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【スペック】全長×全幅×全高=4535×1820×1685mm/ホイールベース=2620mm/車重=1540kg/駆動方式=4WD/2.4リッター直4DOHC16バルブ(190ps/7000rpm、22.6kgm/4400rpm)/価格=275万円(テスト車=352万円)

ホンダCR-V 24G(4WD/5AT)【試乗記】

“パンとバター”なSUV 2012.03.05 試乗記 青木 禎之 ホンダCR-V 24G(4WD/5AT)
……352万円

燃費、快適性、機能性、そして走破性の改善と、全方位の進化がうたわれる新型「CR-V」。その日常性能を試すために、上級の「24G」グレードで箱根を目指した。

わかりやすい“高級感”

待ち合わせ場所の駐車場に行くと、新しい「ホンダCR-V」が止まっていた。斜め後ろから近づくと、丸みを帯びたボディーがなんだかアメリカン。実際の寸法は、先代よりわずかに短く、低く(いずれも−30mm)なっているのだが、車内容量をできるだけ大きく取ろうとキャビンを中から膨らませたかの印象だ。

少々オシリが重たいフォルムだが、天地薄めで後端が尖(とが)った、凝ったデザインのウィンドウグラフィックで、見た目の鈍重感を緩和している。新車発表会に参加した『webCG』スタッフによると、「主要な市場はアメリカと中国」と堂々と宣言(!?)していたらしい。フロントにまわってみると、なるほど、先代のノホホンとした風情は一掃され、つり目気味のヘッドランプとハッキリしたグリルがわかりやすい“高級感”を演出していた。

「ホンダ買うボーイ」の脱力コピーでクルマ好きをズッコケさせた、初代CR-Vがデビューしたのは1995年。北米では、値段も大きさも手頃でちょっとオシャレな、いわゆるセクレタリーカーに類したクルマとして、それまでのクーペに代わって人気を集めたという。欧州では、乗用車ベースの乗りやすい“アーバン四駆”路線が受け、「ヴィターラ」(初代「スズキ・エスクード」)が火をつけたコンパクトSUV市場で存在感を示した。

2代目以降は、国内での伸び悩みと反比例するかのように海外で評価が高まり、以来、その傾向は加速するばかり。先代は車台を北米ホンダ(アキュラ)のそれと共通化し、身も心もアメリカンに。そして2011年12月2日、今回の4代目が発売された。

新しいCR-Vのモデルラインナップは、2.4リッター直4(5AT)「24G」275万円と、2リッター直4(CVT)「20G」248万円の2種類。2リッターモデルの復活は、もちろん不振の国内マーケットを刺激するためだが、永遠のライバル「トヨタRAV4」が2.4リッターで202万円からだから、なかなか厳しい戦いが待っていそうだ。駆動方式は、24Gが4WDのみ、20GはFFだけである。世界約160カ国で年間50万台以上を売り上げるというヒットモデルにして、つつましやかな国内スタートとなった。

運転席はSUVならではの、見晴らしのよいもの。ボディー全長は先代型より30mm短い。しかし室内長は225mmも拡大されている。
運転席はSUVならではの、見晴らしのよいもの。ボディー全長は先代型より30mm短い。しかし室内長は225mmも拡大されている。 拡大
革シートはオプション。選択すると、自動的にサイド&カーテンエアバッグ、サンルーフなどもセットとなる。
革シートはオプション。選択すると、自動的にサイド&カーテンエアバッグ、サンルーフなどもセットとなる。 拡大
エクステリアデザインのテーマは「大胆かつ先進的」。SUVとしての力強さを強調しつつ、スマートで先進的な乗用車のイメージを持たせたという。
エクステリアデザインのテーマは「大胆かつ先進的」。SUVとしての力強さを強調しつつ、スマートで先進的な乗用車のイメージを持たせたという。 拡大
ホンダ CR-V の中古車

