ランドローバー・レンジローバー オートバイオグラフィー(4WD/8AT)/レンジローバー スポーツ 5.0 V8 リミテッド(4WD/6AT)
パイオニアに揺るぎなし 2013.07.03 試乗記 伝統は進化するからこそ受け継がれる。オールアルミ製モノコックボディーを採用するなど、果敢に攻めるSUV界のパイオニア「レンジローバー」のステアリングをあらためて握った。老舗の強み
長崎でランドローバーに乗った。ランドローバーは、2012年、65年の歴史において最高の台数を販売した。日本でも同じような状況で、実に販売好調という。最も貢献したのは、「イヴォーク」だ。
インポーターは、ランドローバーが大切にする要素として「Iconic(アイコニックなデザイン)」「British(ブリテッシュ・デザイン)」「Expert(SUV専門であること)」「Fits in Anywhere(どこへでも行かれる走破性)」「Power & Strength(力強さ)」の5つを挙げる。
おおむね異論はない。力強さや走破性はよそもすごいかもしれないが、アイコニックで、ブリティッシュで、エキスパートという、努力や資金では得られないものこそがランドローバーの強みだろう。同じことをやってもランドローバーだとさすがと言われ、よそがやるとランドローバーのやり方だと言われるのだ。ランドローバーがズルいんじゃなく、ずっとそれでやってきたことによって獲得した地位というわけだ。
それにしても――。一時期、アメリカのフォードがいろんなブランドを買いあさり、業界再編のプレーヤーとして大胆な買収を重ねた。ランドローバーとジャガーが引き合わされたのはその頃のこと。後にフォードは抱えきれなくなってほとんどを手放したが、ランドローバーとジャガーはともに英国ブランドで、得意とする部分がまったく重ならないので別れる理由はなかった。
今はタタ・グループの傘下となって資金を得たので、新しいデザインや新しい技術を盛り込んだ新しいモデルをどんどん出すことができる。他の英国ブランドを見てもわかるように、自身はお金もうけが苦手でも、商品に常に欲しいと思わせる魅力を備えるのは立派というほかない。
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
サルーンに匹敵する快適さ
最初に乗ったのは、「レンジローバー オートバイオグラフィー」。1670万円。レンジには数カ月前に横浜の試乗会で乗って以来だが、横浜でよかったものは長崎でもよい。
5リッターV8スーパーチャージド・エンジンが載ったレンジは本当に速い。先代よりも軽くなったとはいえ、2520kgという重量級の車体を、物理の法則を超越したように軽やかに動かす。そのすべてはいいとこ燃費6km/リッターというぜいたくさの上に成り立っているのだが、それを気にしない人のためにあるクルマだ。ATが6段から8段になって変速の頻度は増したはずだが、ショックはまったく気にならない。
エアサスの乗り心地は極低速だと若干落ち着きがないのだが、40km/hを超えたあたりからビシッと座りがよくなって、そこから先はマジック・カーペット・ライド。ランドローバーの連中は身内にジャガーがいながらも“ライバルはサルーン”と言わんばかりの快適性をレンジに与える。
今回はオフロードを走る機会はなかったのだが、タイヤの接地性を確かめたくてホテルのバックヤードで見つけたうねりに乗り入れてみた。そしたらあなた、前:マクファーソンストラット、後ろ:ダブルウイッシュボーンという四輪独立懸架なのに、縮む方のサスペンションはタイヤがボディーにめり込まんばかりに縮み、伸びる方はタイヤがホイールアーチとの間に数十センチの隙間をつくって伸びながら、4輪とも接地したまま。接地しきれなくなっても電子制御でトラクションを保つことはできるし、このクルマにもそうした電子デバイスは備わるのだが、まずは行けるところまで接地させるという、本格的なオフローダーとしての矜持(きょうじ)を見せつけられた。
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
「スポーツ」は今が買い時
午後から乗ったのは、「レンジローバー スポーツ 5.0 V8 リミテッド」。レンジ スポーツは4月にニューヨークショーで次期型がすでに発表され、年末までには日本でも切り替わる。それまでの間、5リッターV8自然吸気エンジンを搭載した1モデルに絞って、従来スーパーチャージドモデルにしか付かなかったパドルシフト、20インチタイヤ&ホイール、フロント・パークディスタンス・コントロールなどの装備を装着してお買い得感をもたせたモデルを販売する。793万円。
