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【スペック】ML350 4マチック ブルーエフィシェンシー:全長×全幅×全高=4804×1926×1796mm/ホイールベース=2915mm/車重=2130kg/駆動方式=4WD/3.5リッターV6DOHC24バルブ(306hp/6500rpm、37.7kgm/3500-5250rpm)(欧州仕様車)

メルセデス・ベンツML350(4WD/7AT)【海外試乗記】

最良の道具 2011.12.27 試乗記 渡辺 敏史 メルセデス・ベンツML350 4マチック ブルーエフィシェンシー(4WD/7AT)/ML350 ブルーテック 4マチック(4WD/7AT)

フルモデルチェンジを受け3代目に進化したメルセデス・ベンツのSUVモデル「Mクラス」。運動性能が向上したという新型を、オーストリアの雪山で試した。
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改善された日常性

今日びのいわゆる「プレミアムSUV」の条件が、“乗用車系のプラットフォームをベースにした乗り心地や車内環境の快適性”にあるとすれば、初代「Mクラス」は悲運のクルマだったといえるだろう。
メルセデスにとって初のアメリカ工場生産モデルとなったそれは、地物のRVに居並ぶヘビーデューティーさを必携と考え、従来のフレームシャシー構造を採用。が、同時期に登場した「レクサスRX(トヨタ・ハリアー)」のバカ売れによってアメリカでSUVというジャンルが醸成されるに伴い、その手の背高モノは乗用車譲りのモノコックで十分というコンセンサスが整ってしまった。とあらば、Mクラスはウリの武骨さがガサツさと受け取られ、後発組にシェアを浸食されていったわけである。

2代目はその評判を覆すべく全てを刷新。今日的なソリューションのSUVとして登場し、この市場でのシェア回復の原動力となった。ちなみにMクラス、初代からの累計販売台数が120万台といえば、メルセデスの販売規模から推察するに、十分に主力車種の一角を占めているといえる。

そして3代目となる新型Mクラスの端正なスタイリングは、スタイリッシュなSUVを見慣れた目には淡泊という見方もできるだろうが、そうなった理由は乗り込めばわかる。
悪路走行前提のクルマにとって重要なのは、運転席にいて、路上の障害を一瞥(いちべつ)できる視認性や車両感覚の把握しやすさである。新しいMクラスはそれをおざなりにはしていない。さすがに「レンジローバー」や「ジープ・ラングラー」のようにはいかずとも、先代に対して若干だけ大きくなったその体格を苦にせず取り回せる形状や視界が練り込まれている。結果的にそれは、普段の使い勝手も約束してくれるというわけだ。


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【スペック】ML350 ブルーテック 4マチック:全長×全幅×全高=4804×1926×1796mm/ホイールベース=2915mm/車重=2175kg/駆動方式=4WD/3リッターV6DOHC24バルブ・コモンレールディーゼルターボ(258hp/3600rpm、63.2kgm/1600-2400rpm)(欧州仕様車)
【スペック】ML350 ブルーテック 4マチック:全長×全幅×全高=4804×1926×1796mm/ホイールベース=2915mm/車重=2175kg/駆動方式=4WD/3リッターV6DOHC24バルブ・コモンレールディーゼルターボ(258hp/3600rpm、63.2kgm/1600-2400rpm)(欧州仕様車) 拡大
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快適性が大幅に向上

新しいMクラスの日本仕様におけるエンジンバリエーションは3.5リッターV6直噴ガソリンと3リッターV6ブルーテックディーゼルの2本立てと決まっている。うち、ガソリンモデルは最新世代のピエゾインジェクターを用いたメルセデスいわくの第3世代直噴システムとなり、ECOスタートストップシステムの併用で欧州計測(NEDC)モードでは先代より25%の燃費低減を実現した。

2代目でESPを活用した駆動マネジメントを推し進めた4マチックドライブトレインは、新型Mクラスでさらに進化。オプションのオフロードパッケージを選ぶと、路面環境に応じてオンロードで3パターン、オフロードで2パターンの、最適な駆動環境を設定できるコマンドセレクターが装備される。また同時に設定されるエアマチックサスペンションのストロークも連携し、最もハード寄りな設定では最低地上高285mm、渡河(とか)深度600mmと、クロスカントリーモデルにも比するオフロードスペックを実現する。
また、通常モデルにおいてはセレクティブダンパーを装備し、日常走行の快適性と高速走行での安定性をワイドレンジでカバーするものとなった。

試乗ではそのセレクティブダンパー付きのコイルサスと、オフロードパッケージ付きのエアマチックサスとを乗り比べることもできた。両車に共通して驚いたのは、乗り心地の良さや静粛性の高さといった、快適性項目の大幅な進化だ。SUVという体格の特性上、ノイズ音源からの距離が稼げるという利点はあるが、一方で入念な振動・遮音処理や0.32という低いCd値など、ハード側からもその根拠はうかがえる。

そして室内に目をやれば気付くのは高められた内装の質感だ。フォールディングの関係で後席のシートバックが若干短めなのはやむなしとして、全体的にはそのライドコンフォート、同門の「Eクラス」にも比するところにきていると思っていいだろう。

黒子に徹する電子デバイス

試乗環境は氷雪路だったこともあり、悪路の走破性に関しては未知数ながら、そのトラクション性能は十分に感じることができた。が、それはいかにも「最新四駆でござい」とバリバリに電子制御の働く感覚ではない。基本的には50:50のフルタイム四駆が可能な限りのグリップを提供し、それでも姿勢が乱れそうになったところでスッと助け船を出してくれるというデバイスは、縁の下に徹している。いかに優れたエレクトロニクスであろうと、基本設計でグリップできないクルマはダメ。かつ、窮地ではドライバーに不安を抱かせない介入の速度とさじ加減が重要。メルセデスの4マチックはそういう見地に立った、技術をひけらかさないセットアップがなされていることがわかる。

それゆえに、車外に降りれば足を取られそうなほどの低ミュー路でも、その乗り味は自然で挙動にも唐突感がない。高重心のMクラスをよくもこう平穏に扱わせるものだと感心させられる。それは、オフロードパッケージを備えていないセレクティブダンパーのモデルでも同様なのだが、オフロードパッケージ装着モデルには車高調整やスタビライザーの動きをコントロールするアンチロール制御なども加わるため、より広いシチュエーションでこの安心感が味わえることになる。必携とまではいわないが、検討する価値は大いにありそうだ。

派手さと上質さを混同せず、最良の道具というメルセデスの本流を貫いたという印象の新型Mクラス。そうなるとますますディーゼルモデルの魅力が際立ってくるが、実際のドライバビリティーも十二分に期待に応えるものだったことを付け加えておきたい。日本への導入は2012年の上半期が予定されている。

(文=渡辺敏史/写真=メルセデス・ベンツ日本)

渡辺 敏史

渡辺 敏史

自動車評論家。中古車に新車、国産車に輸入車、チューニングカーから未来の乗り物まで、どんなボールも打ち返す縦横無尽の自動車ライター。二輪・四輪誌の編集に携わった後でフリーランスとして独立。海外の取材にも積極的で、今日も空港カレーに舌鼓を打ちつつ、世界中を飛び回る。

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