ジャガーSタイプ 4.2V8【試乗記】
手抜かりない見直し 2002.08.02 試乗記 ジャガーSタイプ 4.2V8……772.0万円
リンカーンLSとの部品共用が意外な不評を招いたジャガー「Sタイプ」。デビュー以来4年ぶりのビッグマイナーチェンジで、インテリアに大きく手を入れ、またエンジンラインナップを大幅に拡充した。自然吸気の4.2リッターV8を搭載する最もラグジュアリーなモデルを、自動車ジャーナリストの笹目二朗がハード面から分析する。
余裕のあるチューン
「ジャガーSタイプ」が、1998年のバーミンガムショーに登場以来、初の大規模なマイナーチェンジを受けた。外観の変更は少なく、グリル周辺の処理が変わった程度だが、内装やエンジン、トランスミッションやサスペンションなど、80%ものパーツにおいて変更が実施されたという。その結果、プラットフォームを共用する兄弟車、リンカーン「LS」との差別化がさらに進んだ。
V8エンジンについては、ストロークが85.0mmから90.3mmに延長され、排気量は従来の4リッターから4.2リッター(4196cc)に拡大された。パワーとトルクは、それぞれ304ps/6000rpmと42.9kgm/4100rpmである。
エンジンをパワーアップするのに、排気量を拡大するのは常套手段である。ボアを広げればシリンダー壁が薄くなり、騒音が増す。一方、今回のようにストロークを伸ばせば、クランクシャフトとピストンをつなぐコンロッドが短くなって、ピストンの首振りが大きくなる。よって高回転での振動などに問題が出がちだ。
ジャガーの「AJ-V8」ユニットは、「軽量コンパクト」という量産廉価型の設計と違い、当初より余裕をもった設計がなされた。“余裕”を示すよりどころとして、コンロッドの長さとストロークの比率を表す「コンロッドレシオ」がある。ストローク量でコンロッドの長さを割った値で、この値が大ききれば大きいほどコンロッドの長さが相対的に長い、つまりピストンの首振りが極力抑えられ、またストロークを延ばす余地があるわけだ。
ジャガーV8の場合、マイナーチェンジ前の4リッター時代で「2.2」もあった。今回の進化型でもまだ「2」以上ある。ちなみに、直列6気筒ながら、高回転型エンジンであるBMW「M3」のコンロッドレシオは「1.5」しかないのだ。
よって今度の4.2リッターV8は、まだまだ余裕のあるチューンといえる。4.88mと大きく、1760kgもある重いボディを、強引かつ滑らかな加速で導くのだ。
高級感を増した外観
ATトランスミッションは、これまでのフォード製5段ATから、BMW「7シリーズ」が採用したZF製6段ATに換装された。これはギア比までBMW7シリーズと同じものだ。
換装された理由は、「2〜3速へシフトアップする際のショックが大きかったから」とのこと。個人的には、旧タイプの方が1〜2速間が超クロースしていて楽しかっただけに、フツーになってしまった6段化を手放しで喜ぶことができない。1〜3速までがワイドで、4〜6速と上をクロースさせても、現実にはせいぜい140km/h程度までしか問題にならないのだから、一般走行における変速のスムーズさは、かつての4段AT時代とあまり変わらないような気がする。とはいえ、そんなことに頓着せずに乗れば、絶対的には鋭い加速とスムーズな変速に終始する。独自のJ字タイプのシフトゲートには、左側のポジションがひとつ増え、「5〜2」までのポジションが並ぶようになった。
新しいSタイプの外観上の変更点は少ないが、効果的に行われた。これまではポカンと子供が口を開いたようなグリル処理が不評だったが、今度はより立体的な縁取りがなされ、高級感を増した。ジャガーSタイプは、4.2リッターV8で745.0万円もする高級車である。それに見合う高級感の演出には、惜しみない努力が必要。最初からこうした神経を遣うべきだったのだが、今回のマイナーチェンジは、そうしたところが手抜かりなく見直された。
ジャガーらしい豪華さ
サスペンションは、形式こそダブルウィッシュボーンで同じながら、フロントはアルミ軽合金を多用した新設計のものとなり、リアもサブフレームを介する二重防振タイプになった。これらは「乗り心地」や「静粛性」を向上させるための改良であり、従来から定評ある「操縦安定性」も同時にリファインされた。限界域で過度のアンダーステアやオーバーステアに陥った際には、「ダイナミックスタビリティコントロール」(DSC)が働き、各輪が独立して制御されるブレーキで、乱れた姿勢をニュートラル方向に修正してくれる。
ボディ剛性の強化も、今回の大きな改良項目である。サスペンションの変更と共に、よりガシッとしたボディ剛性は、操縦安定性だけでなく、乗り心地やロードノイズなど静粛性の面で大きな効果をあげている。
ハード面での改良もさることながら、内装の仕上げがよりジャガーらしくなった。センターコンソールをはじめインパネ形状の全面的な見直しが行われ、以前にも増してウッドとレザーによる豪華仕上げがなされた点は、ジャガーオーナーの関心事だろう。また、全グレードの標準装備されるナビゲーションシステムは、CDからDVD方式に変わった。Sタイプの新しいオーナーは、保存情報が約8倍に増えたことによる便利さを享受できるようになったわけだ。オーディオ装備では、「カセット+ラジオ」および「6連奏CDオートチェンジャー」が標準で装備される。オプションで「CDプレイヤー」ほか、「MDプレーヤー」が装着できるようになったのも朗報か。
(文=笹目二朗/写真=難波ケンジ/2002年7月)

笹目 二朗
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