ポルシェ911カレラ4(4WD/7AT)【試乗記】
もはやスーパースポーツ級 2013.04.08 試乗記 ポルシェ911カレラ4(4WD/7AT)……1399万7000円
最新型の「ポルシェ911」に、4WDの「カレラ4」が登場。その走りは、他の911や歴代カレラ4と比べて、どう違う?
“ゼロ駆”にもなるポルシェの四駆
新しい「カレラ4」にはトルクインジケーターが付いている。それぞれ10本のコマの増減で前後アクスルへのトルク分配をリアルタイムに教えてくれる。
ドライ路面を普通に走っていると、直線でもカーブでも、もっぱら後輪駆動である。手っとり早く前輪に仕事をさせたいと思ったら、アクセルを踏む。床まで踏み込んで「911」らしい加速を要求したところ、前50:後50くらいまでいったことを確認する。
目の前の計器盤のなかで前後2本のバーがピロピロ増減しているのを見ているとけっこう飽きない。前輪も駆動参加するということは、リアタイヤの“もち”は、2WDより多少、長くなるんだろうか、なんてことも考えさせる。
そのバーグラフが走行中、全消灯することがある。走りだして最初に見たときは「アレッ!」と思ったが、それがコースティング状態に入った証しである。パワーが要らないときは、クラッチを切ってアイドリング回転で惰行する。現行911 PDK仕様の新機軸が、4WDモデルにも備わる。
しかし、リアエンジン/リアドライブのメリットは、なによりも駆動輪に大きな荷重がかかるという、産地直売みたいな強大なトラクション(駆動)性能にあったはずだ。それでも飽き足らず、さらに「もっと駆動力を!」という求めに応じた結果が、911の四駆であったはずだ。ああそれなのにそれなのに、今度はCO2カットや燃費削減のためにあわよくば“ゼロ駆”とは! いささか不条理な感じがしなくもないが、要はパワーも駆動もオンデマンドの時代になったということだろう。
トランスミッションは世界一
リアのトレッドは2WDの「911カレラ」に比べて約4cm広がり、295/35ZR19というワンサイズ太いタイヤを履く。それをカバーするリアフェンダーは一見して2WDよりファットになって迫力を増した。そのほか、左右リアランプのあいだに、駐車灯などとして機能する水平の赤いバーが渡されたのが、新型四駆911の識別点だ。
軽量設計を進めた現行モデル(991)のコンセプトはもちろん4WDモデルも同じで、ボディーがわずかに大きくなっているにもかかわらず、先代(997)と比べると、最大で65kg軽くなった。今回試乗したカレラ4 PDKの0-100km/hタイムは、メーカー発表値で4.7秒。1450kgの車重は2WDより50kg重いが、コンマ1秒遅くなるだけである。
つい最近、「MINIジョンクーパーワークスGP」という限定MINIに乗って、そのパワーに驚いた。フル加速するとカラダが置いていかれるような感覚を覚えたものだが、その超ド級MINIの0-100km/hが、調べたらたかだか6.3秒だった。今の911の動力性能は、ベーシックな350psのカレラ4でも完全に“スーパースポーツ級”である。
7段PDKの仕事ぶりは相変わらず素晴らしい。スポーツ性能と燃費性能を高いレベルで兼備した、現在世界最良の変速機だと個人的には思う。これであとステアリングホイールのスポークに付く変速スイッチがもうちょっと日本人の手指の大きさに合ったものだったら、まさに完璧と言いたい。
約150kmの短い計測区間だが、満タン法で採った燃費は、7.6km/リッターだった。トリップコンピューターはこのとき8.3km/リッターを示していた。
快適性ならRRモデルか
足まわりで意外だったのは、乗り心地である。991世代になってから、これまでにカレラのPDKやカレラS PDK、カレラのMTなどに試乗したが、今回のカレラ4はそのどれよりも乗り心地が硬かった。
荒れた舗装路だと、後輪からけっこうズンズン突き上げがくる。路面のうねりを腰から下で吸収するボディー全体のフラット感もいまひとつだ。乗り心地の快適性を重視するなら2WDである。
今度の四駆911は、964世代のカレラ4以来、5代目にあたる。89年に初代カレラ4が登場したときの熱狂はすごかった。「959」の“降臨モデル”的な雰囲気もあったし、当時、限界まで攻められるのは1000人に3人しかいないと言われるほど難しかったRRの操縦性に、4WD化は福音をもたらすかもしれないというような期待もあった。
だが、その後、不断のシャシー改良や新たな駆動制御技術の投入を経た結果、今の911はだれが乗っても速いRRスーパースポーツになった。それならば、コーナリングでも神の太い腕で押し出されるような“純粋911加速”が味わえる2WDに勝るものなし、という気もするが、もちろん使用環境から四駆の必要に迫られる人もいる。
というか、その数は年を追うごとに増えていて、先代997のエンジンが直噴化されてからは、ワールドワイドでの4WD販売比率は4割近くにも達していたという。高いもの界においては、高いものほど売れるという法則があるし、道路事情がよくない新興国で911が買われるようになったという背景も大きいだろう。
