第48回:しょ、植物からクルマをつくるだとぉ! トヨタ車体の「タブウッド」に結構驚いた件
2024.06.04 小沢コージの勢いまかせ!! リターンズ木はプラスチックより強いってホントなの?
「植物からクルマをつくりたい。それが僕らのミッションで、そもそもそれがやりたくてこの会社に入ったくらいなので(笑)」(トヨタ車体 材料技術部主査の西村拓也さん)
電気自動車だのSDV(ソフトウエア・ディファインド・ビークル)だの、今やクルマも電子デバイスのひとつか……っていうハイテクな時代。こういうエコなアプローチもあったかと思い出しましたわ。それは先日行った「人とくるまのテクノロジー展2024」のトヨタ車体ブースでお披露目されていた「TABWD(タブウッド)」。
なんじゃそれ? って知らない人のために説明すると「Toyota Auto Body WooD」の略で杉の間伐材とバイオ樹脂やプラスチック(ポリプロピレンなど)からつくる、ある種の自動車用合成素材。なんだ、木とプラスチックの混ぜ物か。全然珍しくないじゃない! と言うなかれ。木を家屋や家具に使うならともかく、工業製品、それも自動車用として使うのは結構難しく、そもそもベニヤ板はJAS規格で、工業製品たる合成樹脂はJIS規格と、品質をチェックする基準からして違います。
ここからは小沢の勝手な想像ですが木には「燃える」「腐る」というベタなイメージがあり、高熱になるうえ、ヘタすると燃える自動車には使えないというシロウト判断をしがち。
ところがタブウッドの開発をリードする西村さんいわく「木材ってすごい素材で温度は-200℃から+200℃まで安定していて、例えばロシアで-40℃になっても木は折れませんよね。でもプラスチックだったら折れちゃいます」だそうで、その環境適合性は高く、この手の木材やケナフ等の自動車用パーツへの転用開発を実は1997年ぐらいからやってるんだそうな。
そのために東大農学部出身で博士号まで持つ西村さんはトヨタグループに入社したそうで、ぶっちゃけ「もう20年こんなことやってます。やっと(日の目を見ました)ですよ(笑)」とか。その原点には「木はプラスチックより軽くて強い」という強い信念があるわけです。事実、タブウッドは木の割合を高めると強度が上がるうえ「火にも強い」とか。
なにより木は二酸化炭素(CO2)を吸収するカーボンニュートラル素材なのに、日本の高度成長期に植えられた杉は、現在ではその2割程度しか木材として使われていないという現実があるそうな。
つまり上手に活用されてないうえ、花粉をまき散らすという側面もある。要はそんな杉の間伐材を自動車用エコ素材として使えればまさに一石二鳥どころか三鳥なわけですよ。
また日本の法律では木の比率が50%になると廃棄時の焼却などが許されるそうだけど、同社は信念としてそれはしたくないとか。ちゃんとリベット化などの再利用を考えているうえ、タブウッドはリサイクルすることで逆に素材が強くなる場合もあるとかで、つくづくエコな素材なのよ。
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リッチな硬質感とツヤがいい感じ
ちなみにタブウッドはすでに2012年には商品化されていて、具体的には「ハイエース」のバッテリーキャリアや「アルファード」のハーネスカバー、「ノア/ヴォクシー」のフォグランプブランケットなどに使われてます。要は「軽量」かつ「耐熱性アリ」という利点を生かした骨格素材にとどまり、一般的には日の目を見てませんでした。
ところが今回はアルファードのレゴブロック風模型の素材として使われただけでなく、実車のサイドミラーやドア装飾、シートバックハンドル、格納テーブルの天板としても使用。
ウッドともプラスチックとも違う、大理石や焼き物のような独特の風合いをいよいよ装飾パーツとして生かそうと本格始動したわけで、ここに小沢も驚いた次第。
実物はリッチな硬質感とツヤがあり、しかも独特な模様は世界にひとつとして同じ物がないんだとか。かつてイタリアの高級車ブランドに日本の東レが生んだスエード調素材「アルカンターラ」が愛用されたように、軽くて強くてオシャレな新自動車マテリアルとして認知されたらすてきだなぁと思ったわけ。
さらに今回は「自動車業界以外にもタブウッドを広げたい」と衣・食・住パーツの本格展開も図っており、ハンガーやスマホカバー、さらに某有名建築家がタブウッド素材でつくった食器も展示。なかでも食器はかつてない軽さなうえに石のような触感が秀逸で、つくづくタブウッドの可能性広し。
つくり方としてもプラスチック樹脂と完全に同じ射出成形技術が使えるのも量産向きで大変素晴らしいのです。
運転席に座ってるだけで健康診断?
それからもう一つ、今回の人テクで個人的に面白かったのが旧知のサプライヤー、SMKの「車載対応電波式生態情報センサー」。いわば2023年発売の「BYDドルフィン」に標準で装備された幼児置き去り検知機能の延長線上にある技術で、60GHz帯のミリ波レーダーを車内用に使ったモノ。
寝ている幼児を車内に置き去りにしないよう、天井に配したミリ波レーダーで存在を検知できるほか、今や成人の心拍数・呼吸数・心拍間隔までセンシングできるんだとか。
これなら突然の心不全や発作にも対応できるし、ストレス状態や眠気も察知可能。なんなら車内に座ってるだけで健康診断できる日も近いのかも? もっとも突如「5分前から過呼吸気味です! 深呼吸してください」とか「緊急緊急……アナタの不整脈レベルはC! 至急パーキングで停止し、医者に電話してください」……なんて言われたらキツいけど、それもまた時代なのか。
クルマの進化はつくづく果てしないなぁと思った次第ですわ。
(文と写真=小沢コージ/編集=藤沢 勝)

小沢 コージ
神奈川県横浜市出身。某私立大学を卒業し、某自動車メーカーに就職。半年後に辞め、自動車専門誌『NAVI』の編集部員を経て、現在フリーの自動車ジャーナリストとして活躍中。ロンドン五輪で好成績をあげた「トビウオジャパン」27人が語る『つながる心 ひとりじゃない、チームだから戦えた』(集英社)に携わる。 YouTubeチャンネル『小沢コージのKozziTV』
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