メルセデス・ベンツML350ブルーテック 4マチック(4WD/7AT)【試乗記】
経験のなせる業 2010.08.13 試乗記 メルセデス・ベンツML350ブルーテック 4マチック(4WD/7AT)……882万7750円
メルセデスの新しいディーゼルモデルが「Mクラス」にラインナップ。重量級ボディを持つ高級大型SUVの、走りと乗り心地を試す。
ディーゼル車のイメージ
ディーゼルエンジンを誤解している日本人はまだまだ多い。さすがに黒煙と騒音をまき散らしていると思う人は減ったようだが、一部の自動車メディアが「速くて静かで燃費がいい」とホメちぎった結果、環境性能ではガソリン車をはるかにしのぎ、ハイブリッドカーに匹敵すると信じるユーザーがいる。
しかしディーゼル先進国ヨーロッパの状況を見れば、間違いに気づくはずだ。現地の自動車がすべてディーゼルかというとそうではなく、ガソリン車も半分近く走っているし、メーカーはハイブリッドカーの開発に躍起になっている。
いまの日本はなんでも白黒つけようとする風潮にあるが、ディーゼルとガソリンでは特性が大きく異なっており、優劣をつける関係にはない。現に欧州のユーザーは特性の違いを理解し、目的や用途に合わせて選択している。
「メルセデス・ベンツML350 ブルーテック 4マチック」に乗って、そんな現状を思い出した。
パワートレインは同じメルセデスの「E350ブルーテック」と同じで、3リッターV6直噴ディーゼルターボエンジンと7段ATを搭載する。211ps/3400rpmの最高出力、55.1kgm/1600-2400rpmの最大トルクも共通だ。
ガソリン3.5リッターV6を積む「ML350」の同数値は、272ps/6000rpm、35.7kgm/2400-5000rpmだから、パワーは下回るものの、トルクでははるか上を行く。ただし車両重量は2290kg(テスト車はガラススライディングルーフ装着の為、2310kg)と、同じエンジンを積む「Eクラスステーションワゴン」より230kg、ガソリンの「ML350」より170kg重い。
おおらか、おっとり
最近のSUVとしてはフロアもシートも高めの運転席に乗り込む。ウインドスクリーンが強く傾いていて、アウトバーンの国の生まれであることを実感するものの、ウエストラインはドイツ車としては低いので、SUVらしい開放感が得られる。最近のメルセデスとしてはインパネがシンプルなのもいい。背もたれも座面も表皮がパシッと張ったシートはサイズが大きく、サポートはゆるめ。恰幅(かっぷく)のいい人向けだ。
後席は身長170cmの僕が座ると、ひざの前には20cmぐらいの空間が残る。座面はフロアから高く、背もたれを含めて傾きや凹凸がしっかり取ってあって、長距離でも快適に過ごせそうだ。
外観から想像するよりも荷室の床は低く、下にはSCR触媒コンバーターとともにブルーテックの肝となるアドブルー(尿素水溶液)のタンクが、Eクラスよりスマートに収まっていた。スペアタイヤがないのは「E350ブルーテック」と同じだが、MLではパンク修理キットも搭載しているので、タイヤはランフラットではなく、コンチネンタルのクロスコンタクトという通常タイプを履く。
ではその走りは? と思い運転席に戻ってスタートすると、おおらかな加速がさざ波のように押し寄せてきた。遅いわけではない。トルクに乗ってからの加速は強烈だ。そこまでの反応がおっとりしているのである。以前乗った「E350ブルーテック」ではそこまで顕著に感じなかったから、重さのせいともいえるが、吹け上がりや回転落ちが穏やかなディーゼル本来の特性が強調された走りといえる。でも慣れればこのリズムがむしろ気持ちよく思えてくる。
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穏やかな乗り心地
クルマに合わせておうような気持ちで運転に臨めば、1000rpmあたりから加速を受け付け、2000rpm以下ですべてをこなす力強さが、高回転型のガソリン車とは違った意味で心地よく思えるはず。しかもそうやって走れば、車載の燃費計はこの車格のSUVとしては望外の2けたをマークしてくれる。
ATの変速マナーがエンジンの特性に合っている点も好印象。ディーゼル経験の長いメルセデスならではだ。エンジン音はアイドリングではカラカラという響きが届くけれど、加速時はシューンという洗練されたサウンドに変わり、100km/hをたった1800rpmでこなす高速道路ではほぼ無音といえる状況だった。
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乗り心地は低速では当たりの硬さを感じさせるものの、揺れそのものは加速同様に穏やかで、路面の継ぎ目のいなし方も上手だ。それでいてコーナーでのロールは抑えられており、ハンドリングは予想以上に素直。背の高さだけでなく鼻の重さも感じない。
不満な点を挙げるとすれば、左ハンドルしか用意されないことだ。しかも10・15モード燃費を掲出していないので、Eクラスのブルーテックでは受けられるエコカー減税100%の恩恵にあずかれない。
僕はエコカー減税の算出方法に疑問を持つ人間なので、減税の有無でクルマの評価を変えはしないが、エコカーとは本来、世の中に数多く行き渡って初めて環境に貢献するものだ。そういう意味では早急に右ハンドルを出してほしいし、Cクラスなど安価な4気筒ディーゼル車の導入にも取り組んでほしい。
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(文=森口将之/写真=荒川正幸)

森口 将之
モータージャーナリスト&モビリティジャーナリスト。ヒストリックカーから自動運転車まで、さらにはモーターサイクルに自転車、公共交通、そして道路と、モビリティーにまつわる全般を分け隔てなく取材し、さまざまなメディアを通して発信する。グッドデザイン賞の審査委員を長年務めている関係もあり、デザインへの造詣も深い。プライベートではフランスおよびフランス車をこよなく愛しており、現在の所有車はルノーの「アヴァンタイム」と「トゥインゴ」。
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