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第134回:これが明日の「ホンダイズム」! ホンダの次世代車に一気乗り

2011.12.18 エディターから一言 森口 将之
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第134回:これが明日の「ホンダイズム」!ホンダの次世代車に一気乗り

東京モーターショー開催中の2011年12月5日、ホンダはツインリンクもてぎで次世代技術の体験会「ホンダミーティング」を行った。話題の軽自動車「N BOX」から電動SH-AWDシステム搭載車までがずらりそろったこのイベントで、筆者は明日の「ホンダイズム」を体感することができたのか?

「EARTH DREAMS TECHNOLOGY」とはホンダが掲げる次世代環境技術群のこと。その体験会がツインリンクもてぎで開催された。
「EARTH DREAMS TECHNOLOGY」とはホンダが掲げる次世代環境技術群のこと。その体験会がツインリンクもてぎで開催された。 拡大
ホンダはさまざまなカテゴリーで3年以内に燃費ナンバーワンになることを目指している。写真は新型1.8リッターエンジン搭載の欧州向け「シビック」。
ホンダはさまざまなカテゴリーで3年以内に燃費ナンバーワンになることを目指している。写真は新型1.8リッターエンジン搭載の欧州向け「シビック」。 拡大
新開発の2.4リッターガソリンエンジン。
新開発の2.4リッターガソリンエンジン。 拡大

はじまりはいつも軽!?

「ホンダミーティング」を別の言葉で説明すると、ホンダの研究開発部門である本田技術研究所が主催する、メディア向けの新技術体験会となるだろうか。同様のイベントは過去にも、社長年央会見で市場投入が発表された新技術を「見せる場」として行われたことがある。しかし、今回は東日本大震災の影響で年央会見が中止されたので、東京モーターショーでの伊東孝紳社長のプレスブリーフィングの内容を反映したものとなった。

つまり四輪部門のメインテーマとなったのは、モーターショーで発表された「EARTH DREAMS TECHNOLOGY(アース・ドリームス・テクノロジー)」と呼ばれる新開発のエンジンやトランスミッション、あるいはモーターによる電動化技術だった。さまざまなカテゴリーで3年以内に燃費ナンバーワンを目指し、全世界で販売する二輪、四輪、汎用(はんよう)製品のCO2排出量を、2020年に2000年比で30%低減するという目標の核になる次世代新技術群である。

新しいエンジンについては、2.4リッターガソリンと1.6リッターディーゼルターボを、どちらも新開発CVTとの組み合わせで、「アコード」のボディーで試した。それにもまして印象に残ったのは、EARTH DREAMS TECHNOLOGYの第1弾として11月30日に発表された軽乗用車「N BOX」だった。コストの制約が厳しい軽自動車にいち早く新技術を投入する姿勢は、ホンダの四輪車の第1号が、DOHCエンジン搭載のトラック「T360」だったことに通じると言えるかもしれない。

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創意工夫の「ピタ駐ミラー」

この日は数えきれないほどのクルマやバイクに乗るスケジュールだったので、個々の試乗時間は5分から10分ほどと短かった。その中で、N BOXについては「カスタム」仕様の自然吸気とターボの両エンジンをドライブし、とりわけ自然吸気版の実力の高さを確認することができた。

クラス最高の58psと6.6kgmを発生する自然吸気エンジンは確かにライバルより力強く、しかも新開発のCVTは走行状況に応じて変速比や回転数をきめ細かく変える。おかげで、1トン近いボディーを不満なく加速させていく。全高が1.7m以上の「スーパーハイトワゴン」で、自然吸気エンジンでも不満なしと思えた軽自動車は、このN BOXが初めてだ。アイドリングストップ機構の作動速度も問題なかった。

一方のターボエンジンは排気音をしっかり味付けしてあり、レスポンスが明らかに鋭くなるなどホンダらしい仕上がりだった。しかし、予想を上回る自然吸気エンジンの実力を体感したあとでは、むしろターボが脇役に思えてしまった。いずれにせよ「EARTH DREAMS TECHNOLOGY」と豪語するだけのことはあるパワートレインだった。

両側にスライドドアを持つボディーでは、ドアの上質な締まり音に驚かされた。室内空間はライバル同様、「こんなに広くなくてもいいのに」と思うほどだが、後発組としては競合車に劣ることは許されないのだろう。

