ホンダ・ステップワゴン スパーダZクールスピリット(FF/CVT)【試乗記】
家族思いのピープルムーバー 2012.06.19 試乗記 ホンダ・ステップワゴン スパーダ Zクールスピリット(FF/CVT)……330万5250円
ホンダの人気ミニバン「ステップワゴン」がマイナーチェンジ。新開発CVTの採用や2列目キャプテンシートの設定で魅力を増した最新モデルの乗り味を、新グレード「スパーダZクールスピリット」で試した。
売りの装備はキャプテンシート
息子が入っているリトルリーグのチームメイトを大勢乗せるとか、おじいちゃんおばあちゃんもまだ元気で、孫と一緒に外出したがるとか、鍋奉行ならぬクルマ奉行として、ご近所の人や親戚をマイカーに乗せるのがけっして嫌いじゃないとか……、いずれにしても、人生の「人運び期」というステップに便利な「ステップワゴン」がマイナーチェンジした。
登場から2年半を経た4代目の大きな改良点は、FFモデル全車に新型CVTが付き、アイドリングストップ機構が装備されたこと。さらに7人乗りモデルでは、2列目にキャプテンシートのオプションが設定されたことも、ステップワゴンの“住み替え”を考えている人には耳よりなニュースだろう。
ホンダといえば、以前、「N BOX」に乗って、軽ながらあっぱれの広さやつくりこみのよさに感心した。こりゃ上のクラスのミニバンを食って当然だと思ったのだが、さすがに全幅1480mmの軽ボディー枠のなかで後席がキャプテンシートという話は聞かない。そういう意味でも、軽ワゴンを突き放す“売り”になるのかもしれない。
試乗したのは、今回のマイナーチェンジで新登場した「スパーダZクールスピリット」。ノーマルより少しスポーティーな内外装をまとったスパーダをさらに若向きに仕立てたニューグレードで、専用の17インチホイールや本革巻きステアリングホイール、スウェード調のシート表皮などを標準で備える。試乗車にはオプション(4万2000円)のキャプテンシートもぬかりなく装備されていた。
家族サービスは万全
さて、ステップワゴンお初のキャプテンシート。座ってみて意外だったのは、イスのサイズが小ぶりだったこと。キャプテンシートといえば、その名のとおり、船長くらい偉い人が座る立派なつくりの独立シートのことだが、このイスの場合、クッションも背もたれもかなりコンパクトで、身長160cmのぼくでも、お尻だけで腰かけているような小ささを感じる。キャプテンシートと呼ぶにはセコイんじゃないの? と思ってから、しかしすぐに気づいた。ステップワゴンはここに子どもを座らせようという魂胆なのではないか。つまり、この空間ではお子様がキング・オブ・ファミリーだよと。試乗車の後席天井にはオプションのリアエンターテインメントシステム(5万2500円)が付いていた。キャプテンシートに座らせて、テレビでもつけておけば、移動中の家族サービスは万全ということなのかもしれない。
スパーダの足はノーマルより少し硬め。加えてZクールスピリットは17インチタイヤを履くが、スポーティーな荒さはまったくない。乗り心地のよさはステップワゴンの美点のひとつである。
新しいCVTと組み合わされる2リッター4バルブ4気筒SOHCのパワーユニットも不満なしだ。最近のクルマとしては、アイドリング時のエンジンのバイブレーションが“ある”ほうだが、それも停車してゼロ回転になれば関係ない。「ゼロになに掛けてもゼロ」と、むかし算数の授業で習ったが、アイドリングストップしてしまえば、「アルトエコ」も新型「ポルシェ911」も「フェラーリ・フォー」も同じである。アイドリングストップがあたりまえになると、停車中のエンジンマナーの評価なんて、意味をなさなくなった。
視界のよさが女性にウケる
ステップワゴンに乗ってみて、あらためて感心したのは、運転のしやすさである。フロントガラスは大きく、ダッシュボードは低い。オヘソまで陽(ひ)が当たりそうな低いウエストラインは、前方へ行くにつれてさらに下降していくため、運転席からボディーの直近がよく見える。爪の垢(あか)を煎じて、「レンジローバー イヴォーク」に飲ませてやりたいものである。ミニバンでもボディーを無用に大きく感じさせないすぐれた視界は、とくに女性ドライバーにウケるはずである。ステップワゴンは「帰りは奥さんが運転してくれる確率」の高いミニバンではないかと思う。
試乗車には純正のカーナビが付いていた。最近は高価な純正品に頼らない人も増えてきたが、これはやはり高いだけのことはある。分岐や合流が次から次へと左右に現れて、慣れたドライバーでも気が抜けない首都高でも、このカーナビの声と画面に従えば、ひょっとしたら一見さんだってイケるかもしれない。案内の出し方が懇切丁寧で、なおかつ心配性なのである。
朝、エンジンをかけると、きのうの平均燃費をコンマひと桁まで読み上げてくれた。レインボーブリッジからの景色があまりにもきれいだったので、走りながら写真を撮っていたら、「車両のフラつきが大きくなりました」と怒られた。
ただし、このカーナビはETC車載器と合わせて約30万円する。試乗車はオプション込みで330万円。ステップワゴンもとっくに「いいけど高いミニバン」の仲間入りをしている。
(文=下野康史/写真=郡大二郎)

下野 康史
自動車ライター。「クルマが自動運転になったらいいなあ」なんて思ったことは一度もないのに、なんでこうなるの!? と思っている自動車ライター。近著に『峠狩り』(八重洲出版)、『ポルシェよりフェラーリよりロードバイクが好き』(講談社文庫)。
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