第257回:「ジャガーXE」が華々しくデビュー
ロンドンで開催されたワールドプレミアイベントに参加して
2014.09.23
エディターから一言
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英ジャガー・ランドローバーは2014年9月8日、新型ミドルクラスセダン「XE」のワールドプレミアイベントを、ロンドンのアールズコートで開催した。イベントはロックバンドや女性ボーカリストによるライブのほか、バレエダンサーの舞踏や本格的な演劇が催されるなど、大規模かつ豪華なものとなった。その模様をリポートする。
XEを感じろ!
アールズコートと聞いて、「ロンドンモーターショーの会場」と答えられる人は昔からのクルマ好きだろう。
残念なことに、このロンドン西部にある巨大なホールでモーターショーが行われなくなってずいぶんたつ。もちろん僕も初めて来た。
一度、テムズ川沿いの、たしか「エクセル」とかいった展示会場で行われることになったロンドンモーターショーを訪れたことがあるくらいだ。
そのアールズコートホールを丸々使って、ジャガーが彼らの新型ミディアムサイズサルーン「XE」を発表するイベントを開催した。ジャガー・ランドローバー社のソリハル工場に新たに設けられたXEの製造ラインから、造られたばかりのXEがヘリコプターや船で運ばれ、華々しく会場入りするという趣向だ。
イベントが行われたのは9月8日の夜だったが、それ以前からロンドン市内では、赤と青の背景に「#FEELXE」(XEを感じろ!)とだけ記されたXEのティーザー広告があちこちのビルボードで展開されていた。それには、最も広告掲載料金が高価だといわれているヒースロー空港からロンドン市内に向かうM4高速道路沿いのものも含まれる。以前に、マクラーレンが「MP4/12C」の広告を掲載したことで話題になったところだ。
ジャガーの歴史が一堂に会する
イベントが始まるずいぶん前から、アールズコートには大型バスやクルマが続々と乗り付けられていった。僕も、他の国のメディア関係者と一緒に、市内から赤い2階建てロンドンバスに乗ってきた。恐れ入ったことに、この日のために貸し切られたこのロンドンバスのボディーにも「#FEELXE」と描かれている。
ホールに招待されたのは、全世界からのジャガーディーラーとメディア関係者で、合計で約3000人にも上るらしい。たしかに、それくらいいそうだ。この数字だけ見ても、ジャガー・ランドローバー社が、いかにXEに力を入れているかがよくわかるだろう。
VIP用に区切られた一角には、スターリング・モスや、往年のジャガーのテストドライバーで「XJ13」の大事故や「Eタイプ」をコベントリーからジュネーブまで徹夜で自走するといったエピソードの持ち主であるノーマン・デュイスなどがいる。「XJR-9」で1988年のWSPC(世界スポーツプロトタイプカー選手権)のドライバーズタイトルを獲得したマーティン・ブランドルもいた。
広大なホールには、高い天井から大きなパネルが何枚もつり下げられている。「ジャガーのパーフェクトな10台」というタイトルの下には、1台ずつ歴史的なジャガーが展示されている。ジャガー1号車から始まり、Eタイプや「マーク2」、初代「XJ」、ルマンを制した「Cタイプ」「Dタイプ」「シルクカットXJR-9」等々。いずれもジャガーのイベントの常連たちだ。
おや珍しいなと足を止めてじっくりと眺めてしまったのは、1980年代半ばのETC(ヨーロッパツーリングカー選手権)で「BMW 635CSi」と死闘を演じた「XJ-S」。ノーマルのXJ-Sには、どこか茫洋(ぼうよう)としてつかみどころがない印象を抱いていたが、レース仕様はそれがすごみと迫力に反転されている。
ボディーとシャシーにアルミを多用
他のパネルには、XEの技術的な特徴が図入りでそれぞれ説明されている。
