アストン・マーティンV8ヴァンテージN430クーペ(FR/7AT)/V8ヴァンテージN430ロードスター(FR/7AT)
由緒あり 2014.08.29 試乗記 「N」のイニシャルは“ニュルブルクリンク直系”の意。その最新版「V8ヴァンテージN430」を、ニュルブルクリンク周辺のカントリーロードで試した。グッとくるカラーリング
これはちょっとあからさまに過ぎるんではなかろうか、と最初は思った。私たちオジサンの大部分にとってはむしろ大好物であり、多少ベタだと分かっていても胸の鼓動を抑えられない装いではあるが、上品さとエレガンスを家訓として受け継ぐアストン・マーティンにしてはずいぶんとストレートなレーシングカラーである。スポーツカーレース華やかなりし頃のアストン・マーティンのシンボルカラーである薄いグリーンにエアインテークの周囲を黄色に塗ったカラーリングは、伝統的な戦闘色なのだ。
もっとも、そのような歴史背景を皆が皆知っていると思ってはいけないのが現代だ。中国ではポルシェはSUVメーカーと見なされているというぐらい。まったく経緯を知らないニューリッチたちに向けて、再びルマンやニュルブルクリンクなどのGTカーレースに積極的に参加しているアストン・マーティンの伝統、そして由緒正しいボディーカラーというものを、あらためて知らしめる必要がある時代なのかもしれない。
念のために言っておくと、そもそもグリルの周りを塗り分けるのは、レース中に他の車と見分けやすくするための手段だ。同じタイプのマシンを多数のチームが出場させることもあるから、識別のためにサイドミラーを塗ったり、ボディーの真ん中にストライプや矢印を入れたりするのが昔からの作法だった。
ただしこのカラーリングはクラブスポーツ・グラフィック・パッケージというオプションであり、アローロ(イタリア語で月桂<げっけい>樹の意)グリーンにイエローはその名も“レース”というパッケージ。他にもブルーと赤の “ヘリテージ”など全5種類が用意されている。目立つのを避けたい人は標準色を選べばいい。