ホンダN BOX G Lパッケージ/N BOXカスタム G Lパッケージ【試乗記】
軽を超えた軽 2012.01.18 試乗記 ホンダN BOX G Lパッケージ(FF/CVT)/N BOXカスタム G Lパッケージ(FF/CVT)……143万9750円/164万9750円
子育てママをターゲットに、これまでにない室内空間とシートアレンジでライバル車に挑むホンダの新型軽「N BOX」。現役ママのスーザン史子がその使い勝手と走りを試した。
ママたちの救世主!?
「スゴイ!! ベビーカーがそのまま入っちゃうんだ!」。
国産モデルのみならず、大きめの輸入3輪ベビーカーまですっぽり後席に入ってしまう光景を見たら、即ハンコ押しちゃうってママ、多いんじゃない? とにかく子供とのお出掛けは荷物が多い。オムツからマグマグ(ストローのついたカップ)、着替えなんかをよくベビーカーのポケットに突っ込んで出掛けるんだけど、いざクルマに乗り込もうとすると、それらをまた取り出す作業でひと苦労。雨が降ってる日なんて最悪。
「ホント、やってらんなーーい!!(叫)」。
そんなママたちのイライラ防止に一役買おうと名乗りを上げたのが、ホンダの新型軽自動車「N BOX」です。1歳4カ月の息子をベビーカーに乗せ、年明けから2週間たった1月14日、都内のホンダカーズのショールームを訪れてみると、開店から30分の間に6組の客で席がほぼ埋まるほどの盛況ぶり。販売店の方にお話を伺ってみると「この店舗だけですでに10台ほど受注しています。1月7日からの3連休で来店されたお客さまが多く、やはりN BOXを見に来られる方が多かったですね」とのこと。
たしかに、発売から約1カ月間で月販目標1万2000台の約2.3倍となる2万7000台を受注したというから好調な滑り出し。徒歩3分圏内に日産やトヨタのショールームが軒を連ねる場所なのに、ホンダの店舗に客が集中しているのはやはり新車効果かな?
![]() |
![]() |
ホンダ渾身の一台
N BOXは子育てファミリーにも便利なスーパーハイトワゴン軽。キャビンを最大限広くする一方で、メカニズムを最小限に抑えた革新プラットフォームで、軽自動車の概念を超えた「ミニ・ミニバン」を目指しています。
具体的には「フィット」にも採用された「センタータンクレイアウト」と、新開発のパワープラントを採用することで、ステップワゴンにも匹敵する室内の広さと、フリードを超える大開口スライドドアなど、軽自動車としては最大級の室内の広さと使い勝手の良さを実現。アイドリングストップ機構を採用し、クラストップレベルの低燃費も。
後席を前に倒せば、27インチの自転車が積み込めるスペースを確保するほか、バックドアの開口部地上高を480mmに下げることで、女性ひとりでも積み込むのを容易にするなど、特に地方の子育てファミリーに使い勝手のよい機能も持たせています。
ダイハツの「タント」やスズキの「パレット」など、ライバル車の得意技を取り入れながら、走りや燃費の良さにもこだわった、ホンダ渾身(こんしん)の一台。
背高モデルとはいえ、ウエストラインが高めで安定感のあるデザイン。キリッと引き締まった精悍(せいかん)なフロントデザインで、パパが運転してもキマりそう。
女性目線のうれしい装備が満載
このクルマを一言で表現するなら、「スーパー家政婦さん」。「フリード」にも勝る640mmの大開口の両側スライドドアを備え、タントより20mm高い1400mmの室内高、後席を後ろに跳ね上げれば、ベビーカーもスッポリ入る広々室内とくれば、子育て中のママは涙が出るほどうれしいパッケージングでしょう。
ワタシ自身、まだ歩けないうえに11kgもある息子を抱っこし、頭や足をぶつけないようにチャイルドシートに乗せ、ハーネスを留めて、その上ベビーカーを畳んで乗せる、なんて日々にウンザリしている一人。アラフォー&腰痛持ちにとっちゃ、もう苦痛ですよ。おまけに腕は腱炎(けんえん)で腕上がんないし。(泣)