より広く、使いやすく

この日の試乗車は「24G」。ドアを開けると、取材スタッフ3人と撮影機材が載っていた。大人4人を乗せてのテストドライブとなるが、「ミニバンのような広い空間を備えていること」を重視した新型だけに、むしろありがたい!? 立派なボディーからは意外に思えるが、2620mmのホイールベースは初代から変わらない(トレッドは広がっている)。先代から、遠目にはどこか上屋が膨らんで見えるのはそのせいだろう。とはいえ、4代目はボディーを拡大せずに、室内幅(+75mm)室内長(+225mm)とも増やし、かつ荷室容量をアップ(+65リッター)したのだから大したものである。

SUVやピックアップトラックが路上に溢(あふ)れるアメリカでは、「見晴らしがいいので運転しやすい」と、(相対的に)小柄な女性がSUVを好む傾向があるという。CR-Vのヒップポイントも高め。新型はステアリングホイールのチルト(上下)、テレスコピック(前後)、運転席ハイトアジャスターの調整幅を先代より増加して、ドライバーの体形を選ばない配慮がなされた。また、サイドシルの位置を下げて、乗り降りの際に足先がひっかからないよう改善されたのも、気づきにくいが大切なポイントだ。

インストゥルメントパネルは伸びやかに横に広がる形態で、旧型よりシンプルかつ洗練された。地図などを表示するセンターディスプレイの上にサブディスプレイが設けられ、液晶パネルが2階建てになっているのがいかにも21世紀のSUVらしい。……といっても、小さなサブディスプレイには、「オーディオソース」「燃費情報」「時計」といった、あまり切実な必要性を感じないインフォメーションが表示されるだけ。コンテンツ不足を補うためか、写真表示という機能を示す意図か、いずこかで撮影したCR-Vの姿が壁紙状に切り替わるモードも用意されていて、乗員の微苦笑を誘っていた。

先代型より全高を30mm低くし、前面投影面積を減少。さらに、ボディー下面への空力パーツの適用を拡大するなどして、空気抵抗(CdA値)を約8%低減させている。
先代型より全高を30mm低くし、前面投影面積を減少。さらに、ボディー下面への空力パーツの適用を拡大するなどして、空気抵抗(CdA値)を約8%低減させている。 拡大
「瞬間認知・直感操作」という考えのもとに、シンプルにデザインされたインストゥルメントパネル。中央上部に、より詳細な情報を表示する“センターディスプレイ”(液晶パネル)が設置された。
「瞬間認知・直感操作」という考えのもとに、シンプルにデザインされたインストゥルメントパネル。中央上部に、より詳細な情報を表示する“センターディスプレイ”(液晶パネル)が設置された。 拡大
トランク容量は、従来より65リッター多い589リッター。後席をたためば1146リッターまで拡大することができる。
トランク容量は、従来より65リッター多い589リッター。後席をたためば1146リッターまで拡大することができる。 拡大

車内はミニバンのよう

24Gのフロントに横置きされる4気筒エンジンは、吸排気のバルブタイミングを変化させるi-VTECユニット。最高出力190ps/7000rpm、最大トルク22.6kgm/4400rpmを発生する。圧縮比を高めて従来比20psアップを実現したが、むしろ効率向上とフリクションの低減で、11.6km/リッター(JC08モード値。10・15モードでは12.2km/リッター)のカタログ燃費を得たことのほうが重要だ。

最近のホンダ車ではすっかりおなじみとなったグリーンボタンことECONボタンも備え、省エネ走行をサポートする。エコドライブ派には、4WDにこだわらなければ、2リッターモデルを選ぶという手もある。こちらは14.4km/リッター(15.4km/リッター)である。24G、20Gとも、エコカー減税対象車だ。

24Gオーナーの特権、FFをベースにしたホンダ独自の4WDシステムも刷新された。必要に応じて後輪へトルクを送る作動原理は踏襲しつつ、前後輪の差動検知、後輪への駆動力配分を電子制御化。機構面では、2つあった油圧ポンプが、1つの電気モーターで稼働されるようになった。名称も、デュアルポンプ式改め「REAL TIME AWD」に。

