ジャガーFタイプ R クーペ(FR/8AT)/Fタイプ S クーペ(FR/8AT)
スポーツできるカー 2014.07.07 試乗記 2シーターオープン「Fタイプ コンバーチブル」の国内デビューからおよそ1年、より走行性能にフォーカスしたというクローズドボディー版「Fタイプ クーペ」が上陸した。その走りは? 他のスポーツカーとの違いは? 2つのグレードで試した。違いはルーフだけじゃない
「Eタイプ」直系をうたうジャガーのリアルスポーツカー、Fタイプにクーペが加わった。
これまでの3リッター「コンバーチブル」と同じV6エンジンを積むベーシックグレードだと、価格は823万円。コンバーチブルより約150万円安い。同等の性能を持つライバルよりお買い得感を打ち出しているのがFタイプ クーペの特徴でもある。
その一方、高性能イメージもクーペが持っていく。550psの5リッターV8モデルにはジャガーのトップガン“R”の称号が与えられ、495ps止まり(笑)の「V8 S コンバーチブル」とは完全に差別化が図られた。また、クーペの参入を機に、3リッターV6には標準より40ps増しの380ps仕様が新設され、“S”グレードに搭載される。
これらの結果、ジャガーFタイプは、ふたつのボディー、ふたつの排気量、4つのエンジンチューンを持つ一大スポーツカーファミリーに成長した。こんな時代に、めでたいことである。
福島県の山中で開かれた試乗会で乗ったのは、2台のクーペ。一台80分の短時間ながら、まずはいきなり5リッターの「R クーペ」(1286万円)を試す。
誰もがハッとするデザイン
「スポーツカーはまずカッコ」という論が正しいとすれば、Fタイプ クーペは間違いなく真正スポーツカーである。カッコは好き好きだが、個人的好みで言わせてもらうと、こんなにカッコいいスポーツカーは久しぶりだ。
オールアルミ製のクーペボディーで、鮮烈なのは後ろ姿である。最後、神の手でつまんだようなリアエンド、その結果の薄いリアランプ、広いボディー全幅に対して、極端に狭く小さいテールゲートなど、今まで見たことがないデザインだ、と素直に驚く人もいれば、ベテランのクルマ好きには、それらの特徴がEタイプにオマージュをささげたものであることがわかるはずだ。どっちにしても、ギャラリーの目をくぎづけにしそうなリアスタイルである。
4470mmに抑えられた全長に対して、全幅は1925mmもある。しかし、乗り込むとキャビンはタイトだ。真後ろから見れば一目瞭然だが、ボディー全幅は豊満なリアフェンダーのなせるわざであって、キャビンの“正味”はそんなにワイドではないのだ。シートはコンバーチブルと同じく、純粋2座。背もたれの後ろに一眼レフが1台入りそうなボックスはあるが、ふたり乗ってしまうと、カバンやジャケットを置く場所にも困る。つまり、スポーツカーとして、大変潔い。
細長いリアウィンドウは運転席から振り返っても、バックミラーごしに見ても、小さい。ただ、バックしたときに気づいたのは、意外や真後ろの直近がよく見えること。ガラスのボトムラインをUの字にしたおかげだ。最近のハイデッキなセダンよりはずっと後方視界にすぐれる。
スタートボタンを押して、5リッターV8を起こすと、目の詰んだバイブレーションが硬いボディーを震わせる。エンジンをかけただけでワクワクさせるこの感じ、ミドシップのスーパーカー的である。
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常に刺激に満ちている
走り始めてまず気づいたのは、並外れたボディーの剛性感だ。「3万3000Nm/度のねじり剛性はF1マシン並み」と言われても困るが、ボディーはとにかくアルミのカプセルのように硬い。
前後ダブルウィッシュボーンの足まわりも硬い。けれど、重々しくはない。車重は1810kg 。5リッターV8とはいえ、2WDのアルミスポーツカーとしてはけっこう重いが、身のこなしやフットワークからはそんなヘビーウェイトをまったく感じさせない。
550psのスーパーチャージャー付き直噴5リッターV8は、少し前に乗って、その速さに目を回した「XJR」と同じエンジンだが、R クーペはあのビッグサルーンより150kg軽い。速いのは言わずもがなだ。
しかも、単なる速さだけではなく、足まわりの印象も含めての「敏しょう性」にタマげる。エンジンもシャシーも、ひとことでいうとレスポンスのかたまり。おかげで、ゆっくり流していても、スポーティーに飛ばしていても、刺激的だ。遊びやタメがないからタイヘン、という言い方もできなくないが、でもそれが、硬くて軽やかでウルトラパワフルなR クーペの芸風である。
4本出しマフラーから発せられる排気音はコックピットでも車外でもかなりスポーティーである。さらにセンターフロアのラウドボタンを押すと、排気の流れはより“直管”に近くなる。アクセルを踏んでも戻してもパリパリいう乾いた大音声は、好き者にとって、アドレナリンの素であることは間違いない。
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どうせ乗るなら激辛の“R”
もう1台の試乗車はS クーペ(1029万円)。380psまでチューンナップしたスーパーチャージャー付き直噴3リッターV6を搭載するFタイプ クーペの中位グレードだ。
8段ATをコントロールする金色のシフトパドルをはじめ、コックピットの印象はR クーペとそう変わらない。最高出力は170psドロップするが、車重は80kg軽い。0-100km/hの公式データは、4.2秒のR クーペに対して、S クーペも4.9秒まで食らいついている。“ベーシック好き”としては興味津々でスタートしたのだが、ゴメンナサイ。R クーペのアドレナリンカーぶりに触れたあとでは、正直、薄味に感じられてしまった。
今回の試乗コースはほとんどワインディングロードのみ。信号機もなかったため、全車に標準装備のアイドリングストップ機構も試せなかった。スピードの低い町なかで普段使いをすれば、S クーペのよさがもっと味わえたかもしれない。
