ルノー・ルーテシア インテンス(FF/6AT)
スタイル自慢のフレンチハッチ 2013.09.19 試乗記 実用ハッチバックとは思えない大胆なデザインを身にまとった新型「ルーテシア」。その走りと実用性を確かめた。日本でもブレークしそう
いままで「ルーテシア」が日本市場でパッとしなかった最大の理由は、ズバリ、カッコだと思う。「ルノースポール」は高性能モデルの力技で一部愛好家にウケたかもしれないが、フツーのルーテシアはデザインがわかりにくかった。旧型がどんなカタチだったか、思い出せますか? 中身は大したことなかったのに、インパクトのあるカッコで売れた「プジョー206」の例を思い起こすと、残念なフレンチコンパクトであった。
しかし、4代目の新型はついに日本でもブレークしそうだ。カッコイイ! リアの隠しドアハンドルや、バックスタイルそのものには「アルファ147」の既視感を覚えるが、サイドパネルの下方を女性のウエストのように絞ったところなどは、実用ハッチバックとは思えない大胆さだ。全長4095mm、全幅1750mmという、Bセグメントとしては少し大き目のサイズをもらって、新しいデザイナーが自由に腕をふるった。新型「カングー」には強引に映る新世代ルノーのフロントマスクも、このクルマにはあつらえたように似合う。
1エンジン3グレードのシリーズで、試乗したのは最上級の「インテンス」(238万円)である。たっぷりしたシートに腰を下ろすと、ピラー類が細くて、前方視界がいい。お買いものグルマとしては高ポイントだ。
計器盤のデザインはユニークというか、やや奇をてらいすぎの感あり。肝心の情報が読み取りにくい。車載コンピューターによる平均燃費の表示は、日本人にはなじみの薄い「○○リッター/100km」方式。「○○km/リッター」を求めるためには計算しないといけない。より多くの人に乗ってもらうためにも、こういうところはどんどん日本仕様化を進めてもらいたい。
真夏はツラいエコモード
新型ルーテシアのハイライトは、1.6リッターからダウンサイジングした新しい直噴1.2リッター4気筒ターボと、待望のデュアルクラッチ式6段自動MTである。
エンジンは、「フォルクスワーゲン・ゴルフ」の1.2リッターターボを15ps上回る120ps。ルーテシアよりひとクラス上で、ボディーもひとまわり大きいのに、30kgしか重くないゴルフの軽量設計に図らずも驚かされるが、ルーテシアも走りは軽快だ。
ただし、ダッシュボードのエコボタンを押すと、相当な足かせがはまる。床まで踏み込まないとキックダウンしなくなるし、走行中のエアコンの効きも落ちるので、猛暑日の試乗当日、エコボタンは1回押して、やめた。11km/リッター台前半だった今回の燃費は、だからエコモードを使わずに記録したものである。
“EDC”と呼ばれるデュアルクラッチ変速機はゲトラグ製。旧型ルーテシアに使われていたのは古い4段ATだったから、変速段数は一気にアップデートした。このへんはメーカーの味つけの問題もあろうが、デュアルクラッチといってもフォルクスワーゲンのDSGのようなダイレクト感やキレのよさはなく、ふつうのATっぽい。スタッフのひとりは変速に不器用さを覚えることがあったと指摘したが、筆者は特に感じなかった。MTモードはあるがパドルシフトはなく、積極的にシフトしたいときはプラスチッキーなタッチのフロアセレクターを前後にクリックする。
うれしい“フツー”のコンパクト
車重は1210kg。軽快なエンジンの印象に呼応して、乗り心地も軽い。ただ、わりとカサカサした軽さで、カングーや「メガーヌ」のようなコクはない。路面に吸いつくような“猫足”でもない。荒れた舗装路ではけっこうコツコツした突き上げが来る。タイヤは205/45R17のミシュラン・プライマシー3。試乗経験はないが、中位グレード「ゼン」以下の16インチモデルのほうが乗り心地はよさそうに思えた。
5ドアでもこれだけデザインで攻めたクルマだから、リアシートがそんなに広くないのは仕方ない。Jの字型に跳ね上がったリアドアのウエストラインを見れば、“前優先”のクルマであることは明らかだ。それはよしとしても、荷物を積む性能に関しては改善してもらいたい点がある。
ゴルフのような優等生も後席のダブルフォールディング機構をやめてしまい、最近の欧州ハッチの多くは、荷室を広げるときに背もたれを前に倒してハイおしまい式だ。ルーテシアもそうなのだが、特にこのクルマはフロアのリブと、倒した背もたれの合わせ技で20cmくらいの大きな段差ができてしまう。ツール・ド・フランスの国の実用ハッチなのに、自転車を寝かして積むようなとき不便である。それとテールゲートは、閉める時に重すぎる。しかも取っ手の設計が悪く、閉めてゆくと手首をひねりそうになる。本来、フランスのクルマというのは、こうした使い勝手に知恵や工夫を感じさせたのに。便利はカングーに任せた、じゃ困る。
というわけで、ツッコミどころも少なくなかったが、新エンジンと新型2ペダル変速機をもつスタイル自慢のクルマがフツーのフレンチコンパクトさんチームに加わったのはうれしい。「フォルクスワーゲン・ポロ」や「アウディA1」を選ぶ際の、「一応」じゃない選択肢である。クルマ好きに訴えるコクのほうは、来る「ルーテシア ルノースポール」に期待しましょうか。
(文=下野康史<かばたやすし>/写真=郡大二郎)
テスト車のデータ
ルノー・ルーテシア インテンス
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4095×1750×1445mm
ホイールベース:2600mm
車重:1210kg
駆動方式:FF
エンジン:1.2リッター直4 DOHC 16バルブターボ
トランスミッション:6段AT
最高出力:120ps(88kW)/4900rpm
最大トルク:19.4kgm(190Nm)/2000rpm
タイヤ:(前)205/45R17 88V/(後)205/45R17 88V(ミシュラン・プライマシー3)
燃費:--
価格:238万円/テスト車=238万円
オプション装備:なし
テスト車の年式:2013年型
テスト車の走行距離:1546km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(2)/高速道路(5)/山岳路(3)
テスト距離:306.1km
使用燃料:27.1リッター
参考燃費:11.2km/リッター(満タン法)/8.9リッター/100km(11.2km/リッター)(車載燃費計計測値)

下野 康史
自動車ライター。「クルマが自動運転になったらいいなあ」なんて思ったことは一度もないのに、なんでこうなるの!? と思っている自動車ライター。近著に『峠狩り』(八重洲出版)、『ポルシェよりフェラーリよりロードバイクが好き』(講談社文庫)。
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