フォルクスワーゲン・ゴルフTSIコンフォートライン(FF/7AT)/TSIハイライン(FF/7AT)
すべての面で進化してる 2013.06.05 試乗記 フォルクスワーゲンの中核モデル「ゴルフ」がフルモデルチェンジ。7代目となる最新型を、排気量の異なる2つのグレードで試した。「変わったなぁ!」
新型「ゴルフ」、富士山麓の試乗会で最初に乗ったのは「コンフォートライン」である。2エンジン3グレードからなる新シリーズの真ん中にして、1.2リッターの上級モデルだ。
乗り込むと、「ワッ、広くなった」というのが第一印象。全幅は旧型プラス10mmで、ついに1800mmになったが、室内幅はそれ以上に拡幅された感じだ。クロムの使用面積が増えたダッシュボードは一気に“二枚目”になった。アウディっぽくなったと言ってもいい。シェイプしてアゴの線がはっきり出たような外観もイケメンになったと思う。
正味30分あまり。しかも強い風雨。会場のカントリークラブからいったん下って、登り方向を目指す。後席の編集部KさんとNさんが口をそろえて「後ろ、広い!」と言う。乗り心地のよさにも感心している。
ボディーがタテヨコに少し大きくなったにもかかわらず、新型は30~50kgの軽量化を果たしている。しかし相変わらずボディーの剛性感は高い。おかげで、ひとまわり乗り心地がかろやかになった。特に1.2リッターは史上最も軽く感じるゴルフである。
新しい直噴1.2リッターターボはヘッドが4バルブDOHCになり、さらなる低CO2対策が施されてアイドリングストップも付いた。パワーやトルクは旧SOHCと変わらない。だが、富士山を上り始めて、その違いに驚く。滑らかさと静粛性が格段にアップした。パドル付き7段DSGのMTモードで引っ張ると、精密な回転感覚が気持ちいい。静かといっても、イイ音がする。たった105psだから馬鹿力はないが、キャラクターは「回してナンボ」だ。「GTI」じゃないフツーのゴルフ用としては史上最も楽しいエンジンである。
“エンジン違い”は大きな違い
もう1台の試乗車は最上級の「ハイライン」。オプションのホワイトレザーシートに合わせて室内の下半分も明るいベージュ系だ。セレブ感漂う高級ゴルフである。今度は東名までアシを伸ばす。
鋳鉄ブロックから総アルミ製に変わった新型1.4リッター直噴ユニットはターボ1基。140psのパワーは旧ハイライン用ツインチャージャーから20psドロップしたが、トルクは微増している。エコ性能は大きく進歩し、こちらも100%のエコカー減税が適用される。1.4リッターエンジンの燃費向上に貢献したのがアクティブシリンダーマネジメントシステム(ACT)で、低負荷時に4気筒の真ん中2本をシャットダウンする。こうした気筒休止システムの通例で、作動のオンオフは体感できない。計器盤のモニターも見落としてしまったので、そのうちACTが付いていることも忘れてしまった。
105psの1.2リッターでもよく走るのだから、140psは十分以上だ。発進時、最初のひとかきでグワッと前に出る旧型ツインチャージャーの力強さには及ばないものの、これだってウエット路面のスタートでうっかり右足に力が入ると、前輪が一瞬、空転する。トルクがあるので、1.2リッターのように回さなくてもスイスイ加速する。エンジン音もさらに輪をかけて静かだ。ただ、コンフォートラインで感じたバイクの4気筒のような気持ちよさはない。その点で、今度の1.2リッターゴルフには、「小さいほうで十分」ということ以上の魅力が加わったと思う。
ハイラインの車重は、オプション込みのテスト車で1350kg。1.2リッターのコンフォートラインより110kg重い。タイヤはゴーゴーの16インチからヨンゴーの17インチにグレードアップし、乗り心地には重厚さが加わる。
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早い、安い、そして美味い
新型ゴルフにはミリ波レーダーを使ったプリクラッシュブレーキシステム「Front Assist Plus」や、「up!」でおなじみの「シティエマージェンシーブレーキ」が全モデルに付く。コンフォートライン以上には「アダプティブクルーズコントロール(ACC)」も標準装備される。全車速追従機能付きのフルスペックで、信号待ちなどで自動停止したあと、アクセルを軽く踏めば自動発進して、ロックオンした前走車を再び追いかける。ACCのスイッチ類はホーンパッドの左側に集中し、ハンドルを握ったまま左の親指だけで操作できる。こうした装備が“ゴルフ的”かどうかはともかく、最も使いやすいACCかもしれない。