911カレラ4 PDKの価格は1340万円。“4WD料金”は120万円である。
(文=下野康史<かばたやすし>/写真=峰昌宏)

下野 康史
自動車ライター。「クルマが自動運転になったらいいなあ」なんて思ったことは一度もないのに、なんでこうなるの!? と思っている自動車ライター。近著に『峠狩り』(八重洲出版)、『ポルシェよりフェラーリよりロードバイクが好き』(講談社文庫)。
-
トヨタGRヤリスRZ“ハイパフォーマンス”+エアロパフォーマンスパッケージ【試乗記】 2026.3.3 「GRヤリス」の新仕様として設定された「エアロパフォーマンスパッケージ」装着車に試乗。レースフィールドでの知見を交え開発したというエアロパーツの空力・冷却性能は、リアルワールドでも体感可能なのか。高速道路を経由し、郊外のワインディングロードを目指した。
-
ドゥカティ・モンスター(6MT)【海外試乗記】 2026.3.2 ドゥカティのネイキッドスポーツ「モンスター」が5代目にモデルチェンジ。無駄をそぎ、必要なものを突き詰めてきた歴代モデルの哲学は、この新型にも受け継がれているのか? 「パニガーレV2」ゆずりのエンジンで175kgの車体を走らせる、ピュアな一台の魅力に触れた。
-
フォルクスワーゲンID.4プロ(RWD)【試乗記】 2026.2.28 フォルクスワーゲンのミッドサイズ電気自動車(BEV)「ID.4」の一部仕様変更モデルが上陸。初期導入モデルのオーナーでもあるリポーターは、その改良メニューをマイナーチェンジに匹敵するほどの内容と評価する。果たしてアップデートされた走りやいかに。
-
スズキ・キャリイKX(4WD/5MT)【試乗記】 2026.2.27 今日も日本の津々浦々で活躍する軽トラック「スズキ・キャリイ」。私たちにとって、最も身近な“働くクルマ”は、実際にはどれほどの実力を秘めているのか? タフが身上の5段MT+4WD仕様を借り出し、そのパフォーマンスを解き放ってみた。
-
ホンダCR-V e:HEV RSブラックエディション(4WD)【試乗記】 2026.2.26 日本で久々の復活を遂げた「ホンダCR-V」の新型に、北海道のテストコースで試乗。雪上・氷上での“ひとクラス上”の振る舞いに感嘆しつつも、筆者がドン! と太鼓判を押せなかった理由とは? デビューから30年をむかえたCR-Vの、実力と課題を報告する。
-
NEW
BYDシーライオン7 AWD(4WD)
2026.3.5JAIA輸入車試乗会2026堂々たるスタイルにライバルの上をいくパワーと一充電走行距離、そしてざっくり2割はお得なプライスを武器とする電気自動車「BYDシーライオン7」。日本市場への上陸から1年がたち、少しずつ存在感が増してきた電動クーペSUVの走りやいかに。 -
NEW
ついにハードウエアの更新も実現 進化した「スバルアップグレードサービス」の特徴を探る
2026.3.5デイリーコラムスバルが車両の機能や性能の向上を目的とした「スバルアップグレードサービス」の第3弾を開始する。初めてハードウエアの更新も組み込まれた最新サービスの特徴や内容を、スバル車に乗る玉川ニコがオーナー目線で解説する。 -
NEW
第951回:日本が誇る名車を再解釈 「ホンダNSXトリビュートby Italdesign」の開発担当者に聞く
2026.3.5マッキナ あらモーダ!2026年の「東京オートサロン」で来場者の目をくぎ付けにした「ホンダNSXトリビュートby Italdesign」。イタルデザインの手になる「ホンダNSX」の“再解釈”モデルは、いかにして誕生したのか? イタリア在住の大矢アキオが、開発関係者の熱い思いを聞いた。 -
メルセデス・マイバッハSL680モノグラムシリーズ(4WD/9AT)【試乗記】
2026.3.4試乗記メルセデス・マイバッハから「SL680モノグラムシリーズ」が登場。ただでさえ目立つワイド&ローなボディーに、マイバッハならではのあしらいをたっぷりと加えたオープントップモデルだ。身も心もとろける「マイバッハ」モードの乗り味をリポートする。 -
始まりはジウジアーロデザイン、終着点は広島ベンツ? 二転三転した日本版「ルーチェ」の道のり
2026.3.4デイリーコラムフェラーリ初の電気自動車が「ルーチェ」と名乗ることが発表された。それはそれで楽しみな新型車だが、日本のファンにとってルーチェといえばマツダに決まっている。デザインが二転三転した孤高のフラッグシップモデルのストーリーをお届けする。 -
第863回:3モーター式4WDの実力やいかに!? 「ランボルギーニ・テメラリオ」で雪道を目指す
2026.3.3エディターから一言電動化に向けて大きく舵を切ったランボルギーニは、「ウラカン」の後継たる「テメラリオ」をプラグインハイブリッド車としてリリースした。前に2基、リアに1基のモーターを積む4WDシステムの実力を試すべく、北の大地へと向かったのだが……。







































