メルセデス・ベンツE350ブルーテック(FR/7AT)/E250(FR/7AT)【海外試乗記】
誰もが望む方向へと進化 2013.03.28 試乗記 メルセデス・ベンツE350ブルーテック(FR/7AT)/E250(FR/7AT)外観の変更のみならず、新しいエンジンや安全装備を搭載した新型「Eクラス」。スペインはバルセロナでその進化を確かめた。
見た目以上に中身が変わった
それにしても、まさかここまで大胆に変えてくるとは……。新型「Eクラス」のマイナーチェンジには本当に驚かされた。
長らく特徴としてきた独立4灯式ヘッドランプを、新デザインのコンビネーションランプに統合したフロントマスクを中心に、大掛かりな手が入れられたスタイリングは、従来よりも断然若々しい印象。リアの“ポントン”フェンダーも消え去って、よりシャープな印象を醸し出している。
そしてついにEクラスでも、「アバンギャルド」にはスターマーク内蔵のラジエーターグリルが採用された。日本向けは、1グレードを除いてすべてこれになるという。
率直に言って、もともとの直線基調のフォルムに、このフロントまわりがうまく溶け込んでいるかといえば微妙な気はする。けれど、メルセデス・ベンツの“攻めの姿勢”の表れだと思えば、次第にその多少の荒っぽさも悪くはないという気がしてきた。ましてや実際にステアリングを握った後には、そんな思いがますます強くなっていたのだった。
それは見た目以上に中身が大きく進化しているからにほかならない。まず注目はエンジン。目玉は「E250」が搭載する直列4気筒2リッター直噴ターボユニットだ。
従来の1.8リッターに代わるこのエンジンの最大の特徴は、ターボ過給にリーンバーン、そして高圧EGR(排気再循環)を組み合わせていることだ。複雑な制御を必要とするこの組み合わせの狙いは、高出力と圧倒的な低燃費の両立。実際、最高出力211ps、最大トルク35.7kgmというスペックの一方で、燃費は5.8リッター/100km(約17.2km/リッター)、CO2排出量は135g/kmという驚異的な数値を実現している。
「E350ブルーテック」が積むV型6気筒3リッター直噴ディーゼルターボにも大幅に手が入れられた。最高出力は52ps、最大トルクは8.2kgm向上。さらに低圧縮比化、ECOスタート/ストップ機能の搭載、可変エンジンマウントの採用などにより振動と騒音が引き下げられた。
期待以上のマイナーチェンジ
日本仕様では、その他のエンジンは従来型から引き継がれるが、本国では「E350」のV型6気筒3.5リッターユニットがターボ化され、新たに「E400」が登場する。こちらは現状ではストイキ(理論空燃比)直噴だが、将来的には4気筒版と同じく成層燃焼を採用する予定。日本に入ってくるのは、その頃になりそうだ。
最初に乗り込んだのは、E350ブルーテック。スペックなどを確認する余裕のないまま走り出したのだが、予備知識なしでも進化ぶりは明らかだった。アイドリング時から静けさ、滑らかさが格段に高まり、極めて上質なフィーリングを実現しているのだ。その上で力強さも増していて、全域で気持ちの良い走りを楽しめる。
その他の部分でも、快適性は確実にレベルを高めている。試乗車のAIRMATICサスペンションは、車体の姿勢をフラットに保ちながらもあらゆる入力をしなやかに受け止める絶品の乗り心地を実現。細かな振動、騒音なども低減されているようで、全体に走りのクオリティーが格段に磨かれているのを実感できるのだ。
正直言って、期待以上。この時点で「コイツはただのマイナーチェンジじゃないぞ」と意識を新たにさせられたのだった。
E250の新エンジンは、フィーリングそのものは大して目覚ましいものではない。しかしながら、わずか1200rpmから35.7kgmの最大トルクを発生する特性ゆえにフレキシビリティーは万全。額面通り、従来の2割増しの燃費を実現できているとすれば、ますます魅力的だといえるだろう。