XEの最も大きな特徴は、そのボディーとシャシーにアルミを大量に使用していることだろう。アルミの多用といえば、XEがライバルと想定している「メルセデス・ベンツCクラス」が旬だが、XEはそれ以上に採用している。アルミとスチールの割合は75%対25%。ホワイトボディーの重量は342kgになる。
会場に掲げられたパネルによれば、XEのプレス加工されたパネルの70%には高強度のアルミニウム合金が使用されており、この数字はこれまでのどのジャガーよりも多い。
また、ジャガーはサプライヤーとともに自動車用としては世界初になる「RC5754」という新しいアルミニウム合金を開発したほか、ほぼすべてが再生材で構成されている。ジャガーはシャシーとボディーのアルミ化をいち早く、先代XJから進めてきたが、XEにおいてはそれをさらに加速させている。
新開発の「インジニウム」エンジンを搭載
次に注目なのはエンジンだろう。2013年の北京モーターショーで発表された、「INGENIUM(インジニウム)」と名付けられた新開発の4気筒が搭載される。ジャガー・ランドローバー社が、イギリス・ウエストミッドランド地方の10万平方メートルもの敷地に5億ポンドを投資して新設した研究開発センターと工場から送り出される。「一切妥協を許さない、白紙からの開発」と自信満々だ。
はじめにXEに搭載されるINGINIUMエンジンは、2リッターのディーゼルターボである。燃費とパフォーマンスを兼ね備え、世界中の排ガス規制に適合できる。これに続いて、ガソリンの2リッターが搭載されるもようだ。
INGINIUMエンジンの特徴は、モジュラー構造を採用するところにあると記されている。2リッター4気筒をふたつ組み合わせてV8やV6を造るのか、それとも過給機やハイブリッドシステムと組み合わせるのか?
その点について、イベント終了後にジャガー・ランドローバーのグループ・マーケティングディレクターであるフィル・ポッパム氏に質(ただ)してみたが、「具体的には、まだ明らかにできない」という答えにとどまるだけだった。
セグメントの新基準を打ち立てるか
ホール内のステージに移動し、いよいよ始まったメインイベントは、バレエダンサーの踊りや本格的な演劇(現代の若者たちが1930年代にタイムスリップしてジャガーの歴史をたどるという、これも凝ったもの)や、ロックバンドのカイザーチーフス、歌手のエミリー・サンデーが自身の書き下ろした新曲「ジャガーFEELXE」を披露するなど盛りだくさんだった。
タイムスリップ劇のクライマックスは、時間の壁を飛び越えて現代へ戻る若者たちをXEの登場をシンクロさせたもので、ヘリコプターと船でロンドンに運ばれたXEが路上に放たれて、2台のマーク2のポリスカーに脇を固められながら会場入りする映像に実車を重ねながら舞台中央に登場した。
登場したのは、トップモデルの「XE-S」。「XJ」「XF」「Fタイプ」に搭載されている3リッターV6エンジンを積む。ボディーサイズや重量などはまだ明らかにされていないが、観客席からはずいぶんとコンパクトに見える。
近づいてみると、その印象は一層、顕著だ。近くにいたデザインディレクターのイアン・カラム氏に尋ねてみた。
「コンパクトに見えると同時に、背が高く見えないようにするのに腐心した。ライバルとなるクルマ(メルセデスCクラスのことと思える)と変わらない全高寸法だけれども、車内空間を確保しつつ、低く見えるようにデザインした」
アルミの多用はもともとジャガーが積極的に推し進めてきていたが、それを筆頭に空力性能向上への積極的な取り組み、自社製エンジンの搭載、パワーステアリングの電動化、新開発のサスペンション、インフォテインメントシステムの一新など、これまでのジャガー各車において開発が後回しにされていたことをほとんどすべて一気に挽回している。それらが狙い通りの効能を発揮しているのならば、ジャガーにとっても、セグメントにとっても新たな基準を打ち立てることになるだろう。早く乗ってみたいと思うのは僕だけではないはずだ。
(文=金子浩久/写真=ジャガー・ランドローバー)

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