ジャガーFタイプ S クーペ(FR/8AT)/Fタイプ R クーペ(FR/8AT)
ポルシェとも、メルセデスとも戦える 2014.04.29 試乗記 ジャガー久々の2シータースポーツモデル「Fタイプ」に、待望のクーペが登場。クローズドボディーによってその走りはどう変わったのか?ジャガー悲願のピュアスポーツ
「Eタイプ」の販売終了から向こう30余年の間、ジャガーにおいて、スポーツカーは作られていなかった……と仮定されれば、異論を挟みたくなるのは僕だけではないだろう。「XJ220」のような特殊なモデルは別としても、「XJ-S」はTWR(トム・ウォーキンショー・レーシング)の手によりイギリスのツーリングカー選手権を席巻した経緯がある。その後の「XK」にしても、素晴らしいコントロール性を備えたモデルであることは間違いない。
が、ジャガーにとって、それらはあくまで2+2のラグジュアリークーペという位置づけである。加えていえば、2シーターのピュアスポーツモデルをラインナップに加えることは、自らをスポーツカーブランドだと信じる彼らにとっての悲願だったのかもしれない。そう考えてみるとFタイプの位置付け、そして性質がよくわかる。すなわち、実用性を犠牲にしてでもベストのディメンションとデザインを優先すると。ユーザー側としてはその潔さが敷居の高さとなっているのも事実だ。
と、それはコンバーチブルの話。間もなく日本にも導入される「Fタイプ クーペ」はハッチゲートを備えたファストバックスタイルを利して、後部に400リッター余りの荷室容量を備えるに至った。コンバーチブルがそうであるように、こちらもデザイン的にはEタイプのフィクストヘッドクーペの韻を踏むこともあってその開口部は狭く、荷室形状もスクエアというわけにはいかないが、一般的なスーツケースは無論、ゴルフバッグも形状を選べば収まりそうな積載力を手に入れたことで、そのユーザビリティーは一気に高まったといえるだろう。
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キーワードは「タッチ」
クーペ化による恩恵は当然ながらボディー剛性の向上にもみてとれる。そのねじり剛性はコンバーチブル比で80%増。3万3000Nmという値はカーボンモノコックを母体とする「ランボルギーニ・アヴェンタドール」にも近いほどだ。この強靱(きょうじん)な体幹を得たこともあって、Fタイプ クーペのフラッグシップたる「R」では搭載される5リッターV8スーパーチャージャーユニットの出力がコンバーチブル比の55ps増、550psまで高められている。一方の3リッターV6スーパーチャージャーを搭載する「S」および「標準車」はそれぞれ380ps、340psとコンバーチブルと同一だ。また、SとRにはオプションでカーボンセラミックブレーキも装備が可能となっている。バネ下重量を20kg低減できるなど、動的なメリットも多いこのシステムをジャガーがこれまで導入しなかったのは、特に冷間時に安定しないタッチを嫌ってのことだったが、Fタイプ クーペでの初採用にあたってはサプライヤーであるブレンボと入念な開発を重ね、納得のいくフィーリングに達したという。
この、タッチという言葉がFタイプ クーペを語る上では大きなキーワードとなるだろう。その実感は、走りだしからじわじわとドライバーに伝わってくる。最初に試乗したグレードはV6のハイパワー仕様であるSだが、ペダル類の踏み始めのチューニングはこなれており、歩くような速度を微細にコントロールすることが可能だ。一方で踏みしろに対してのスロットルのツキや減速Gのコントロール性などはドライバーの意図にカチッとシンクロしており、十分以上のパワーを持て余すことなく、むしろ足裏だけで四肢を奇麗に動かしているかのような満足感がもたらされる。革靴でも操れることがイギリスのスポーツカーらしさというのはいささかカビ臭い表現かもしれないが、ピュアスポーツを目指したであろうモデルにして、このチューニングを施してくる辺り、彼らのクルマづくりがいかに懐深いものであるかを体現しているかのようだ。
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ドライブフィールはクラスベスト
ステアリングフィールとライドフィールに関しては、まったくもって文句のつけようがない。もちろんFタイプはクーペも前提とした開発がなされているだろう。が、双方においては剛性バランスの設定が難しく、普通ならばオープンの側に味付けが偏りがちだ。つまり、クーペの方はどこか筋が張ったようなフィードバックが現れるということである。が、Fタイプ クーペにはそういうアラが一切見受けられず、むしろ剛性向上の恩恵のみがスッキリと現れている。操舵(そうだ)確度の向上や転舵(てんだ)時のキックバックの濁りのなさ、しっとりと路面を捉えて必要な情報のみをキッチリ伝える足さばきの見事さなど、快適性と敏しょう性、さらに情感までを加えてはかってみれば、Fタイプ クーペは間違いなくクラスベストのフィーリングをていしている。
