第48回「BMW i3」(前編)
2014.05.09 水野和敏的視点「スペシャルチーム」が開発した?
私が言い続けてきた真のEVがやっと姿を現しました。所有や購入の仕方までを含めて、今までのクルマの概念を変える――BMW i3は、この新しい世界へのスタートを切ってくれたクルマです。
今回の試乗に先立ち、まずはプレス試乗会でi3に乗ったのですが、その時最初に感じたのは、「既存の組織とは違うスペシャルチームが開発したな」ということでした。つまり、私が「日産GT-R」の開発でやったのと同じことがi3でも行われたのではないかと感じたのです。
かつて私はGT-Rを開発するに当たり、本質に基づいた価値観をきちんと訴求するために、従来のクルマの開発組織から切り離された、独立した「GT-Rチーム」を作り、そのスペシャルチームが既存の概念を捨て、新しい基準や評価方法でクルマを作るという手法を用いました。それと同じにおいを、ドライバーズシートに座って走り始めた瞬間、「ん? これは!」と感じたのです。
オーナーの方には申し訳ないのですが、i3は「日産リーフ」や「三菱i-MiEV」といったEVとは次元がまったく違います。リーフやi-MiEVは、残念ながら今あるクルマの枠組みの中で、EVのパーツをはめ込んだだけ。極論すれば、ベース車からエンジンとガソリンタンクを外して、その代わりにモーターとバッテリーを載せたクルマです。通常のモデルラインナップに、EVというバリエーションを単に加えたにすぎず、「EVとは何なのか?」という本質的な問いには、まだ何も答えていないように思えるのです。
内燃機関を搭載するクルマは、内燃機関が生み出すすさまじい振動や700度前後の熱、あるいはとんでもない排気音から逃れることができません。そういったものの処理、つまりエンジンやトランスミッションを搭載するための空間確保に始まり、排気管とマフラーや遮熱処理、そしてとてつもない量の遮音材などがいらず、パワートレインを人から隔離する必要がなくなった時、「では、クルマはどう人やその生活と一体になれるか?」という問いかけに、真摯(しんし)に応えようとしたのか? i3と既存のEVの間には、その差があるということです。
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