ジープ・コンパス リミテッド(FF/CVT)【試乗記】
若者にも、ベテランにも 2012.03.22 試乗記 ジープ・コンパス リミテッド(FF/CVT)……298万円
ジープブランドのエントリーモデル「ジープ・コンパス」が日本に上陸。FF仕様しか用意されない割り切った“シティークルーザー”の味わいはいかに?
FFのみの「シティークルーザー」
ジープブランドのエントリーモデル、「ジープ・コンパス」が新しくなり、日本に上陸した。2012年モデルは、「グランドチェロキー」ゆずりの顔が与えられ、ミニ“グラチェロ”といった存在に。ジープ・コンパスを購入したオーナーは、ベーシックなクルマながら、上級モデルの雰囲気を手に入れられ、一方、街を走るグラチェロ似のジープが増えることによって、グランドチェロキーそのものの存在感もアップするというわけだ。あたかも、かつての「日産スカイライン」と「ラングレー」のような関係といったら……スイマセン、ちょっと古すぎましたね。
ジープブランド全体のモデルラインナップを俯瞰(ふかん)すると、ヘビーデューティー方面にちょっぴり涙目の「チェロキー」(3.7リッターV6)、その子分として「パトリオット」(2.4および2リッター直4)、別格として伝統的な“ジープ”の姿を色濃く残す「ラングラー」(3.6リッターV6)が配される。シティー派には、豪華な「グランドチェロキー」(5.7リッターV8および3.6リッターV6)を頂点に、妹分として「コンパス」(2リッター直4)が用意される。
ジープ・コンパスは、やはりブランドのボトムレンジを受け持つパトリオットの姉妹車で、ただし4WDモデルも選べるパトリオットに対し、こちらはFFモデルのみの設定となる。コンパスをして「『シティークルーザー』と呼んでください」とは、クライスラー/ジープ広報担当者の弁である。
「パトリオット」より豪華な位置付け
ジープ・コンパスは、モノコックボディーに2リッター直4エンジン(156ps/6300rpm、19.4kgm/5100rpm)を横置きして、CVTを介して前輪を駆動する。つまり、少々体格のいい4ドアワゴンといえる。
なんでもマーケットリサーチの結果によると、ジープブランドのクルマを購入した人のうち「4WDが必要だから」と答えたのは1割に満たない9%、見かけで選んだ人が大半(45%)だったという。高い悪路走破性のイメージが定着していることはうれしいが、日常で使うには自慢の4WDシステムは無くてもいいという、痛し痒(かゆ)しの結果となった。
そこで、シティーユースのエントリー役として導入されたのが、今回のFFコンパス。「ちょっと変わったコンパクトカー(北米基準で)が欲しい」という層、例えば「クライスラーPTクルーザー」を購入したような女性ユーザーや、日本車オーナーをも取り込もうという戦略的なモデルなのだ。日本に導入されるコンパスの価格は298万円。300万円を切る値付けにより「訴求できる顧客層が、1.5倍にもなりました」と、マーケッターはソロバンをはじく。
まだパトリオットの2リッターFFモデルより40万円ほど高いが、シティークルーザーたるコンパスなら内装がシートヒーター付きのレザー仕様となり、フロントフォグランプが備わり、アルミホイールは17インチのパトリオットより1インチアップの18インチとなる。スピーカーがリアゲートにつるされるカタチにもなる「ミュージックゲート パワープレミアムサウンドシステム」も標準で付いてくる。
アメリカンな味わいがある
ジープ・コンパスのボディーサイズは、全長×全幅×全高=4460×1810×1665mm。「トヨタRAV4」「ホンダCR-V」と同カテゴリーの大きさだ。ホイールベースは、3車のなかで最も長い2635mm。
日本で販売されるジープのカタログモデルは全車右ハンドルで、コンパスもそれにならう。着座位置は高め。シートの形状は、バックレスト、クッションとも、あまりホールド性が考慮されない平板なもの。やんわりとしたクッション感があり、「アメリカ車って、こうだよなぁ」と安心させる座り心地である。
走り始めると、1450kgの車重に156psと、動力性能は順当なところ。トランスミッションのCVTは“バージョン2”に進化して、燃費が6〜8%向上(JC08モードで10.5km/リッター)、追い越し加速にも配慮されたという。急加速時には、先にエンジン回転が上がって後から速度が付いてくる「CVTくささ」が感じられるが、それは運転者の職業的なあら探しというものだろう。
個人的に気になったのは、発進時のスロットルの開きが急なこと。力強さの演出なのだろうが、やんわりアクセルペダルを踏んでも思いのほか勢いよく前に出て、ちょっと品がない!?
とはいえ、全体には鷹揚(おうよう)なドライブフィールで、カーブではゆるやかにロールし、ステアリングレスポンスもやんわりしたものだ。目がさめるようなシャープさはないが、「アメリカ車って、こうだよね」と、安心して同乗者とうなずきあえるジープ・コンパスである。ミニ“グラチェロ”として、懐に余裕がある若者が乗ってもカッコいいが、クルマ趣味が一巡した、ハートがヤングな方々が選んでもおもしろいかもしれない。都会的なルックスながら、ステアリングホイールを握りながら「ちょっとした冒険」を夢想したくなる、アメリカンな雰囲気がしっかりと漂っている。
(文=青木禎之/写真=高橋信宏)

青木 禎之
15年ほど勤めた出版社でリストラに遭い、2010年から強制的にフリーランスに。自ら企画し編集もこなすフォトグラファーとして、女性誌『GOLD』、モノ雑誌『Best Gear』、カメラ誌『デジキャパ!』などに寄稿していましたが、いずれも休刊。諸行無常の響きあり。主に「女性とクルマ」をテーマにした写真を手がけています。『webCG』ではライターとして、山野哲也さんの記事の取りまとめをさせていただいております。感謝。
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