ランボルギーニ・ガヤルドLP550-2 トリコローレ(MR/6AT)【試乗記】
ただ速いだけにあらず 2011.12.13 試乗記 ランボルギーニ・ガヤルドLP550-2 トリコローレ(MR/6AT)……2364万9360円
スーパースポーツ「ランボルギーニ・ガヤルド」に期間限定の後輪駆動モデルが登場。その走りを、ワインディングロードで試した。
建国を祝うランボルギーニ
「ランボルギーニ・ガヤルド」の「トリコローレ」というモデルは、1861年にイタリアが統一されてから150周年にあたる今年、それを記念して作られた限定車である。赤・白・緑の三色旗をストライプにしてあしらい、「ガヤルド」の他モデルと区別している。
バブル期には、こうしたスーパーカーが早々に日本に輸入され、自分自身、『CAR GRAPHIC』編集部に在籍していたころには、ならしや動力性能データ計測に忙しい日々を送った。中でもランボルギーニでは、「カウンタック」の限定車を計測前のならしから任され、なんだかんだと5000kmも走らせてもらった記憶がある。
思えばあの時、それとほぼ前後して別のカウンタックも納められていた。しかしそちらは販売店の社用車(?)かなにかの用途で1万kmを後にしており、ボソボソと不機嫌な音を出していた。それに引き換え、自分が担当したカウンタックは快調そのもの。使われる環境でそれ以降の性能が違ってくるかという見本でもあった。
翻っていまは、サーキット走行なども気軽に行える状況にあり、こうした高性能車が健康を維持できる環境は整えられている。
クルマの方はその後もどんどん高性能化しており、昔は300psでもすごいと思っていたのに、今では大排気量のセダンなどでも500psを超えるものはザラだ。操縦安定性獲得への対応も同様に進んでおり、公道走行のレベルでもその効果の片りんはうかがえる。四輪駆動化もまた、パワーを有効に路面に伝えるという意味で、効果的な手法だ。
やっぱり刺激が欲しいから
ランボルギーニも、「ムルシエラゴ」時代から四輪駆動方式を採ってきた。なのに「ガヤルド」には数年前から二輪駆動のモデルが加わった。その意味を考えてみよう。
いまではブレーキシステムによるコーナリングの安定化も図られ、不用意にスピンすることやアンダーステアでアウトにはらむことも少なくなった。横Gに対するパワーのコントロールについても、スロットルバタフライの電子制御などが巧妙になった。と同時に、“パワーでタイヤをいじめる楽しみ”が減り、刺激も足りなくなったから、「絶対的な限界レベルを少し下げて、オーナーの征服欲を満足させてあげよう……」ということかと思う。
ならばタイヤのグリップ能力を下げれば話は早いが、それでは“見てくれ”も悪くなるし、扱い方によっては危険を招く。
公道走行のレベルでクルマの限界を試すのに、なにも速度を上げる必要はない。雨などで路面のミューが下がっていれば十分だ。
コーナーの立ち上がりでちょっと大きめにスロットルを開けると、瞬時にして簡単にズリッと後輪は横に流れる。けれどもブレーキが自動的に作用して瞬間的に流れを止める。スタビライザーとバネの反発で今度は反対側にはね返される。そんな風に後輪が左右に揺さぶられる挙動が数回続くが、次第に減衰して直進状態に戻る。
ドライバーは、ステアリングを動かさずに中立付近のままにしていればよい。キャスター・アクションがしっかりしているから、クルマのほうで必要なだけのカウンターステアを自然に当ててくれるからだ。この辺りの挙動は、歴代ランボルギーニの大きな美点だ。フェラーリの方が、もっとシビアかもしれない。
慣れてしまえば、いいシフト
全長4.3m、幅1.9mのボディーサイズは決して小さくないし、車検証上で1.58トンの車重も軽いとは言い難い。けれども、550psの最高出力は、車体を軽快に操るに十分な武器といえる。同時にこのパワーが走行安定性に寄与することは、言うまでもない。
6段のセミオートマは、センターフロアにレバーを持たず、ボタンで前進後退を選ぶだけ。最初は不安もあるが、慣れてしまえばステアリングホイールの奥に固定されたシフトパドルの操作だけに集中できる。変速スイッチがレバー(センターコンソール)とパドル(ステアリングホイール)の両方に備わるクルマもあるが、それはかえって操作の迷いをもたらすだけに思えてくる。
ただ、このパドル、ステアリング中央の付け根から上方にしか“枝”が伸びていない。操作性の良しあしを考えると、やはりフェラーリのように下のほうにも延長してほしいものだ。
シフトフィールに関しては、ランボルギーニは、通常の足踏みクラッチをもつカウンタック時代からダイレクトなフィールを持っている。この手のスーパーカーの中で、「カウンタック」や「ディアブロ」はピカイチだった。
この「トリコローレ」は電気スイッチによる間接的な作動感覚は拭えないものの、レスポンスそのものは上々。ただし、クラッチミートは少々荒い。特に1速や2速などの“低いギア”では、出力がピークに達する8000rpmまで引っ張って変速すると、結構なショックがあるから、駆動系の耐久性を考えると早めに上のギアへ送った方が賢明だ。もっとも、オートマチックモードで使う分には、まったく問題はない。
街乗りもなかなか
V10エンジンは、サウンドこそV12と違えどパワー感覚は申し分ない。クランクシャフトが短いコンパクトな設計ゆえ、パワーがひとかたまりに集中してギアボックスからデフに伝わり、タイヤへと至る感覚が強い。その動力伝達の感覚は剛性感に満ちている。
車名の「LP」が意味するエンジン縦置きのミドシップレイアウトは、これだけ大きな慣性マスともなれば「ジャイロトルク」でスロットルオンあるいはオフによって姿勢変化をもたらすものだが、駆動感覚はガッシリとしていて、みじんの乱れも感じさせない。縦置きエンジンから導かれるパワーが、うまく駆動輪へと方向転換されている様子がイメージできる。
V10の音とて、魅力がないわけではない。V12の澄んだ快音とは異なるものの、複数の楽器が同居するオーケストラのにぎわいは、また格別の華やかさがある。嫌な振動とも無縁である。
「ガヤルドLP550-2 トリコローレ」は見るからに獰猛(どうもう)な面構えをしているが、街中での振る舞いには、おしとやかで優雅なところもうかがえる。低いノーズに対して、フロントサスには油圧の車高調節機構が備わるおかげで、ガソリンスタンドなど段差のある場所へのアプローチが容易に行える。スーッとノーズを持ち上げる動作は、まるで生きている動物のようにも見える。
今ではこうしたスーパーカーに乗るチャンスも減ってしまったが、いざ乗ると、やはり刺激は大きい。いつまでもずっと乗っていたい誘惑に駆られるのはもちろんだが、気構えも必要であり、ただ速いクルマに乗るのとは訳が違う。特別なクルマに乗っているというこの緊張感や高揚感などは、もし可能ならば若いうちに味わっておく方が、「人生経験」としてはいいのかもしれない。
今回のテスト区間約300kmの平均燃費は5.23km/リッター。高性能を味わった代償としては期待以上に良好だ。燃料タンク容量は90リッターと、十分な量が確保されている。
(文=笹目二朗/写真=峰昌宏)

笹目 二朗
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