第249回:電動なのに運動ができる
ヤマハの最新電動アシスト自転車試乗会
2014.07.18
エディターから一言
電動アシスト自転車というと、子どもの送り迎えにお母さんが乗るもの、というイメージを持っていたが、今回モデルチェンジした電動アシスト自転車のスポーティーモデル「PAS VIENTA5(パス ヴィエンタファイブ)」に試乗して、目からウロコがポロポロと落ちてしまった。
ストレートに言うと「とっても楽しい!」のだ。電動アシスト自転車が乗り物としてこんなに楽しいものだとは知らなかった。
ひとこぎで衝撃
今回の試乗会は、ヤマハの電動アシスト自転車「PASシリーズ」のうち、スポーティーモデルとされるヴィエンタ5と「Brace XL(ブレイス エックスエル)」がメインの試乗会だ。
ヴィエンタ5は、2011年に発売された先代がフルモデルチェンジを受けたもので、2014年7月18日に、ブレイスXLは従来型のマイナーチェンジモデルで、同年8月29日にそれぞれ販売が開始される。
私が電動アシスト自転車に乗ったのは、かれこれ10年以上前のことだ。
知人の家の前でちょっと乗らせてもらって「ふーん、これが電動アシスト自転車か、楽ちんね」と思ったくらいで、特に印象はなかった。
ただ、その後電動アシスト自転車に対する規制が緩和され、アシストの量が増やされている。
具体的には、初期の電動アシスト自転車は踏む力1に対して1のアシスト(つまり踏んだのと同じ力でアシストされる)、アシストの最高速度は15km/hまでと規制されていたのだが、2008年12月からは10km/hまで最大アシスト量が1:2、10km/hを超えると徐々にアシスト量が減り24km/hでゼロになるという規制になっている。
このアシスト量1:2という数字が、実際どれくらいのパワーなのか、まずはよりスポーティーなブレイスXLに試乗して確かめてみよう……とサドルをまたぎ最初のひとこぎで、「こりゃすごい!」と驚いた。
気分は音速の貴公子
ブレイスXLは、フロントサスペンション、フロントディスクブレーキ、内装8段変速を備えるPASシリーズで最もスポーティーなモデルだ。ちなみに気になる価格は16万3080円。
電動アシスト自転車というと「楽をするため」のものだという先入観があったため、「スポーティーな電動アシスト自転車ってどうなのよ?」と思っていたが、実際乗ってみるとこりゃびっくり、想像を超える楽しさがあった。
まずは走りだそうとペダルに力を込めたところ、いつものノンアシスト自転車の5倍くらいのトルク感で前に進んでいく。アシスト量は1:2なので、5倍ということはありえないのだが、体感的にはそれくらいの力強さだ。
ギアは一番軽いポジションにセットしてあったのだが、あまりのトルクにホイールスピンしてしまうのではないかと思うほど、力強い。
手元のレバーでカチカチとシフトアップしていくと、ぐんぐんと加速していく。自分の足でこいでいるのに、まるで見えざる手に押されているかような加速感が大変気持ちいい。
スーパーサイヤ人になったみたい、と言うとちょっとオーバーだが、その一歩手前くらいまでは行っている感じだ。
アシストの量は「アシスト オフ」「エコアシスト」「標準」「強」から選べるのだが、もし私がこの自転車を購入したならば、間違いなく常に全開バリバリの「強」を選択するだろう。
多少走行可能距離が短くなったとしても、このアシストの魅力は捨てがたい。試乗コースは代官山から中目黒という、都内では比較的起伏のある場所だったのだが、登り坂を加速しながら進んでいく爽快感は一度味わうとやみつきになってしまいそうだ。この独特の感覚は、ほかの乗り物ではちょっと味わえない。
ロードバイクに挫折するより
続いて、今回フルモデルチェンジとなったヴィエンタ5に乗り換える。
こちらは、先代が内装8段変速だったものが内装5段変速になったり、フレームのトップチューブ位置が下げられたりと、よりシティーユースに向けた仕様に変更されている。また、価格も12万9060円と、先代モデルより1万1854円安く設定されている。
フレームのデザインからすると、女性ユーザーを意識した商品かと思いきや、ブレイスXLにも負けず劣らずスポーティーだ。5段変速のギアは、8段変速よりも発進停止の多い市街地では使いやすい。もっとも、電動アシストがあるので、走行時のギアのまま停止して発進しても、それほど問題はないのだけれど。
ブレイスXLとヴィエンタ5との価格差は約3万4000円。ブレイスXLはフロントがディスクブレーキでフロントサスもついている。バッテリー容量もブレイスXLの方が大きい。購入しようと思っている人は、どちらにするか悩ましいところだろうが、通勤と休日の軽いサイクリングくらいなら、ヴィエンタ5で十分楽しめるだろうな、というのが私の印象だ。
実をいうと、私はスポーツタイプの自転車を所有してはいるのだが、マンションの駐輪場でホコリをかぶっている。年に1度か2度は引っ張り出して乗ってみるのだが、たまにしか乗らないと少し走っただけで体の節々が痛くなる。翌々日には激しい筋肉痛で次に乗るのはまた半年後……、といった悪循環に陥ってしまっている。
電動アシスト自転車は、ペダルを踏む力が登り坂や向かい風でも大きく変化しないため、力まずペースを守って走ることができる。つまり、有酸素運動ができるということだ。
楽をするためだけの電動アシストではなく、効果的に運動をしながらサイクリングを楽しむ電動アシストというのは、試乗するまで考えも及ばなかった。
「運動不足解消のために、ちょっといいロードバイクを買ってみようかな」なんて思っている人は、まずは一度自転車店でスポーツタイプの電動アシスト自転車に試乗してみることをお勧めする。
大枚をはたいて買ったロードバイクに挫折し、駐輪場の前を通るたびに後ろめたさを感じてしまうよりも、気軽にしかも楽しく乗れる電動アシスト自転車を買った方が、肉体的にも精神的にもよほど健康でいられるはずなので。
(工藤考浩)

工藤 考浩
-
第855回:タフ&ラグジュアリーを体現 「ディフェンダー」が集う“非日常”の週末 2025.11.26 「ディフェンダー」のオーナーとファンが集う祭典「DESTINATION DEFENDER」。非日常的なオフロード走行体験や、オーナー同士の絆を深めるアクティビティーなど、ブランドの哲学「タフ&ラグジュアリー」を体現したイベントを報告する。
-
第854回:ハーレーダビッドソンでライディングを学べ! 「スキルライダートレーニング」体験記 2025.11.21 アメリカの名門バイクメーカー、ハーレーダビッドソンが、日本でライディングレッスンを開講! その体験取材を通し、ハーレーに特化したプログラムと少人数による講習のありがたみを実感した。これでアナタも、アメリカンクルーザーを自由自在に操れる!?
