第64回:カワイイ系熟女の2CVカーチェイスに萌えろ!
『REDリターンズ』
2013.11.29
読んでますカー、観てますカー
チェロキーが大爆発、即死か!?
前回の『ミッドナイト・ガイズ』に続き、またしてもジジイ映画である。今度はジジイだけじゃなくてババア……いや、魅力的なオバサマも出てくるからさらに強力だ。2010年の『RED/レッド』の続編である。前回最高齢だったモーガン・フリーマンが射殺されてしまったが、代わりにアンソニー・ホプキンスが入ってきたから、平均年齢はあまり下がっていないようだ。
REDとは「Retired Extremely Dangerous」(引退した超危険人物)の意味で、ブルース・ウィリスの演じるフランクは元CIAの敏腕エージェントだ。ゆったり年金生活を楽しんでいたのに、またも世界の危機に立ち向かうハメになる。シュワちゃんとけんかして『エクスペンダブルズ3』には出られないから、こっちでガンバるしかない。
恋人のサラ(メアリー=ルイーズ・パーカー)とデートを楽しんでいると、前回生き残ったマーヴィン(ジョン・マルコヴィッチ)が現れてしつこく新たな任務に誘う。修羅場はコリゴリのフランクはキッパリ拒絶すると、諦めて帰ろうとしたマーヴィンの乗った「ジープ・チェロキー」が爆発して彼は即死。葬儀を執り行っていると、今度はフランクがFBIに襲撃される。危機を救ったのは、死んだはずのマーヴィン。やはり、今度も世界を救いにいかなければならないようだ。
2CVでまさかの階段落ち
フランクとマーヴィンは、世界中の諜報(ちょうほう)機関から追われている。冷戦時代にベイリー博士(ホプキンス)が作った大量破壊兵器を持っていると疑われているのだ。冒険大好きのサラも加え、3人はパリに渡る。待っていたのはロシアの美女カーチャ(キャサリン・ゼタ=ジョーンズ)だ。フランクを見つけると、いきなり激しいディープキス攻撃を仕掛ける。スパイとして敵同士だったのに、元カノでもあるらしい。キャサリン姐さんも44歳になったが、セクシービームは健在だ。ロシア人というよりは、ラテン系の匂いがする。
面白くないのは、現恋人のサラだ。元はただの年金係だが、フランクにいい所を見せようと無駄に張り切る。メアリーはキャサリンよりちょっと上の49歳だが、キャラ的にはカワイイ系。乙女のようなキャピ感あふれるしぐさには敬意を表さざるをえない。フランクはセクシー姉さんとカワイイ系熟女の板挟みという、おいしい役である
いがみ合う女たちだが、敵を追うために協力することになる。「ロータス・エキシージ」に乗った相手を、カーチャは「ポルシェ911」で追いかける。サラが乗っているのは、「シトロエン2CV」だ。スピードでは勝負にならないが、狭い路地の多いパリでは、コンパクトなボディーが武器になった。2CVは階段を駆け下りて先回りし、敵を出し抜くのだ。キャーキャー叫びながら楽しそうに運転する彼女の萌(も)え勝ちである。
68歳、まだまだ現役の女
もう一人、魅力的な女性が登場する。元MI6のヴィクトリアだ。前回に続いて、演じるのはヘレン・ミレンだ。御年68歳だが、現役感丸出しだ。さすがに最強のMILF(意味はちょっとここには書けない……)と言われるだけのことはある。2006年に『クィーン』でエリザベス女王を演じた彼女だが、その前の年には『サイレンサー』でキューバ・グッディングJr.と濃厚なベッドシーンを披露していたのだ。若作りがもてはやされる“美魔女”ブームなど、底の浅いものかもしれない。年をとった姿をさらし、それでもなお色気を失っていない彼女たちを見ていると、そう思ってしまう。
男たちだって、負けてはいない。ブルース・ウィリスはまだ58歳だから、ハナタレ小僧みたいなものだ。彼もマルコヴィッチもヘアスタイルのせいでジジイに見えてしまうが、まだ50代である。
ジジイと熟女の中に、ひとりだけ正真正銘のイケメンが登場する。すご腕の殺し屋ハン役のイ・ビョンホンだ。彼も43歳だからもう若手ではないが、最近は肉体美を備えた正統派ハンサムとして、ハリウッドで不動の地位を築いたアクション俳優なのだ。ブルース・ウィリスとは、『G.I.ジョー』シリーズでも共演を果たしている。
完全無欠のスターのはずだが、ジジイに囲まれるとどうも分が悪い。カッコいいというより、カッコいいふりをしている人に見えてしまう。若い頃にはむちゃをしたものの、今ではすっかり酸いも甘いもかみ分ける分別を身につけた……そんな老人たちと比べられるのだ。どうしたって、薄っぺらな若造ということになる。韓国人なのに折り鶴を背に浴衣を着せられるという妙な演出をされて、ちょっと気の毒ではあった。
年をとっても、嘆くことなかれ。体の節々は痛むけれど、人の名前はすぐに忘れてしまうけれど、心配ない。もう一花咲かせてみろと、この映画は言っている。
(文=鈴木真人)

鈴木 真人
名古屋出身。女性誌編集者、自動車雑誌『NAVI』の編集長を経て、現在はフリーライターとして活躍中。初めて買ったクルマが「アルファ・ロメオ1600ジュニア」で、以後「ホンダS600」、「ダフ44」などを乗り継ぎ、新車購入経験はなし。好きな小説家は、ドストエフスキー、埴谷雄高。好きな映画監督は、タルコフスキー、小津安二郎。