とはいえ、乗り心地はSクーペだってそうとう硬い。決してラグジュアリーなクーペではない。としたら、「Fタイプ クーペ食らわばRまで」と感じたのがこの日の結論。
Fタイプ クーペは、リアルスポーツカーである。ドライビングプレジャーを味わう「スポーツのためのカー」である。昔、12気筒のEタイプには乗ったことがあるが、アメリカ向けのラグジュアリーEタイプは、こんな過激なクルマではなかった。
中でもイメージリーダーのR クーペはどのアストン・マーティンよりも硬派で、「ポルシェ911」の「GT3」よりむしろレーシングライクかもしれない。サルーンのイメージが強かったジャガーが、よくこんなクルマをつくったものである。
試乗会の翌日、朝刊を開いたら、ジャガーFタイプの広告が載っていた。クルマの宣伝文句を見て、異議なし! と思ったのはこれが初めてである。
「ドイツもこいつも、刺激が足りない」。ザブトン10枚!
(文=下野康史<かばたやすし>/写真=高橋信宏)
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テスト車のデータ
ジャガーFタイプ R クーペ
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4470×1925×1315mm
ホイールベース:2620mm
車重:1810kg
駆動方式:FR
エンジン:5リッターV8 DOHC 32バルブ スーパーチャージャー付き
トランスミッション:8段AT
最高出力:550ps(405kW)/6500rpm
最大トルク:69.3kgm(680Nm)/2500-5500rpm
タイヤ:(前)255/35ZR20 97Y/(後)295/30ZR20 101Y(ピレリPゼロ)
燃費:8.1km/リッター(JC08モード)
価格:1286万円/テスト車=1414万1000円
オプション装備:アダプティブフロントライティング(9万1000円)/パノラミックグラスルーフ(13万4000円)/電動テールゲート(6万2000円)/リアパーキングコントロール+リアカメラパーキングコントロール(10万2000円)/ジャガースマートキーシステム(7万7000円)/カラーシートベルト<レッド>(3万6000円)/ステンレススチールペダル(2万1000円)/ヴァレイモード(1万1000円)/MERIDIAN 770W サラウンドサウンドシステム 14スピーカー(3万6000円)/デジタルTVチューナー(12万1000円)/エクステンテドレザーパック+プレミアムレザーインテリア(31万4000円)/20インチBlade鍛造アロイホイール(27万6000円)
テスト車の年式:2014年型
テスト開始時の走行距離:3541km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター
参考燃費:--km/リッター
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ジャガーFタイプ S クーペ
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4470×1925×1315mm
ホイールベース:2620mm
車重:1730kg
駆動方式:FR
エンジン:3リッターV6 DOHC 24バルブ スーパーチャージャー付き
トランスミッション:8段AT
最高出力:380ps(280kW)/6500rpm
最大トルク:46.9kgm(460Nm)/3500-5000rpm
タイヤ:(前)255/35ZR20 97Y/(後)295/30ZR20 101Y(ピレリPゼロ)
燃費:10.6km/リッター(JC08モード)
価格:1029万円/テスト車=1301万4000円
オプション装備:プレミアムメタリックペイント(15万9000円)/アクティブスポーツエグゾーストシステムスイッチ機能(1万円)/パノラミックグラスルーフ(13万4000円)/電動テールゲート(6万2000円)/リアパーキングコントロール+リアカメラパーキングコントロール(10万2000円)/レッドブレーキキャリパー(4万6000円)/ジャガースマートキーシステム(7万7000円)/オートエアコン<左右独立調整式、空気清浄機能付き>(8万7000円)/スポーツレザーステアリングホイール(4万6000円)/プレミアムレザーパフォーマンスシート(41万1000円)/ステンレススチールペダル(2万1000円)/スポーツカーペットマット(2万7000円)/ムードランプ(5万7000円)/ヴァレイモード(1万1000円)/コンフィギュラブルDynamic-iディスプレイ付き(15万4000円)/MERIDIAN 380W サラウンドサウンドシステム 10スピーカー(17万円)/デジタルTVチューナー(12万1000円)/エクステリアデザインパック&ブラックパック(35万5000円)/エクステンテドレザーパック+プレミアムレザーインテリア(36万8000円)/20インチCycloneブラックアロイホイール(30万6000円)
テスト車の年式:2014年型
テスト開始時の走行距離:3806km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター
参考燃費:--km/リッター

下野 康史
自動車ライター。「クルマが自動運転になったらいいなあ」なんて思ったことは一度もないのに、なんでこうなるの!? と思っている自動車ライター。近著に『峠狩り』(八重洲出版)、『ポルシェよりフェラーリよりロードバイクが好き』(講談社文庫)。
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