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メルセデス・ベンツA250 シュポルト(FF/7AT)【試乗記】

心して乗れ! 2013.07.31 試乗記 塩見 智 メルセデス・ベンツ A250 シュポルト(FF/7AT)

輸入車の最激戦区に投入されたメルセデスのスポーツハッチ「A250 シュポルト」。AMGの手が入ったその走りは、どのように仕上がったのか?

いま輸入ハッチが熱い

クルマに特別興味のない人にも知られる「フォルクスワーゲン・ゴルフ」が日本で新世代に切り替わったのをきっかけに、輸入Cセグメント・ハッチバックが盛り上がっている。ゴルフ登場に前後して、一通りの自動車雑誌が輸入Cセグハッチの特集をやった。それも一段落したので、今度は『週刊現代』や『週刊ポスト』あるいは『FRIDAY』あたりの、僕がコンビニで立って愛読する一般オヤジ系週刊誌に「いま輸入ハッチバックが熱い!」的な特集が組まれるタイミングか。

輸入車は一つのボディーに大小さまざまなエンジンを積み、装備にも大きく差をつけることで、幅広くモデルを設定する。形は同じなのに価格は倍以上ということも珍しくない。一口に輸入Cセグハッチといっても、「トヨタ・プリウス」と迷うモデルもあれば、レクサスと迷うモデルもある。

大ざっぱに言うと、現在の輸入Cセグハッチは、1.2~1.6リッターターボエンジンを積むベーシック系と、2リッターターボを積むパフォーマンス系に分けることができる。メルセデス・ベンツを例に挙げると、「A180」「B180」がベーシック系で、今回乗った「A250 SPORT(シュポルト)」や「B250」がパフォーマンス系といえるだろう。

2リッターターボエンジンとAMG仕立ての足まわりを持つ「A250 シュポルト」。レッドライン付きリアスカートをはじめとした専用の外装パーツも特徴。
2リッターターボエンジンとAMG仕立ての足まわりを持つ「A250 シュポルト」。レッドライン付きリアスカートをはじめとした専用の外装パーツも特徴。
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六角形のモチーフを散りばめた「ダイヤモンドグリル」が目を引くフロントマスク。ヘッドライトやフロントバンパーにも赤いラインがあしらわれる。
六角形のモチーフを散りばめた「ダイヤモンドグリル」が目を引くフロントマスク。ヘッドライトやフロントバンパーにも赤いラインがあしらわれる。
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ブラックのレザーDINAMICAシートとカーボン調トリムがスポーティーさを演出するインテリア。エアコンの吹き出し口には赤いリングが備わる。左右独立調整機構付きのエアコンなど、装備は充実。
ブラックのレザーDINAMICAシートとカーボン調トリムがスポーティーさを演出するインテリア。エアコンの吹き出し口には赤いリングが備わる。左右独立調整機構付きのエアコンなど、装備は充実。
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エコモードでも十分に速い

A250 シュポルトは、2リッター直噴直4ターボエンジンを横置きし、前輪を駆動する。このエンジンがなかなかのハイチューンで、最高出力210ps/5500rpm、最大トルク35.7kgm/1200-4000rpmという立派なスペックを誇る。最大トルク35.7kgmといえば、R32型「日産スカイラインGT-R」や996型「ポルシェ911カレラ」あたりとほぼ同程度。クルマは常に進化するので昔のクルマと比べてもしかたないが、車重もそれほど変わらないので想像の参考にしてほしい。

トランスミッションは7段のデュアルクラッチ式。変速プログラムをエコノミー、スポーツ、マニュアルから選べるのはA180と同じだが、スーパートルキーなエンジンなので、エンジンをかけると毎回そこから始まるEモードに入れっぱなしで十分に速い。残るスポーツ、マニュアルの両モードは交通量の少ないワインディングロードなどで、純粋に楽しみとして走る際に役立つだろう。

B250も同じエンジンを積むが、A250のみ「シュポルト」と車名にわざわざ「SPORT」をドイツ語読みさせる言葉がつく。そのココロは、説明不要のスペシャル部門、AMGが足まわりをはじめ、クルマづくりを担うところにある。サスペンション形式はA180と同じくフロント:マクファーソン・ストラット、リア:マルチリンクなのだが、スプリング、ダンパー、スタビライザーの仕様はまったく異なっていて、端的に言って非常に硬い。スムーズに動いてはいるが、硬い。

エンジンは最高出力210ps、最大トルク35.7kgmの2リッター直4ターボ。トランスミッションにはデュアルクラッチ式7段ATの「7G-DCT」を採用。
エンジンは最高出力210ps、最大トルク35.7kgmの2リッター直4ターボ。トランスミッションにはデュアルクラッチ式7段ATの「7G-DCT」を採用。
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足元は235/40ZR18サイズのタイヤにAMG5スポークアルミホイールの組み合わせ。ブレーキキャリパーは前後とも赤でペイントされる。
足元は235/40ZR18サイズのタイヤにAMG5スポークアルミホイールの組み合わせ。ブレーキキャリパーは前後とも赤でペイントされる。
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フロントアクスルとサスペンションはAMGが専用に開発。電動パワーステアリングやトランスミッション、ESPにも専用のチューニングが施されている。
フロントアクスルとサスペンションはAMGが専用に開発。電動パワーステアリングやトランスミッション、ESPにも専用のチューニングが施されている。
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ゴルフGTIとガチンコ勝負

