アウディA3スポーツバック1.8 TFSIクワトロ(4WD/6AT)
これが未来だ! 2014.01.07 試乗記 インターネット常時接続機能を備えたインフォテインメントシステムを搭載し、最新の安全装備を採用するなど、先進的な技術が数多く盛り込まれた、新型「A3」の実力を確かめた。SF映画の中のアウディ
2014年1月公開の映画『エンダーのゲーム』には、魅力的なニューモデルが登場する。「アウディ・フリートシャトル クワトロ」だ。低く構えた姿はほとんど前後対称に見え、グラスエリアはフロントからサイドをまわってリアまで一体となっている。逆ガルウイングドアを備えたフォルムは、あまりにも未来的だ。それも当然で、これは2088年に発売されるはずのクルマなのである。
昨今、映画と自動車会社のコラボは珍しいことではない。2011年の映画『ミッション:インポッシブル/ゴースト・プロトコル』では、東京モーターショーでプロトタイプとして展示されていた「BMW i8」にイーサン・ハントが乗っていた。アウディは2004年の『アイ,ロボット』に2035年モデルの「RSQ」を提供している。タイヤが球型というぶっ飛んだモデルで、今回のフリートシャトルよりケレン味は強かった。
映画会社としては話題作りになるし、自動車メーカーにとってはブランドのイメージアップにつながる。アウディが未来を舞台にしたSF作品にコンセプトモデルを登場させているのは、もともとクールな未来的イメージのラインナップを持っているからだろう。「A3スポーツバック」は、まさにそれを体現した一台だ。映画の中でなくても、すでに未来が到来していた。
アウディコネクトで常時ネット接続
見た目で言えば、アウディは未来イメージにアドバンテージがある。シングルフレームグリルの採用以来、自動車デザインのトレンドを作ってきたわけで、年を追うごとにさらに洗練度を高めてきた。当然というか奇妙というか、2004年にデザインされた2035年のRSQよりも、A3のほうが未来的なフォルムに見える。RSQは今となっては少々古臭いのだ。
目新しいのは、「MMIナビゲーションシステム」に新たに加えられた「アウディコネクト」である。走行中でも常時インターネット接続されていて、いつでも情報を入手することができる。カーナビの画面が航空写真になっていて、明らかに何かあると気づかされる。グーグルマップとの連携で、ストリートビューの表示もできるのだ。もちろん、イヤなら設定を変えて従来の地図に戻すこともできる。
目的地の検索などは従来通りにコントローラーで行うこともできるが、タッチパッドを使って手書き入力することも可能だ。このシステムの認識能力が優秀で、ひどい文字でもちゃんと認識してくれる。検索結果は、ガソリンスタンドであれば距離や価格などの要素で並べ替えることができ、飛行場の検索では便名まで表示される。目的地の天気、最新のオンラインニュースなど、情報のメニューは豊富だ。
ネット接続はWi-Fiによって車内全体で利用可能になり、最大8つのデバイスが接続可能だ。乗車定員は5人だから、ひとりでiPadと3DSを同時に使ってもいい。3Gなので速度には期待できないが、安定した接続は得られるはずだ。やはりネットにつながっていることは、未来要素としては欠かせないところなのだろう。
自由度の高いモード選択
ドライブモードの選択はセンターコンソール上のボタンで行うが、MMIを使ってより細かい設定ができる。エフィシェンシー、コンフォート、ダイナミック、オートのモードがあり、インディビジュアルモードではエンジンやトランスミッションなどの設定をそれぞれ変えて組み合わせることもできる。こういった可変システムが物珍しかった頃には極端なモードがあったりもしたが、今はそういうコケオドシは流行(はや)らないようだ。たとえダイナミックを選んでも、運転がしづらくなるほどの事態は生じない。
高速道路では、「アダプティブクルーズコントロール」を使ってみた。以前「Q5」で試した時は幾分反応が遅いように感じたのだが、今回は前車の動きへの追従にストレスはなかった。もしかすると、少しプログラムが変わったのかもしれない。2035年のRSQでは自動運転がデフォルトになっていたが、完全な自動化を達成するにはこういう技術の積み重ねが大切になってくる。未来はここでも先取りされていた。
ただ、クルマの未来が秘められているのは、そういった派手な見せかけの物の中だけではない。たとえば、1.8リッターのターボエンジンだ。180psというハイパワーを絞り出しながらも燃費はJC08モードで14.8km/リッターという良好な数字を示し、低回転域からしっかりとトルクを供給する。6段Sトロニックトランスミッションはタイムラグをいささかも感じさせぬ素早い変速を行い、山道ではパドルを使ってスポーティーな運転を楽しめる。怠けたいときにはイージードライブだってこなしてくれる。静粛性はあくまでも高く、普段は意識しない4WDシステムが悪条件下でも安定した走りを約束する。
すっかり慣れてしまって当たり前のように思っているが、ほんの10年前にはクルマがここまで進化を遂げるとは想像しがたいことだった。運動性能、快適性、環境性能が高いレベルでそろっているのは、実は大変なことなのである。映画の中の未来カーも魅力的だが、先進的な技術で固められたクルマに自分で乗れる時代に生まれたことの幸福に、もっと感謝してもいい。
(文=鈴木真人/写真=高橋信宏)
テスト車のデータ
アウディA3スポーツバック1.8 TFSIクワトロ
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4325×1785×1450mm
ホイールベース:2635mm
車重:1460kg
駆動方式:4WD
エンジン:1.8リッター直4 DOHC 16バルブ ターボ
トランスミッション:6段AT
最大出力:180ps(132kW)/4500-6200rpm
最大トルク:28.6kgm(280Nm)/1350-4500rpm
タイヤ:(前)225/45R17 91Y(後)225/45R17 91Y(ダンロップSPORT MAXX RT)
燃費:14.8km/リッター(JC08モード)
価格:393万円/テスト車=452万円
オプション装備:コンビニエンスパッケージ<アウディ パーキングシステム(フロント/リア)+リアビューカメラ+アドバンストキーシステム>(21万円)/MMIナビゲーションシステム(30万円)/アダプティブクルーズコントロール(アウディ ブレーキガード機能付き)(8万円)
テスト車の年式:2013年型
テスト車の走行距離:3876km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(2)/高速道路(5)/山岳路(3)
テスト距離:225.0km
使用燃料:19.8リッター
参考燃費:11.4km/リッター(満タン法)/12.1km/リッター(車載燃費計計測値)

サトータケシ
ライター/エディター。2022年12月時点での愛車は2010年型の「シトロエンC6」。最近、ちょいちょいお金がかかるようになったのが悩みのタネ。いまほしいクルマは「スズキ・ジムニー」と「ルノー・トゥインゴS」。でも2台持ちする甲斐性はなし。残念……。
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