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第356回:大矢アキオ式、街角の「珍サイン」「迷サイン」コレクション

2014.07.18 マッキナ あらモーダ!

誰でもわかる“サイン”が重要

ワールドカップブラジル大会終了に伴い、わが家は行きつけのディスカウントスーパーに急行した。便乗商品の格安残り物を手に入れるためだ。ハイエナのごとく物色すると、あったあった、ブラジル食品フェアの残り物が。

そのひとつ、冷凍スペアリブを調理しようとしたときのことだ。4カ国語で調理方法が書かれていて、そのひとつがイタリア語なのだが、肝心の「オーブンの予熱温度」「加熱時間」が書かれてない。スペイン語部分だけ妙に行数が多いので熟読すると、それらが記されているではないか。「予熱温度も加熱時間も、誰でもわかるピクトグラム(サイン)で表示しておいてくれれば、こんな苦労しないのに」とブツブツ言いながら、学生時代の英語学習のごとくボールペンで下線を引きながら読解した【写真1】。

街に出れば、観光シーズン真っ盛りの今、さまざまな国の言葉が飛び交っている。特に近年はボクになじみが薄い東欧系と思われる言葉を話す人が増えている。そうしたなか、どの国や地域の人にも瞬時に理解してもらえるサインは、ヨーロッパでより重要になってくるはずだ。

【写真1】ブラジル食品フェアの残り物だったスペアリブ。肝心のオーブンの予熱時間と加熱時間は、スペイン語部分にしか記されていなかった。
【写真1】ブラジル食品フェアの残り物だったスペアリブ。肝心のオーブンの予熱時間と加熱時間は、スペイン語部分にしか記されていなかった。 拡大

AEDのサインを統一せよ!

最近イタリアの駐車場で増えてきたのは、「妊娠している人」「乳児を連れている人」向けのスペースを示す表示である。ただし、道路交通法に従った標識ではないので、統一されたものはなく、場所によってデザインはさまざまだ。
【写真2】はフィレンツェ郊外の大ショッピングセンターで見つけたものである。コウノトリ伝説はヨーロッパだけのものである。さまざまな文化の人たちに理解してもらうことを意図するなら、やはりシエナ市役所が市内各地に設置している【写真3】のほうがよかろう。 

そのシエナで発見した秀逸なサインは【写真4】である。たとえ「Corredo Idrante(水道設備一式)」が理解できなくても、消防士のヘルメットと炎の図案で、消火設備があることが即座にわかる。

いっぽう問題は、ヨーロッパ各地でもようやく普及してきた「自動体外式除細動器」である。日本では「AED」だが、イタリアでもフランスでも、自国語の表記にしたがい「DAE」とアルファベットの順番が異なる。「NATO」(北大西洋条約機構)が「OTAN」となるのと同じことだ。

そこで、わかりやすい図案が求められると思うのだが、収納ボックスが緑だったりオレンジだったりと、現状では色からして統一されていない。これを使用する時は緊迫した状況が予想されるので、ひと目でわかるように、欧州全体で、いや世界規模で早急な統一を望む。

唯一参考になると思われるのは、ドイツのフランクルト・アム・マイン空港にあるAED【写真6】である。機器を使用中の患者と救助者を模した切り抜きは目的が一目瞭然で、世界中の人々が利用する空港施設にふさわしい。

【写真2】フィレンツェ郊外のショッピングモールに掲げられた「妊娠している人・乳児を連れている人専用」のサイン。
【写真2】フィレンツェ郊外のショッピングモールに掲げられた「妊娠している人・乳児を連れている人専用」のサイン。 拡大

【写真3】シエナ市役所による【写真2】と同じ内容のサイン。こちらのほうがわかりやすいが、いずれも女性をイメージさせるピンクは、強い太陽のもと日々退色してゆくのが心配だ。


    【写真3】シエナ市役所による【写真2】と同じ内容のサイン。こちらのほうがわかりやすいが、いずれも女性をイメージさせるピンクは、強い太陽のもと日々退色してゆくのが心配だ。
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【写真4】消火設備器具の箱。シエナにて。
【写真4】消火設備器具の箱。シエナにて。 拡大
【写真5】ジュネーブ国際空港のAEDは緑。
【写真5】ジュネーブ国際空港のAEDは緑。 拡大
【写真6】フランクフルト・アム・マイン空港のAED。患者と救助する人を模した切り抜きは、無言のうちに用途を伝える。
【写真6】フランクフルト・アム・マイン空港のAED。患者と救助する人を模した切り抜きは、無言のうちに用途を伝える。 拡大