AMGといえども、電子制御サスペンションを用いない限り、そのクルマがもつパフォーマンスの上のほうに合わせたセッティングにするしかないのだ。エンジンをやったらシャシーもやるべきことをやる、メルセデス・ベンツらしいセッティングといえるかもしれない。半面、舗装のよい道路をハイペースでいくのは気持ちいいが、ダラリと運転するには適さない。これはきっと……と思って「高速道路で速度を上げれば上げるほどに路面に吸い付くように安定する」と書く気満々で高速道路へ入ってみたが、速度域を問わず、跳ねる系の性格は変わらなかった。

パワフルなエンジンとハードな足まわりを備えているが、A250 シュポルトもA180同様に便利な5ドアハッチバックだ。エクステリア、インテリアともに質感は“FRのメルセデス”同等の品質が与えられているし、キュッと絞りこまれたお尻にもかかわらず、リアに大人ふたりは十分乗れる。ラゲッジスペースもああ見えて341リッターと、ライバルに引けをとらない。メルセデスには、リアの乗員、荷室スペースをもっと重視したい向きにはBクラスもあるという強みもある。

なにしろA/Bクラスは北米で販売しないので、日本はこのクルマにとって大事な市場だ。だからそれほど遅れることなく日本へやってきたし、A/Bの両方でライバルと戦うと考えればモデルラインナップも充実している。「A45 AMG 4MATIC」という“モンスターA”まで本国と同じタイミングで発表した。本当にとがったモデルを欲するならそちらを選ぶ選択肢もある。

A250 シュポルトは、これからやってくる「フォルクスワーゲン・ゴルフGTI」とガチンコの勝負を繰り広げることになるだろう。パワー、スペックはほぼ同じ。車重はGTIのほうが少し軽そうだ。価格もGTIのほうが少し安いに違いない。ゴルフGTIの出来栄えは乗ってみないとなんとも言えないが、ベースのゴルフの出来やこれまでの実績を考慮すると、まず速くていいクルマのはずだ。それに対して、A250 シュポルトは同じように速く走れるうえに、より高級で、より大人っぽいところを狙ってつくったなと感じさせる。ここがツボだという人は少なくないはずだ。

(文=塩見 智/写真=郡大二郎)

「A250 シュポルト」は0-100km/h加速6.6秒、最高速度240km/hの動力性能を実現。燃費は6.4リッター/100km(NEDC複合モード)と公表されている。(いずれも欧州仕様の数値)
「A250 シュポルト」は0-100km/h加速6.6秒、最高速度240km/hの動力性能を実現。燃費は6.4リッター/100km(NEDC複合モード)と公表されている。(いずれも欧州仕様の数値)
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前席にはメモリー機能付きパワーシートを標準装備。オプションでヒーター内蔵の本革シートも用意される。
前席にはメモリー機能付きパワーシートを標準装備。オプションでヒーター内蔵の本革シートも用意される。
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リアシートは2:1の分割可倒式で、中央にはアームレストスルーも備わる。(写真をクリックすると、シートが倒れる様子が見られます)
リアシートは2:1の分割可倒式で、中央にはアームレストスルーも備わる。(写真をクリックすると、シートが倒れる様子が見られます)
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裏磐梯のワインディングロードを行く「A250 シュポルト」。
裏磐梯のワインディングロードを行く「A250 シュポルト」。
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テスト車のデータ

メルセデス・ベンツA250 シュポルト

ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4355×1780×1420mm
ホイールベース:2700mm
車重:1450kg
駆動方式:FF
エンジン:2リッター直4 DOHC 16バルブターボ
トランスミッション:7段AT
最高出力:210ps(155kW)/5500rpm
最大トルク:35.7kgm(350Nm)/1200-4000rpm
タイヤ:(前)235/40ZR18(後)235/40ZR18(コンチネンタル・コンチスポーツコンタクト5P)
燃費:6.4リッター/100km(約15.6km/リッター、NEDC複合モード)
価格:420万円/テスト車=437万円
オプション装備:セーフティーパッケージ(ブラインドスポットアシスト+ディストロニック・プラス+プレセーフ)(17万円)

テスト車の年式:2013年型
テスト車の走行距離:4996km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(1)/高速道路(6)/山岳路(3)
テスト距離:925.8km
使用燃料:81.6リッター
参考燃費:11.3km/リッター(満タン法)/10.8km/リッター(車載燃費計計測値)

 

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