-
第853回:ホンダが、スズキが、中・印メーカーが覇を競う! 世界最大のバイクの祭典「EICMA 2025」見聞録 2025.11.18 世界最大級の規模を誇る、モーターサイクルと関連商品の展示会「EICMA(エイクマ/ミラノモーターサイクルショー)」。会場の話題をさらった日本メーカーのバイクとは? 伸長を続ける中国/インド勢の勢いとは? ライターの河野正士がリポートする。
-
第852回:『風雲! たけし城』みたいなクロカン競技 「ディフェンダートロフィー」の日本予選をリポート 2025.11.18 「ディフェンダー」の名を冠したアドベンチャーコンペティション「ディフェンダートロフィー」の日本予選が開催された。オフロードを走るだけでなく、ドライバー自身の精神力と体力も問われる競技内容になっているのが特徴だ。世界大会への切符を手にしたのは誰だ?
-
第851回:「シティ ターボII」の現代版!? ホンダの「スーパーONE」(プロトタイプ)を試す 2025.11.6 ホンダが内外のジャーナリスト向けに技術ワークショップを開催。ジャパンモビリティショー2025で披露したばかりの「スーパーONE」(プロトタイプ)に加えて、次世代の「シビック」等に使う車台のテスト車両をドライブできた。その模様をリポートする。
-
NEW
ホンダ・プレリュード(前編)
2025.12.14思考するドライバー 山野哲也の“目”レーシングドライバー山野哲也が新型「ホンダ・プレリュード」に試乗。ホンダ党にとっては待ち望んだビッグネームの復活であり、長い休眠期間を経て最新のテクノロジーを満載したスポーツクーペへと進化している。山野のジャッジやいかに!? -
アストンマーティン・ヴァンテージ ロードスター(FR/8AT)【試乗記】
2025.12.13試乗記「アストンマーティン・ヴァンテージ ロードスター」はマイナーチェンジで4リッターV8エンジンのパワーとトルクが大幅に引き上げられた。これをリア2輪で操るある種の危うさこそが、人々を引き付けてやまないのだろう。初冬のワインディングロードでの印象を報告する。 -
BMW iX3 50 xDrive Mスポーツ(4WD)【海外試乗記】
2025.12.12試乗記「ノイエクラッセ」とはBMWの変革を示す旗印である。その第1弾である新型「iX3」からは、内外装の新しさとともに、乗り味やドライバビリティーさえも刷新しようとしていることが伝わってくる。スペインでドライブした第一報をお届けする。 -
高齢者だって運転を続けたい! ボルボが語る「ヘルシーなモービルライフ」のすゝめ
2025.12.12デイリーコラム日本でもスウェーデンでも大きな問題となって久しい、シニアドライバーによる交通事故。高齢者の移動の権利を守り、誰もが安心して過ごせる交通社会を実現するにはどうすればよいのか? 長年、ボルボで安全技術の開発に携わってきた第一人者が語る。 -
第940回:宮川秀之氏を悼む ―在イタリア日本人の誇るべき先達―
2025.12.11マッキナ あらモーダ!イタリアを拠点に実業家として活躍し、かのイタルデザインの設立にも貢献した宮川秀之氏が逝去。日本とイタリアの架け橋となり、美しいイタリアンデザインを日本に広めた故人の功績を、イタリア在住の大矢アキオが懐かしい思い出とともに振り返る。 -
走るほどにCO2を減らす? マツダが発表した「モバイルカーボンキャプチャー」の可能性を探る
2025.12.11デイリーコラムマツダがジャパンモビリティショー2025で発表した「モバイルカーボンキャプチャー」は、走るほどにCO2を減らすという車両搭載用のCO2回収装置だ。この装置の仕組みと、低炭素社会の実現に向けたマツダの取り組みに迫る。