トイレかと思ったらエレベーター

ちょっと堅い話になってしまったので、ここからはムードを変えてボクが欧州各地で見つけた、珍サイン&迷サインを紹介する。

【写真7】はイタリアのとあるトイレに設置された自動販売機である。従来はブランド名やロゴばかり羅列されていて、外国人は中の商品を判別するのに時間がかかった。いっぽう、これならばトイレットペーパーだとかコンドームだとか即座にわかり、ロシアンルーレット気分でボタンを押すのから解放される。

【写真8】はブリュッセルのシャルルロワ空港のレンタカーカウンターで撮影したものだ。ベルギーといえばフライドポテト。ターミナルビルを出るか出ないかのうちに香りが充満して、ベルギー人が一目散に屋台に並ぶ光景がみられる。しかし、ここには持ち込まないでね、というわけであるだ。「日本では寿司、てんぷらの立ち喰い禁止エリアがある」といったホラを、真に受ける人がいそうな感じがしてくる。

次は親切系である。北部バドヴァのホテルに宿泊したとき、フロントに掲示されていたものだ【写真9】。その日は、10月最終週の土曜日。今夜、夏時間から冬時間に切り替わりますよ、という警告である。サマータイムに慣れない外国人にはうれしい心配りといえよう。

いっぽう【写真10】はフィレンツェのバス停に貼られていたステッカーである。一般的にこうしたサインは「スリに気をつけましょう」を呼びかけるものだが、よく読むと、これはそうではない。
地元交通営団の民営化反対を呼びかけるものだ。「民営化しても値上げするばかりで何も良いことはない。あなたの財布からお金を奪うだけ」という皮肉である。

ただし、既存サインの流用は、思わぬ混乱をきたすこともある。忘れもしない、昨夏ボローニャで遭遇した表示板である。取材先で勧められるまま飲み物を飲んだボクは、帰り道、トイレを探して郊外の大ショッピングセンターにクルマを滑り込ませた。だがその日はバーゲン開始初の週末。駐車場は大混雑でなかなか空きがない。ようやく見つけた、遠い駐車スペースにクルマを置いて、建物に向かってダッシュした。
おっ、トイレを表す男女のマークを発見。ボクは次々とそれをたどって行った。しかし行き着いてみると、それは「エレベーター」だった【写真11】。
焦りが極限に達し、気がつけば「もう、まいっちんぐ~」と、往年のアニメ「まいっちんぐマチコ先生」における決め言葉をとっさに叫んでいたボクであった。

(文と写真=大矢アキオ<Akio Lorenzo OYA>)

【写真7】イタリアの公衆トイレにて。典型的な販売品4種類が確実にわかる。
【写真7】イタリアの公衆トイレにて。典型的な販売品4種類が確実にわかる。 拡大
【写真8】ベルギーといえばフライドポテトだが、マナーを守って!
【写真8】ベルギーといえばフライドポテトだが、マナーを守って! 拡大
【写真9】今夜から冬時間に切り替わるというメッセージ。
【写真9】今夜から冬時間に切り替わるというメッセージ。 拡大
【写真10】フィレンツェ交通営団の民営化に反対するステッカー。
【写真10】フィレンツェ交通営団の民営化に反対するステッカー。 拡大
【写真11】トイレを探して血迷っているときは、誰もが焦るであろう。
【写真11】トイレを探して血迷っているときは、誰もが焦るであろう。 拡大
大矢 アキオ

大矢 アキオ

コラムニスト/イタリア文化コメンテーター。音大でヴァイオリンを専攻、大学院で芸術学を修める。日本を代表するイタリア文化コメンテーターとしてシエナ在住。NHKのイタリア語およびフランス語テキストやデザイン誌等に執筆活動を展開。NHK『ラジオ深夜便』では、22年間にわたってリポーターを務めている。『Hotするイタリア』『イタリア発シアワセの秘密 ― 笑って! 愛して! トスカーナの平日』(ともに二玄社)、『ザ・スピリット・オブ・ランボルギーニ』(光人社)、『メトロとトランでパリめぐり】(コスミック出版)など著書・訳書多数。

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