一方、直球で感性を刺激してきたのがE400の3リッターターボエンジンだ。そもそも現行の3リッターユニットも吹け上がりの心地よさが印象的なエンジンだが、こちらはそこに全域での粘り強いトルク、高回転域でのさらなる盛り上がりをプラスしている。特性はディーゼル的だが、回転の滑らかさ、トップエンドにかけての伸びはこちらが上。豊潤なんて表現したくなる魅惑的なフィーリングを堪能できる。
こちらは標準サスペンション仕様だったが、乗り心地はやはり格段にしなやかさを増していた。AIRMATICより姿勢変化は大きめだが、それもかえって自然で、個人的には好ましく思えた。
想像以上に鮮烈
こうして走りの面だけでも印象は想像以上に鮮烈だった新型Eクラスは、充実したドライバーアシスタンス、そしてセーフティーデバイスも注目のポイントだ。何しろ、今年中盤にも登場予定の新型「Sクラス」のために用意された装備が、ほぼ先取りされているのである。
レーダー型衝突警告システムの「CPA」は全車に標準装備。前方衝突の危険を察知するとドライバーに警告を与え、ブレーキアシストを起動させて速やかな減速を助ける。その他、車線維持機能を持ったステアリングアシスト搭載の「ディストロニック・プラス」、歩行者検知機能を持ち50km/h以下で自動ブレーキングを行う「PRE-SAFEブレーキ」、追突の危険が迫った時にハザードランプを点滅させて迫る後方車両に警告をうながし、同時に乗員保護機能を起動させる「PRE-SAFEプラス」等々、車両周辺の全方位を監視して、いずれの方向からの事故被害をも最小限に食い止める装備がフルに用意されている。ここまで出し惜しみせずに搭載してくるとはうれしい驚きだった。
なお、今回は同時に新型「E63 AMG」も試乗することができた。トピックはさらに獰猛(どうもう)になった顔つき……だけでなく、四輪駆動が主力となったこと、そして従来のパフォーマンスパッケージに代わる「Sモデル」の設定である。
前後33:67の固定トルク配分とされた四輪駆動システムの恩恵は、最高出力が標準で557ps、Sモデルでは585psにも達するだけに小さくはなく、だいぶリラックスして、そのパフォーマンスを味わえるようになった。まあ、それはそれで危ないと言えるのかもしれないけれど。
後輪駆動もセダンの標準モデルには残されている。四輪駆動から乗り換えるとなんという暴れ馬なんだと思うが、一方で自分で操る喜びが濃いのも確か。個人的には、あえてこちらを選んでしまうかも、なんて思ってしまった。
いずれにせよ今回のマイナーチェンジは、単なるルーティンの消化でも、目先を変えるための小手先のものでもないのは確か。意匠の大胆な変化は、要するに中身の跳躍ぶりが抑え切れずほとばしり出たというわけだ。Eクラスは、間違いなく誰もがEクラスに望む方向へと、長足の進化を遂げたのである。
(文=島下泰久/写真=メルセデス・ベンツ日本)

島下 泰久
モータージャーナリスト。乗って、書いて、最近ではしゃべる機会も激増中。『間違いだらけのクルマ選び』(草思社)、『クルマの未来で日本はどう戦うのか?』(星海社)など著書多数。YouTubeチャンネル『RIDE NOW』主宰。所有(する不動)車は「ホンダ・ビート」「スバル・サンバー」など。
-
ホンダCR-V e:HEV RSブラックエディション(4WD)【試乗記】 2026.6.1 「ホンダCR-V」がフルモデルチェンジ。新型は適切なボディーサイズと高品質な内外装を持ち、乗れば最新のホンダ車らしい気持ちよさが味わえる。ただし、その月販目標は400台。ちょっと弱気ではあるものの、周辺事情にも考えを巡らせると極めて妥当な数字にも思えてくる。
-
トヨタRAV4 GRスポーツ(4WD/CVT)【試乗記】 2026.5.30 新型「トヨタRAV4」のプラグインハイブリッド車ではEV走行換算距離が約150kmにまで到達。もちろん電池容量の拡大によるところも大きいが、何よりも最新のハイブリッドシステムによる効率向上が効いている。「GRスポーツ」をドライブした印象をリポートする。
