レクサスRX350“Fスポーツ”/RX450h“バージョンL・Air suspension”【試乗記】
若返りのレクサス 2012.05.10 試乗記 レクサスRX350“Fスポーツ”(4WD/6AT)/RX450h“バージョンL・Air suspension”(4WD/CVT)……609万2450円/704万450円
デビューから3年がたち、テコ入れが実施された「レクサスRX」シリーズ。その仕上がりを、新たなスポーティーグレード“Fスポーツ”とハイブリッドモデルで試した。
新グレードは“ちょい過激”
レクサスのイメージリーダーはなんだろうか。やはり旗艦の「LS」か、と個人的には思うが、販売台数では「RX」である。世界規模だとレクサスの4割を占める。それだけSUV王国の北米で売れているということである。中国でも人気上昇中だ。そういえば、新しいフロントマスクはどことなく孟子(もうし)に似ているような気が……。
登場から3年あまり、マイナーチェンジしたRXシリーズ最大の話題は、「450h」と「350」に“Fスポーツ”が追加されたことだろう。「LFA」や「IS F」を想起させる“F”だが、あんなに過激ではないという点では、BMWの“M”に対するMスポーツに似ている。
いずれもパワーユニットに変更はなく、サスペンションチューンや19インチホイール、内外装の専用装備などがFスポーツの要諦だ。見えないところでは「レクサスCT200h」に採用されているパフォーマンスダンパーが備わる。フロントとリアエンドに渡された、いわばボディーのショックアブソーバーである。
1コマ60分の試乗会で経験したFスポーツはRX350(560万円)だった。ノーマルのRX350との差額、つまりFスポーツの“お代”は、350の場合、60万円。外観ではチタンブラックの専用アルミホイールがまず目をひく。最近、日本車の純正ホイールもかなりカッコよくなってきた。
インテリアはブラックと光り物の世界。ダッシュボードもレザーシートもドアの内張りもカーペットもすべて黒ずくめ。そのなかにクロムの化粧パネルやスイッチ類やペダルが配される。これがFスポーツの専用内装で、サドルタンのシートやウォルナットの化粧パネルをFスポーツで選ぶといったわがままは言えない。
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中高年向け「スポーツ味」
走りだしたRX350“Fスポーツ”は、ちょっと脚の引き締まったRX350という感じだ。サスペンションチューニングのコンセプトは「安心で、速く」。ノーマルより硬いのはわかるが、かといって快適性を損なうほどガチガチではない。
280psの3.5リッターV6に変更はないが、6段ATをパドルシフトでアップダウンできるのが、Fスポーツ乗りの特権だ。
RXはレクサス唯一のSUVである。SUVはスポーツ・ユーティリティー・ヴィークルの略だが、これまでのRXにとりたててスポーティーなイメージはなかった。若年層には手が出ないということもあるが、オーナーの平均年齢も50代以上だったという。
逆に言うと、この「レクサスのSUV」にはこれまでLUV(ラグジュリアス・ユーティリティー・ヴィークル)とでも言うべき独特の立ち位置があったと思う。「クラウン」に乗り続けてきた日本版エスタブリッシュメントの中高年が、「どれどれ」と言ってためしに手を出すSUV、みたいな。
それもいいけど、それだけじゃ困る、という経緯で投入されたのがFスポーツなのだろう。「どんな商品でも、“若々しいイメージ”で損をすることはない」とチーフエンジニアは言っていた。つまりRXはシリーズ乾坤一擲(けんこんいってき)の回春剤というわけだ。
一方、RXハイブリッドの“Fスポーツ”も450hのシリーズトップモデルになった。674万円の価格は、別格だったエアサスペンションモデルをしのぐ。ダンナSUVの政権交代である。しかし、残念ながら今回の試乗会では人気集中で乗ることができなかった。代わりに、最高峰の座を奪われた“バージョンL・Air suspension”(659万円)に乗ってみた。
おすすめ以外も捨てがたい
ブラックインテリアの350“Fスポーツ”から乗り換えると、ホッとした。試乗した450hの内装は新色のサドルタン。シックなブラウンだ。センタートンネル部分の化粧パネルは光沢のあるウォルナット。邸宅感のある室内である。
ハーダーサスのおかげで多少ザワザワした乗り味の350“Fスポーツ”と比べると、エアサスのノーマル450hは、明らかにコンフォート志向だ。どっしりしたフラット感はあちらに分があるが、より快適なのはこっちである。「レクサスはやっぱりラグジュリーでいいんじゃないの?」と思ってしまった。
3.5リッターのV6ハイブリッドユニットは従来型からのキャリーオーバーである。スピード感のない新東名でも、パワーはひとくちに余裕しゃくしゃく。メーカーのデータによると、0-100km/h加速は280psの350とほぼ同じ。追い越し加速は、システム出力299psのフルパワーがものをいうハイブリッドのほうが速いという。
日本で売れるRXは、実に7割がハイブリッドだそうだ。ハイブリッドは日本式エコカーの本命だが、RXは速さも手に入るパワーハイブリッドである。
となると、「若向きのFスポーツにも大きなビジネスチャンスがある」と、トヨタ、じゃなくってレクサスは踏んでいるのだろう。
筋としては、一番お値頃な4気筒FFモデルの「RX270」にこそFスポーツを用意すればいいのにと思うが、そうしなかったのはレクサスの矜持(きょうじ)だろうか。
(文=下野康史/写真=高橋信宏)
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下野 康史
自動車ライター。「クルマが自動運転になったらいいなあ」なんて思ったことは一度もないのに、なんでこうなるの!? と思っている自動車ライター。近著に『峠狩り』(八重洲出版)、『ポルシェよりフェラーリよりロードバイクが好き』(講談社文庫)。
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