運転席まわりは、特別室内が広いクルマであることを感じさせないのもいい。コンパクトなエンジンを従来の「ライフ」より70mm前に置き、操作ペダルも前に置くことで、適度にタイトなドライブポジションを実現。
また、「ピタ駐ミラー」という機能ミラーを装備し、徹底的に死角を減らす工夫があるのもうれしいポイント。左Aピラー内側のサイドビューサポートミラーと、広角ドアミラー、そして、後方視角支援ミラーの3つのミラーによって、運転席から見えづらい所まで確認でき、車庫入れや縦列駐車の際にも安心。
ウエストラインを50mm程度上方に伸ばすことで、バランスのとれたデザインに仕上げているほか、見えすぎちゃって困るといった“さらされ感”をなくしているのも、女性としてはありがたい限り。
後席が前にスライドすると、運転席から子供の世話もできて便利なんだけどな〜、とは思ってしまったけれど、これは設計上ムリなんだとか。えーー、ダメなの? それだけはちょっと残念です。
ファーストカーとしても十分使える
今回試乗できたのは、同じパワーユニットを持つ、「N BOX」と「N BOXカスタム」の、いずれも「G Lパッケージ」。後者は14インチアルミホイールやスタビライザーを装着する分、車重が20kg重くなっています。
まずはカスタム。発進してからすぐ「おや? コレはちょっと違うぞ」と感じたのはワタシだけではないはず。ボディー剛性の高さといい、スムーズな加速感といい、軽自動車のワンランク上をゆく走りの良さにハッとしました。660ccゆえ、エンジン音が耳障りなのはしかたがないけれど、想像以上に高速道路での走りもタフで、操縦安定性が高いことにビックリ。
次に試乗したノーマル車ではより軽快さが際立っています。「20kgの違いなんてわかるはずない」と高をくくっていたものの、それぞれの良さがはっきりとわかるレベルで感じられ、安定性重視のカスタム、軽快さ優先のノーマル、といったところ。頼りがいのある走りもまたN BOXの魅力です。
みなとみらい入口から大黒ふ頭PAを往復した約21kmの平均燃費はリッターあたり20.3km。低燃費走行が不得意なワタシの運転でこの実燃費はかなりいいでしょう!
アイドリングストップからのエンジンの始動音がもう少し抑えられたらとか、後席の乗り心地がもっとよかったら、といった今後への期待は残しつつも、かなり満足度の高い仕上がり。軽自動車だから走りはそこそこでいい、なんて諦めは必要なし。ファーストカーとしても十分使えるクルマです。
「各世代の女性たちの声を丁寧に吸い上げ、それを実現するために力を注ぎました」という開発陣の話通り、女性にも使いやすい装備が豊富で、よくできているなという印象。特に、子育てママをサポートするという点では、かなり頼りにできそうだし、維持費が安く、走りも燃費もいいとくれば合格点。
ホンダではN B0Xの投入にあわせ、全国のホンダカーズのうち180店舗でスモールカーを中心に販売する「Small Store」を展開、女性が入りやすい店舗づくりにも力を入れていく予定だとか。女性が気軽にクルマを選べる環境づくり、大賛成! 女性の意見がどんどん伝わりやすくなることで、N BOXをさらに上回るイイクルマがでてくるのを期待しています。
(文=スーザン史子/写真=荒川正幸)

スーザン史子
-
ホンダN-ONE e:L(FWD)【試乗記】 2025.10.17 「N-VAN e:」に続き登場したホンダのフル電動軽自動車「N-ONE e:」。ガソリン車の「N-ONE」をベースにしつつも電気自動車ならではのクリーンなイメージを強調した内外装や、ライバルをしのぐ295kmの一充電走行距離が特徴だ。その走りやいかに。
-