-
キャデラック・リリックV(4WD)【試乗記】 2026.5.29 キャデラック初の電気自動車(BEV)「リリック」に、最高出力646PSのハイパフォーマンスモデル「リリックV」が登場。“ブランド史上最速”をうたう豪速SUVだが、実際に乗ってみると、高い動力性能がもたらすゆとりや心地よさにも魅力を感じる一台となっていた。
-
DS N°8エトワールAWD(4WD)【試乗記】 2026.5.28 前衛を身上とするフランスのラグジュアリーブランド、DSオートモビルから、新たなハイエンドモデル「DS N°8(ナンバーエイト)」が登場。当代屈指の性能を誇る電気自動車であり、かの地では大統領専用車にも選ばれる一台の、独創の魅力に触れた。
-
メルセデスAMG GLC53 4MATIC+(4WD/9AT)【海外試乗記】 2026.5.27 「メルセデス・ベンツGLC」にスポーティーな「メルセデスAMG GLC53 4MATIC+」が仲間入り。「43」と「63」の中間、AMGとしては松竹梅の竹にあたるモデルだが、今後はそのポジションの重要性がさらに増すことになるという。本国ドイツでドライブした印象をリポートする。
-
NEW
レクサスES350h(FF/CVT)/ES350e(FWD)/ES500e(4WD)【海外試乗記】
2026.6.3試乗記「レクサスES」がフルモデルチェンジ。シャシーがFFベースというのは歴代モデルと同じだが、新型ではボディーサイズがググッと拡大。「LS」の6輪ミニバンコンセプトが登場したこともあり、今後のレクサスセダンの総代を担うことになる。北米で乗った印象をリポートする。 -
NEW
ミドシップ化で運動性能はどう変わる? 「GRヤリスMコンセプト」の現時点での完成度を体感
2026.6.3デイリーコラム「GRヤリス」をベースとしたミドシップ4WDとして市販化を目指す「GRヤリスMコンセプト」。現在もスーパー耐久に投入されるなどして鍛えられているが、その開発車両をドライブできた。普通のGRヤリスとの運動性能の違いや、新開発エンジンの印象などをリポートする。 -
NEW
第115回:メイク・アメリカ・グレート・アゲイン!(後編) ―デザインもサイズも規格外! 魅惑のアメリカ車はなぜ“主役”になれないのか?―
2026.6.3カーデザイン曼荼羅トヨタ&ホンダが発表した、米国生産車の日本導入計画。しかしアメリカには、規格外に面白いクルマがまだたくさんあるのだ! カーデザインの識者とともに魅惑の日本“未”導入車を探すとともに、魅力的なアメリカ車が、それでも主役になれない理由を考えた。 -
どうしてピアノブラックの内装材は多用されるのか?
2026.6.2あの多田哲哉のクルマQ&Aよく目にするピアノブラックの内装材は、「キズや脂汚れが目立つ」などネガティブな評価もしばしば。それでも多用されているのはなぜか? 車両開発者の多田哲哉さんに聞いてみた。 -
BSAゴールドスター650(5MT)【レビュー】
2026.6.2試乗記かつて一世を風靡(ふうび)した英国の名門、BSAが復活! 新生第1号モデルである「ゴールドスター650」は、クラシックで優雅なお散歩バイク……と思いきや、ツインカムの大排気量シングルで、ライディングも前のめりに楽しめるマシンに仕上がっていた。 -
レストモッドがイメージ 特別なオニツカタイガーの魅力に迫る
2026.6.1オニツカタイガーの新作ドライビングシューズを知る<AD>オニツカタイガーが、“レストモッド”と呼ばれるクルマのレストア&カスタム手法に着想を得たドライビングシューズを発表。4タイプ製作された、「MEXICO 66 DRIVING」のスペシャルバージョンの魅力に迫る。