2490kgと、新型レンジローバーとほぼ変わらない車重に自然吸気エンジンだから、いくぶんおとなしいが、必要にして十分なパワーを得ている。本来、レンジローバー スポーツは、レンジローバーではなく「ディスカバリー」をベースにいくらかコンパクトに仕上げ、レンジローバー風のルックスを与えたモデルだ。ボディーはレンジローバーのような完全なモノコックではなく、剛性のあるボディーをフレームに載せた構造なので、レンジと同じエアサスに四輪独立懸架ではあるものの、オンロードでの立ち居振る舞いはレンジローバーほどには洗練されていない。ただし、それは新型レンジと比べるからであって、SUVのなかでは依然いい線をついている。
旧レンジ顔のほうが新世代のレンジ顔よりも好きだという人はいる。どのようにモデルチェンジしても必ずいるものだ。そういう人にとっては、レンジ スポーツの買い時かもしれない。
ところで、ランドローバーは総じて魅力的だが、まだまだ日本で伸び代があると思う。持てる魅力の半分しか使わないで日本で商売をしているからだ。なにしろ本国には最大トルク70kgm超のV8や同60kgm超のV6など、よだれが出そうなディーゼルエンジンがあるというじゃないか。日本の排ガス基準であるポスト新長期規制は厳しいのだろうが、クリアしているメーカーもある。SUVほどディーゼルが似合うカテゴリーはない。Fits in Anywhereを掲げるなら、そう遠くないうちに、日本人にもディーゼルエンジンを味わわせてほしい。
(文=塩見 智/写真=小林俊樹)
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
テスト車のデータ
ランドローバー・レンジローバー オートバイオグラフィー
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=5005×1985×1865mm
ホイールベース:2920mm
車重:2520kg
駆動方式:4WD
エンジン:5リッターV8 DOHC 32バルブ スーパーチャージャー付き
トランスミッション:8段AT
最高出力:510ps(375kW)/6500rpm
最大トルク:63.7kgm(625Nm)/2500rpm
タイヤ:(前)274/40R22 108Y/(後)274/40R22 108Y(コンチネンタル・クロスコンタクト LXスポーツ)
燃費:5.3km/リッター(JC08モード)
価格:1670万円/テスト車=1867万1480円
オプション装備:プレミアム・メタリックペイント(15万9000円)/電子制御リア・ディファレンシャル(10万円)/アダプティブ・クルーズコントロール(29万円)/レザー・ヘッドライニング(40万6000円)/リアシート・エンターテイメント・システム(33万円)/ラゲッジスペースレール(4万8000円)/22インチ スタイル7アロイホイール(20万円)/パワーサイドステップ一式(43万8480万円)
テスト車の年式:2013年型
テスト車の走行距離:--km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター
参考燃費:--km/リッター
拡大 |
ランドローバー・レンジローバー スポーツ 5.0 V8 リミテッド
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4795×1930×1810mm
ホイールベース:2745mm
車重:2490kg
駆動方式:4WD
エンジン:5リッターV8 DOHC 32バルブ
トランスミッション:6段AT
最高出力:375ps(276kW)/6500rpm
最大トルク:52.0kgm(510Nm)/3500rpm
タイヤ:(前)275/40R20 106Y/(後)275/40R20 106Y(コンチネンタル 4×4 スポーツコンタクト)
燃費:6.0km/リッター(JC08モード)
価格:793万円/テスト車=820万4000円
オプション装備:パフォーレイテド・プレミアム・レザーシート(20万円)/キーレス・エントリー(7万4000円)
テスト車の年式:2013年型