REAL TIME AWDは、雪道はじめ、発進加速時や登坂時に後輪への駆動力を案配して安定した走行を補助する一方、クルージング時には後輪へのトルク分配を完全にカットして燃費向上を図る。コーナリング中には、各輪のブレーキを個別にコントロールするVSAと協力して走行バランスを保つこともある。4WDというと「なかなか恩恵を享受する機会に恵まれない」と思われがちだが、新型CR-Vオーナーは「知らないうちに助けられている」ことが多くなるに違いない。

足まわりは、初代以来の(前)マクファーソンストラット、(後)ダブルウィッシュボーンをブラッシュアップ。特に後ろ足はダンパーの容量をアップして、減衰力に余裕を持たせている。

余裕ある室内。十二分のパワー、穏やかな乗り心地とハンドリング。大人4人プラス撮影機材を満載したCR-Vが高速道路に乗ると、運転者の周囲からは寝息が聞こえるようになった。ドライバーはミニバンオーナーの気分である。初代CR-Vは、一昔前のホンダ車によく使われた「バタ臭い」なんていう形容詞が似合う小じゃれたところがあったが、代を重ねるごとにバターの量が増えてゆき、現行モデルではすっかり実用的なbread-and-butter carになっていた。

(文=青木禎之/写真=郡大二郎)

スタビリティコントロールの「VSA」と、ステアリングの操舵(そうだ)力アシスト制御を行う「モーションアダプティブEPS」、さらに24Gでは「REAL TIME AWD」も協調制御させて、安定性の高い走りを確保する。
スタビリティコントロールの「VSA」と、ステアリングの操舵(そうだ)力アシスト制御を行う「モーションアダプティブEPS」、さらに24Gでは「REAL TIME AWD」も協調制御させて、安定性の高い走りを確保する。 拡大
2.4リッター直4 i-VTECエンジンは190psと22.6kgmを発生。約281kmにおよぶ今回の試乗では、燃費の総平均は8.0km/リッター(満タン法)となった。
2.4リッター直4 i-VTECエンジンは190psと22.6kgmを発生。約281kmにおよぶ今回の試乗では、燃費の総平均は8.0km/リッター(満タン法)となった。 拡大
新型では、リアサスペンションのダンパー容量が先代比で10%拡大されている。これにより、しなやかな乗り心地が実現できたという。なおテスト車には、ブリヂストン・デューラーH/Pスポーツ・タイヤが装着されていた。
新型では、リアサスペンションのダンパー容量が先代比で10%拡大されている。これにより、しなやかな乗り心地が実現できたという。なおテスト車には、ブリヂストン・デューラーH/Pスポーツ・タイヤが装着されていた。 拡大
【テスト車のオプション装備】Hondaインターナビ+リンクアップフリー+センターディスプレイ+ETC車載器=35万円/前席用i-サイド&サイドカーテンエアバッグシステム+本革シート+電動ガラスサンルーフ=42万円
【テスト車のオプション装備】Hondaインターナビ+リンクアップフリー+センターディスプレイ+ETC車載器=35万円/前席用i-サイド&サイドカーテンエアバッグシステム+本革シート+電動ガラスサンルーフ=42万円 拡大
青木 禎之

青木 禎之

15年ほど勤めた出版社でリストラに遭い、2010年から強制的にフリーランスに。自ら企画し編集もこなすフォトグラファーとして、女性誌『GOLD』、モノ雑誌『Best Gear』、カメラ誌『デジキャパ!』などに寄稿していましたが、いずれも休刊。諸行無常の響きあり。主に「女性とクルマ」をテーマにした写真を手がけています。『webCG』ではライターとして、山野哲也さんの記事の取りまとめをさせていただいております。感謝。

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