ひいては、積載力だけではない日常性の向上という、一般道で感じたその豊かさを一切無視して目を三角にしながら臨んだクローズドコースでの試乗でも、Fタイプ クーペは抜群のしなやかさで応えてくれた。ダンパーレートが最も引き締まるダイナミックモードにおいても、ロールを過度に抑えず適度に伝えながら後輪側がねっとりと粘りまくる特性は、550psをしてドライバーに操る実感をしっかりともたらしてくれる。コースはブレーキベクタリング+電子制御LSDによるアンダーステア回避の状況をわかりやすく再現すべく、随所に散水されていたが、ウエットとドライの目まぐるしい変化に後輪側がグリップを失っても、前輪側の追従性が十分に確保されていることもあって、コントロール性には驚くほど変化が少なかった。最終的にはボディーコントロールデバイスがやや唐突に動きを封じ込める感はあるも、搭載するパワーに対するホイールベースの短さからすれば、そのスタビリティーも十分に確保されているといっていいだろう。敏しょう性とのバランスからみても、このディメンションでよくぞここまでダイナミックレンジの広いシャシーを仕立てたものだと感心させられる。
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ハイレベルな戦いが始まる
2種類のボディーを持つFタイプの成り立ちは、さながら「ポルシェ・ボクスター」と「ケイマン」のようであり、V6モデルの装備や動力性能を基に勘案してみると、少なからずそこを意識した跡も伺えなくはない。が、一方でV8モデルの存在は「911」はおろか「メルセデス・ベンツSLクラス」のAMG辺りをも射程に捉える総合力を備えてもいる。ともあれジャガーはポルシェを中心に市場が構築されている1000万円前後級のスポーツカーセグメントに、彼らが考える最善のピュアネスを携えてFタイプを提案しているということになるだろう。もちろん今年はここに「シボレー・コルベット」も絡んでくるわけで、気づけばこのクラスのスポーツモデルたちが繰り広げる個性の競演は、とんでもなくハイレベルなものとなっている。
(文=渡辺敏史/写真=ジャガー・ランドローバー・ジャパン)
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テスト車のデータ
ジャガーFタイプ S クーペ
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4470×1923×1309mm
ホイールベース:2622mm
車重:1594kg
駆動方式:FR
エンジン:3リッターV6 DOHC 24バルブ スーパーチャージャー付き
トランスミッション:8段AT
最高出力:380ps(280kW)/6500rpm
最大トルク:46.9kgm(460Nm)/3500-5000rpm
タイヤ:(前)255/35ZR20 97Y/(後)295/30ZR20 101Y(ピレリPゼロ)
燃費:9.1リッター/100km(約11.0km/リッター、欧州複合モード)
価格:1029万円/テスト車=--万円
オプション装備:--
※価格は8%の消費税を含む。
テスト車の年式:2014年型
テスト車の走行距離:--km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター
参考燃費:--km/リッター
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ジャガーFタイプ R クーペ
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4470×1923×1321mm
ホイールベース:2622mm
車重:1650kg
駆動方式:FR
エンジン:5リッターV8 DOHC 32バルブ スーパーチャージャー付き
トランスミッション:8段AT
最高出力:550ps(405kW)/6500rpm
最大トルク:69.3kgm(680Nm)/2500-5500rpm
タイヤ:(前)255/35ZR20 97Y/(後)295/30ZR20 101Y(ピレリPゼロ)
燃費:11.1リッター/100km(約9.0km/リッター、欧州複合モード)
価格:1286万円/テスト車=--万円
オプション装備:--
※価格は8%の消費税を含む。
テスト車の年式:2014年型
テスト車の走行距離:--km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター
参考燃費:--km/リッター

渡辺 敏史
自動車評論家。中古車に新車、国産車に輸入車、チューニングカーから未来の乗り物まで、どんなボールも打ち返す縦横無尽の自動車ライター。二輪・四輪誌の編集に携わった後でフリーランスとして独立。海外の取材にも積極的で、今日も空港カレーに舌鼓を打ちつつ、世界中を飛び回る。
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