“スポーツコンタクト”を銘柄指定で採用した。シャシー担当エンジニアによれば、「ステアリングフィールに長ける点を買って、このタイヤをチョイスした」という。
実際このクルマのハンドリングは、見た目から想像するよりも軽快で正確。走りの性能を理詰めで評価する人にとって、その魅力はメルセデスベンツやBMWに及ばないかもしれない。しかし、“個性的な走り味”という点で一歩もひけをとらない質感の持ち主が、シャガーの“R”なのである。
(文=河村康彦/写真=難波ケンジ/2002年7月)

河村 康彦
フリーランサー。大学で機械工学を学び、自動車関連出版社に新卒で入社。老舗の自動車専門誌編集部に在籍するも約3年でフリーランスへと転身し、気がつけばそろそろ40年というキャリアを迎える。日々アップデートされる自動車技術に関して深い造詣と興味を持つ。現在の愛車は2013年式「ポルシェ・ケイマンS」と2008年式「スマート・フォーツー」。2001年から16年以上もの間、ドイツでフォルクスワーゲン・ルポGTIを所有し、欧州での取材の足として10万km以上のマイレージを刻んだ。
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