スバル・ソルテラET-HS プロトタイプ(4WD)/ソルテラET-SS プロトタイプ(FWD)【試乗記】 2025.10.15 スバルとトヨタの協業によって生まれた電気自動車「ソルテラ」と「bZ4X」が、デビューから3年を機に大幅改良。スバル版であるソルテラに試乗し、パワーにドライバビリティー、快適性……と、全方位的に進化したという走りを確かめた。
-
トヨタ・スープラRZ(FR/6MT)【試乗記】 2025.10.14 2019年の熱狂がつい先日のことのようだが、5代目「トヨタ・スープラ」が間もなく生産終了を迎える。寂しさはあるものの、最後の最後まできっちり改良の手を入れ、“完成形”に仕上げて送り出すのが今のトヨタらしいところだ。「RZ」の6段MTモデルを試す。
-
BMW R1300GS(6MT)/F900GS(6MT)【試乗記】 2025.10.13 BMWが擁するビッグオフローダー「R1300GS」と「F900GS」に、本領であるオフロードコースで試乗。豪快なジャンプを繰り返し、テールスライドで土ぼこりを巻き上げ、大型アドベンチャーバイクのパイオニアである、BMWの本気に感じ入った。
-
MINIジョンクーパーワークス(FF/7AT)【試乗記】 2025.10.11 新世代MINIにもトップパフォーマンスモデルの「ジョンクーパーワークス(JCW)」が続々と登場しているが、この3ドアモデルこそが王道中の王道。「THE JCW」である。箱根のワインディングロードに持ち込み、心地よい汗をかいてみた。
-
NEW
スズキ・エブリイJリミテッド(MR/CVT)【試乗記】
2025.10.18試乗記「スズキ・エブリイ」にアウトドアテイストをグッと高めた特別仕様車「Jリミテッド」が登場。ボディーカラーとデカールで“フツーの軽バン”ではないことは伝わると思うが、果たしてその内部はどうなっているのだろうか。400km余りをドライブした印象をお届けする。 -
ホンダN-ONE e:L(FWD)【試乗記】
2025.10.17試乗記「N-VAN e:」に続き登場したホンダのフル電動軽自動車「N-ONE e:」。ガソリン車の「N-ONE」をベースにしつつも電気自動車ならではのクリーンなイメージを強調した内外装や、ライバルをしのぐ295kmの一充電走行距離が特徴だ。その走りやいかに。 -
スバルのBEV戦略を大解剖! 4台の次世代モデルの全容と日本導入予定を解説する
2025.10.17デイリーコラム改良型「ソルテラ」に新型車「トレイルシーカー」と、ジャパンモビリティショーに2台の電気自動車(BEV)を出展すると発表したスバル。しかし、彼らの次世代BEVはこれだけではない。4台を数える将来のラインナップと、日本導入予定モデルの概要を解説する。 -
アウディQ5 TDIクワトロ150kWアドバンスト(4WD/7AT)【試乗記】
2025.10.16試乗記今やアウディの基幹車種の一台となっているミドルサイズSUV「Q5」が、新型にフルモデルチェンジ。新たな車台と新たなハイブリッドシステムを得た3代目は、過去のモデルからいかなる進化を遂げているのか? 4WDのディーゼルエンジン搭載車で確かめた。 -
第932回:参加者9000人! レトロ自転車イベントが教えてくれるもの
2025.10.16マッキナ あらモーダ!イタリア・シエナで9000人もの愛好家が集うレトロ自転車の走行会「Eroica(エロイカ)」が開催された。未舗装路も走るこの過酷なイベントが、人々を引きつけてやまない理由とは? 最新のモデルにはないレトロな自転車の魅力とは? 大矢アキオがリポートする。 -
ミシュランもオールシーズンタイヤに本腰 全天候型タイヤは次代のスタンダードになるか?
2025.10.16デイリーコラム季節や天候を問わず、多くの道を走れるオールシーズンタイヤ。かつての「雪道も走れる」から、いまや快適性や低燃費性能がセリングポイントになるほどに進化を遂げている。注目のニューフェイスとオールシーズンタイヤの最新トレンドをリポートする。