最上級のハイラインには「ドライビングプロファイル機能」が付いている。名前がスゴイので何かと思ったら、エンジンや変速機などの制御をノーマル、エコ、スポーツなどのモードに設定できる、要はアウディの「ドライブセレクト」と同じものだった。いずれにしても、7代目のゴルフは「装備のゴルフ」ともいえる。
フォルクスワーゲングループのFF車、フォルクスワーゲンでいえば「ポロ」から「パサート」までを共通のモジュール(≒部品)でつくる“MQB”戦略の第1弾が新型ゴルフである。これにより、より早くより安く作れる。実際、新型ゴルフの生産時間は旧型より3割も短縮されたという。なんて話は、ゴルフファンや一般のユーザーにはべつにおもしろくないだろう。
しかし、会社や株主を喜ばせるそうした革新的クルマづくりの末にできた新型ゴルフが、まぎれもないゴルフで、しかも旧型よりすべての面で進化したゴルフであったことは、今回の短い試乗でも確認できた。特に、さわやかな乗り味の1.2リッターモデルが印象的だった。またじっくり乗ってみたい。
(文=下野康史<かばたやすし>/写真=峰昌宏)
テスト車のデータ
フォルクスワーゲン・ゴルフTSIコンフォートライン
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4265×1800×1460mm
ホイールベース:2635mm
車重:1240kg
駆動方式:FF
エンジン:1.2リッター直4 DOHC 16バルブ
トランスミッション:7段AT
最高出力:105ps(77kW)/4500-5500rpm
最大トルク:17.8kgm(175Nm)/1400-4000rpm
タイヤ:(前)205/55R16(後)205/55R16(ミシュラン・エナジーセーバー)
燃費:21.0km/リッター(JC08モード)
価格:269万円/テスト車=292万5200円
オプション装備:NAVI<新型ゴルフ導入記念価格>(8万5050円)/ETC(1万3650円)/セーフティパッケージ(13万6500円)
テスト車の年式:2013年型
テスト車の走行距離:--km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター
参考燃費:--km/リッター
フォルクスワーゲン・ゴルフTSIハイライン
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4265×1800×1450mm
ホイールベース:2635mm
車重:1350kg
駆動方式:FF
エンジン:1.4リッター直4 DOHC 16バルブ
トランスミッション:7段AT
最高出力:140ps(103kW)/4500-6000rpm
最大トルク:25.5kgm(250Nm)/1500-3500rpm
タイヤ:(前)225/45R17(後)225/45R17(ピレリ・チントゥラートP7)
燃費:19.9km/リッター(JC08モード)
価格:299万円/テスト車=372万9200円
オプション装備:NAVI<新型ゴルフ導入記念価格>(8万5050円)/ETC(1万3650円)/バイキセノンヘッドライトパッケージ<LED付き>(10万5000円)/DCCパッケージ<17インチアルミホイール付き>(14万7000円)/レザーシートパッケージ(26万2500円)/電動パノラマスライディングルーフパッケージ(12万6000円)
テスト車の年式:2013年型
テスト車の走行距離:--km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター
参考燃費:--km/リッター

下野 康史
自動車ライター。「クルマが自動運転になったらいいなあ」なんて思ったことは一度もないのに、なんでこうなるの!? と思っている自動車ライター。近著に『峠狩り』(八重洲出版)、『ポルシェよりフェラーリよりロードバイクが好き』(講談社文庫)。
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