装備面で好感を持ったのは、助手席側のAピラーの根元に備わった「ピカチュウ」ならぬ「ピタ駐ミラー」だ。車体の左側面の状況が手に取るように分かる。利用者の目線で便利な装備を用意するという「宗一郎的創意工夫」が継承されているような気がした。

「N BOX カスタム」
「N BOX カスタム」 拡大
「N BOX」シリーズの660cc直3自然吸気エンジンは、クラス最高の58psと6.6kgmを発生。ライバルより力強い走りを見せる。
「N BOX」シリーズの660cc直3自然吸気エンジンは、クラス最高の58psと6.6kgmを発生。ライバルより力強い走りを見せる。 拡大
64psと10.6kgmを発生する660cc直3ターボはシャープな反応を示す、ホンダらしい仕上がりだった。
64psと10.6kgmを発生する660cc直3ターボはシャープな反応を示す、ホンダらしい仕上がりだった。 拡大
車体左方の死角を減らす「ピタ駐ミラー」(助手席側のAピラーの根元に付く)はスグレモノだ。
車体左方の死角を減らす「ピタ駐ミラー」(助手席側のAピラーの根元に付く)はスグレモノだ。 拡大

強烈な加速の「フィットEV」

日本で販売されないホンダ車にも乗った。タイで生産されるアジア向けの「ブリオ」と北米向けの新型「シビック」、そして欧州向けの新型シビックだ。この中ではブリオに驚かされた。黄色がかったベージュのインテリアはアジア的だが、走れば欧州車に比べても遜色ないほどしっかりしていたのだ。価格次第では日本でも売れるのでは? と思ってしまった。

伊東社長となってからのホンダは、モーターを使った電気自動車(EV)やプラグインハイブリッド車(PHV)の開発も熱心に行っている。この日はその中から、国内外で実証実験に使われている「フィットEV」、「インスパイア」ベースのPHV、軽トラの「アクティEV」、そして現在「レジェンド」に搭載されているSH-AWD(スーパーハンドリング・オールホイールドライブ)の電動版に乗ることができた。

印象的だったのは、まずフィットEVである。走行モードは「ノーマル」「エコ」「スポーツ」の3種類に切り替えが可能なのだが、スポーツモードの加速は強烈と言えるほどで、「さすがホンダ!」と思わず笑みが漏れてしまった。インスパイアPHVとアクティEVは完成度の高さが光った。とりわけアクティは1回の走行距離が短めだから、EV化しやすい車種に思えた。

電動SH-AWDもホンダらしい。前輪は3.5リッターV6直噴エンジンと電動モーター、後輪は左右独立の2基のモーターで駆動するようになっており、コーナーでは後輪左右のモータートルクを変えて旋回力を強める仕組みだ。今回試したプロトタイプでは、アクセルのオン、オフによるトルク制御にタイムラグを感じたが、この欠点が解消できれば、フィットEV同様、楽しさを備えたモーター技術として評価されそうな気がした。

これ以外にも、新型「インテグラ」(といっても700ccのスクーター)に乗ったり、天然ガスから電気と熱を生み出すガスコージェネレーションシステムを活用した「スマートホーム」を見学したり、2年前に発表したパーソナルモビリティ「U3-X」の進化形「Uni-Cub」を試したりと、モビリティ全体や街づくりまで見据えたメニューを体験した。

自動車会社はクルマを造って売ればいいという時代ではなくなりつつある――そんな難しい時代であることを教えられた。ただ、ホンダがエンジンにこだわる姿勢をひさびさに見せてくれたことは、個人的にうれしかった。

(文=森口将之、写真=本田技研工業)

「ブリオ」
「ブリオ」 拡大
「アクティEV」
「アクティEV」 拡大
「フィットEV」
「フィットEV」 拡大
電動SH-AWD機構を備えた「インスパイア」。改良が進めば「楽しい技術」になりそうだ。
電動SH-AWD機構を備えた「インスパイア」。改良が進めば「楽しい技術」になりそうだ。 拡大
森口 将之

森口 将之

モータージャーナリスト&モビリティジャーナリスト。ヒストリックカーから自動運転車まで、さらにはモーターサイクルに自転車、公共交通、そして道路と、モビリティーにまつわる全般を分け隔てなく取材し、さまざまなメディアを通して発信する。グッドデザイン賞の審査委員を長年務めている関係もあり、デザインへの造詣も深い。プライベートではフランスおよびフランス車をこよなく愛しており、現在の所有車はルノーの「アヴァンタイム」と「トゥインゴ」。

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