テスト車の走行距離:--km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター
参考燃費:--km/リッター

塩見 智
-
BMW 120オリジナル(FF/7AT)【試乗記】 2026.8.25 BMWの主要モデルに新グレードの「オリジナル」が設定された。位置づけとしては新たなエントリーグレードということになるが、BMWらしさを損なうことなく装備を厳選し、価格を抑えたのがポイントだという。「1シリーズ」の「120オリジナル」の仕上がりをリポートする。
-
トライアンフ・スラクストン400(6MT)【レビュー】 2026.8.25 カフェレーサーの本場である、イギリスのトライアンフがリリースした「スラクストン400」。車名のとおり、カジュアルに楽しめる400ccクラスのマシンではあるのだが、その実物からは、エントリーモデルとは思えない本物の香りが漂っていた。
-
スズキeスカイ プロトタイプ(FWD)【試乗記】 2026.8.24 スズキが満を持して世に問う、軽規格の新型電気自動車「eスカイ」。軽乗用車の本質である、生活の足としてのちょうどよい性能を追求したという一台は、どのようなクルマに仕上がっているのか? 2026年秋の正式発表を前に、プロトタイプモデルに試乗した。
-
DS N°8エトワールAWD(4WD) 2026.8.22 DSオートモビルから登場した、新時代の旗艦モデル「N°8」。完全新設計のシャシーにアクティブサスペンションを組み合わせた電気自動車(BEV)は、往年の“ハイドロ”を思わせる乗り味と人車一体の走りを備えた、稀有(けう)なサルーンに仕上がっていた。
-
メルセデス・ベンツCLA220(FF/8AT)【試乗記】 2026.8.21 メルセデス独自のオペレーティングシステムと、フル電動化を見据えた最新プラットフォームを組み合わせて開発された新型「CLA」。その先鋒として発売されたハイブリッドモデルの仕上がりを、セダンの上級グレードに試乗して確かめた。
-
NEW
トヨタbZ4XツーリングZ(4WD)【試乗記】
2026.8.29試乗記「トヨタbZ4X」にワゴンのようなロングボディーを持つ「ツーリング」が登場。ただ長くなっただけではなく、今回試した4WDモデルではパワーもアップ。乗り味にも微妙な影響を及ぼしているから見逃せない。経路充電を試しつつ、370km余りをドライブした。 -
NEW
思考するドライバー 山野哲也の“目”――ポルシェ・タイカンGTS編
2026.8.28webCG Moviesレーシングドライバー山野哲也が「ポルシェ・タイカン」に試乗。最高出力700PSの「GTS」グレードに、ワインディングロードでむちを当てた印象は? -
酷評もされたBEVのフェラーリが4000万ドル!? 「ルーチェ」の初物に誰が、なぜ大金を出したのか?
2026.8.28デイリーコラムフェラーリ初の電気自動車として話題になった「ルーチェ」。その特別仕様の生産0号車が、米国内のカーオークションにおいて4000万ドル(約64億円)という衝撃価格で落札された。その背景について、事情に詳しい西川 淳がリポートする。 -
第60回:BYDオートジャパンの社長を直撃! いま日本で「ラッコ」を買う正義とは?
2026.8.27小沢コージの勢いまかせ!! リターンズ中国BYDの軽スーパーハイトワゴン「ラッコ」がついに日本上陸を果たした。やっぱりというか期待どおりというか、その低価格と装備の充実ぶりに不躾・小沢コージも大変驚いた。BYDオートジャパンの東福寺厚樹社長を直撃し、いろいろ聞いてきた。 -
BMW iX3 50 xDrive Mスポーツ(前編)
2026.8.27あの多田哲哉の自動車放談BMWの期待がかかる電気自動車(EV)「iX3」の新型に、元トヨタの多田哲哉さんが試乗。その仕上がりを、BMWとの協業経験もあるエンジニアはどう評価するのだろうか? -
これが次世代アウディの源流 ハイブリッドスーパーカー「ヌヴォラーリ」に乗って気づき感じたことは?
2026.8.27デイリーコラム2026年6月に発表されたアウディのハイブリッドスーパーカー「ヌヴォラーリ」は、同ブランドの新しいデザインフィロソフィーを体現したモデル。個性的な内外装やこだわりのつくり込み、そしてステアリングを握った印象を米モントレーから報告する。


































