第7回:「3シリーズGT」は成功するのか?
野球セオリーによるコージのゴーイン解説(笑)
2013.06.24
小沢コージの勢いまかせ!! リターンズ
クルマとピッチングの不思議な関係?
突如野球の話で恐縮ですが、ピッチャーはやはり速くてキレのいいストレートがキホンのキであーる。ダルビッシュはほぼ常に150km/h以上のストレートを投げるし、古くは鋭く落ちるフォークが武器の野茂英雄もストレートが素晴らしかった。というかストレートのキレが良かった時に、バッタバッタとフォークで三振が取れたわけだ。
つまり、ストレートを生かすために変化球が存在し、変化球を生かすためにもまたストレートが存在する。このあたりは実はクルマと派生車種との関係にもよく似てたりする。
というのも、クルマをゴーインにピッチングに例えると、おそらくストレートはセダンで、カーブとシュートはクーペやステーションワゴンで、そうだな、フォークは強引に例えると華やかなオープンモデルといったところでしょうか。
ただし、ここ20年ぐらいの間に微妙な変化球がたくさん出てきて、昔からあるけどほぼストレートの振りで投げるスライダーとか、握りを変えただけの4シームや2シームなるものが存在する。それはクルマも同じで、言ってみればクロスオーバーのことだ。
これらは「セダンとバンの中間」とか「SUVとセダンとミニバンのいいとこ取り」とか、派生車種と派生車種のさらに間を突くものでまさにニッチ。特にバブル以降にいろいろ勢いで出てきて、ただしほとんど長持ちしなかった。例えば「トヨタ・ナディア」や「オーパ」はすぐに消えたし、「BMW 3シリーズコンパクト」でさえ確か2世代存在して消えた。
ただし、今やピッチング界のクロスオーバーたるスライダーや2シームがダルビッシュの武器となってるように、クルマ界のクロスオーバーも結構モノになりつつある。
例えば「BMW 1シリーズ」なんてある意味3シリーズコンパクトの進化形だし、一番スゴイのはなんたって「MINI」。今や「ハッチバック」に「コンバーチブル」に「クラブマン」に「クラブバン」に「クーペ」に「ロードスター」に「ペースマン」にそれこそ「クロスオーバー」! と実に全8タイプ。どれもバカ売れってことはなさそうだけど、それなりの存在意義を感じる。
最初はピンとこなかったけど……
で、前置きが長くなっちゃったけど先日出た「BMW 3シリーズ」の派生車種、「GT」こと「グランツーリスモ」だ。正直、出る前はあまり期待してなかった。それは兄貴分たる「5シリーズGT」が、日本じゃデカすぎてイマイチピンとこなかったことと、3シリーズGTがパッと見「スゲーカッコいい!」という感じではなかったからだ。
だが、先日試乗会だけでなく借りて数日乗ってみて、結構イイ手応えを得ました。これはこれでアリなんではあるまいかと。
冷静に考察すると、要はコイツは「3シリーズツーリング」のちょっと背の高いSUVテイスト版だ。サイズで比べると200mm長くて、30mm広くて、50mm高い。オマケにホイールベースも110mm長く、結構凝っている。見た目で同一パネルは確かに1枚もない。ただし、エンジンやシャシーなんかのソリューションはセダン&ツーリングとほぼ同じ。
でね、乗ると一番いいのは、確実にラクチンなこと。例えばシートの高さ一つとっても3シリーズセダン&ツーリングより6センチも高く、逆に考えると今までが低すぎた。正直、3シリーズは狭い駐車場での乗り降りが若干面倒だったし、特に不肖小沢は最近腰痛なだけに余計ツライ(苦笑)。
同時にヤケに開放的。これまたシート高アップの恩恵だが、独特の閉じ込められ感がない。
リアシートの広さも感動的で、ホイールベースが延びたこともあって身長176cmの俺が前後に座ってリアのヒザ前はコブシが3つほど入る。ムダという人もいるだろうけど、最近の超スペース系の軽ですらコブシが4つぐらい平気で入るわけだから、その倍以上の価格の3シリーズがこれくらい広くても当たり前でしょ。
いいストレートあってこその使える変化球
さらに圧巻はワゴンをしのぐ520リッターの超バカデカい荷室と、走りよね。
正直、最初に試乗会で乗った時は、乗り心地はいいけど全体的になんかユルめで「なんだかな……」って感じが多少あった。だが、借りていつもの道で乗ってみると、ハッキリわかるのよ。「これはリアルBMWだ!」と。
真っすぐ走ってる時に、「真っすぐ走ってます!」と教えてくれるステアリングセンターの感触と、ザラザラとした路面のザラザラとした感覚をそのまま振動で教えてくれるステアリング自体、ホント、車速の10km/hと20km/hの違いが普通に分かるクルマって、イマドキあまりない。
それと自慢の8ATはダイレクト感が高く、緩い登り坂をゆっくり走ってると、直噴直4エンジンがギリギリの低回転で回って駆動力を発揮する鼓動とでもいうべきものまで伝わってくる。全体に安楽になった3シリーズGTだけど、その核となるテイストは、セダンやツーリングとまるで変わりないのよ。
だから俺はあらためて思ったな。まさに、いい変化球はいいストレートが生命線。キホンがちゃんとしてれば派生車種も味わい深いし、それなりに魅力的。そして、今後もこういうクロスオーバーはまだまだ手を変え品を変え出てくるんだろうなぁと。
MINIがそうであるように、核となるクルマの味が濃く、みんなに支持され、多く売られているほど、変化球にも確実に市場がある。それは「人は確実に人と違う物が欲しい」からだ。
そして3シリーズGTは、変化球でいうスライダーや2シームのごとく、一見ストレートに似てはいるが、非なるモノゆえにイケる気がする。
いわゆるキホンを忠実に受け継いだ変化球。いい使い手がいれば確実に成功する。それなりには!
って勝手に思ってる小沢なのであります(笑)。
(文と写真=小沢コージ)

小沢 コージ
神奈川県横浜市出身。某私立大学を卒業し、某自動車メーカーに就職。半年後に辞め、自動車専門誌『NAVI』の編集部員を経て、現在フリーの自動車ジャーナリストとして活躍中。ロンドン五輪で好成績をあげた「トビウオジャパン」27人が語る『つながる心 ひとりじゃない、チームだから戦えた』(集英社)に携わる。 YouTubeチャンネル『小沢コージのKozziTV』
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