マツダ・デミオ 開発者インタビュー
ベーシックカーだからといって“出し惜しみ”はしない 2014.07.24 試乗記 マツダ商品本部
主査
土井 歩(どい あゆむ)さん
新型「デミオ」を開発するうえでのチャレンジ、それはひとことでいうなら「クラス概念を打ち破る」ことだったという。全長4mの「魂動(こどう)」に込めた思いを開発者に聞いた。
SKYACTIVを積んだドライビングマシン
――ボディーは5ナンバーサイズを維持しましたね。
「デミオ」はマツダにとって日本国内における最量販車種であり、顧客基盤を構築する非常に重要なプロジェクトです。マツダグループ全体の「源泉」となるクルマですから、やはり5ナンバーの枠内で作ることは外せなかったのです。
――魂動デザインという、場合によっては室内が狭くなる可能性があるデザイン言語をBセグメントカーに採用することについて、議論はありましたか。
われわれが今、マツダというブランドを立てて、「走り」の部分をきっちり訴えていこうとする場合、いったいどういう形がふさわしいでしょうか。いわゆる“ワンモーションフォルム”の、荷物がたくさん積めるようなクルマがふさわしいかといえば、決してそうではないと思うのです。「SKYACTIVを積んだドライビングマシン」というイメージを伸ばすべきではないか? そう考えて、この方向性を選びました。
――実用性は従来型と比較してどれくらい向上しているのでしょうか。
現行型のお客さまには、ぜひ新型に乗り換えていただきたいし、そうしたとき、お客さまから「室内が狭い」と不満が出るようではだめなので、荷室や後席のスペースを割り切るということはしていません。現行型のお客さまから不満が出ないのは当然のことと考え、従来型で達成したレベルを絶対に割り込まないようにしました。また、スペースだけでなく、より使いやすくするとか、乗り降りしやすくするとか、そういう改善にも注意を払って開発してきました。他のコンパクトカーとは勝負の軸足がずれている……。新型デミオは、もしかするとそんなふうに見えるかもしれません。
ガソリンもディーゼルも大事にしたい
――従来型には3種のガソリンエンジンが用意されていますが、新型ではガソリン1種、ディーゼル1種とシンプルな品ぞろえです。意欲的であり、同時にとても思い切った判断だと感じました。
現在のBカー(Bセグメントカー)の市場を見ると、従来のガソリンモデルの販売台数は減少してきており、ハイブリッドがメインになりつつあります。われわれがそこに勝負をかけようしたとき、やはりガソリンではなく、ディーゼルでなんとかしたい、という思いがありました。もちろん、そうはいってもガソリン車は絶対に必要ですから、このような2本立てにしました。
――では、ラインナップの「主役」という意味では、引き続きガソリン車ですか。それとも新登場のディーゼル車ですか。
ディーゼル車は新しい挑戦ですので、まずはそっちを成功させたいという気持ちは事実、あります。ただ、ガソリンについても、もちろんそこから軸足をずらすつもりはありません。両方大事にしていきたいというのが正直な気持ちです。
コンパクトカーだからこそより安全に
――新型デミオのライバルはどのクルマとお考えですか。
ライバルですか? 難しいですね。競合車を設定して開発してきたわけではなく、「こうあるべきだ」と考えて作ってきましたから……。やはり欧州のBカーはお手本になりますね。特にデザインや色使いなどを参考にしています。
――デミオはベーシックなモデルですが、装備は盛りだくさんで、まったく手を抜いていません。上級車種のオーナーがうらやみそうなくらいです。
これはわれわれ自身も反省しなくてはならないことなんですが、従来、安全装備面において、作り手の側に「コンパクトカーなんだから、そこまでやらなくてもいいだろう」という風潮があったのは事実だと思います。しかし今回は、たくさんのお客さまが乗るコンパクトカーだからこそ、安全性能を上げておかなくてはならないのではないかという考え方で装備内容を決めました。できるところから、どんどんやっていこうという姿勢で。ですから実は、上のグレードのクルマにはまだ装備されていない、今回のデミオが初搭載となる安全装備もあります。
(文=webCG/写真=小林俊樹)

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