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フォード・マスタング エコブースト(FR/6AT)/マスタングGT(FR/6AT)

アメリカンスポーツの再定義 2014.10.15 試乗記 中村 孝仁 フォードの看板スポーティーカーのモデルチェンジともなれば、それだけでちまたは大騒ぎだが、今度の新型はちょっと違う。「マスタング」の心臓として、いよいよ直4ユニットが載るのだ。“再定義されたアメリカンマッスル”をロサンゼルス郊外で試した。

ドメスティックからグローバルへ

アメリカンスポーティーカーのアイコン的存在の「マスタング」。誕生50周年を迎え、数が減ったとはいえ依然として年間8万台近くを売り上げる。しかしこの数字、実はアメリカに限ったものだ。というのも、日本などごく一部の地域を除きマスタングは輸出されていなかったからだ。しかもこの輸出市場は、規模からしたらまあ微々たるものである。

ところが2013年の暮れに公表された6代目となる新型は、従来の殻を破り、何とグローバルカーとして世界市場に打って出ることになった。アメリカ国内では今年10月1日に正式に発表され、いよいよデリバリーが始まるこの新型が販売される国は、世界で120カ国以上にのぼる。この中には25の右ハンドルマーケットが存在し、今回は開発段階から右ハンドル仕様の設定があるのだ。

とはいえ、右ハンドル仕様のテストが始まったのは今年8月のことだから、まだ右ハンドル仕様が市場に出るには時間がかかる。そこで今回は、左ハンドル仕様、言い換えるならアメリカ仕様車に一足先に試乗することにした。

ロサンゼルス・ダウンタウンの北西に位置するサンセットブールバードを起点に、北西に進み、最終的にはサンタスサナのハミングバードネストランチを目指した。そして帰路は海岸沿いのマリブに下りてロサンゼルスに戻る、およそ150マイル(約241km)ほどの試乗コースである。

試乗車は、僕の場合、午前が新たに投入された2.3リッター4気筒のエコブーストユニットを搭載するAT車。そして午後は5リッターV8のAT車である。コースは街中あり、フリーウェイあり、そして少し小石の浮いたワインディングロードありで、ほぼあらゆる条件下で試すことができた。

誕生から50周年を迎えた「マスタング」。新型は通算で6代目に当たる。


    誕生から50周年を迎えた「マスタング」。新型は通算で6代目に当たる。
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ドメスティックからグローバルへ。新型は120カ国以上の市場で販売される予定。
ドメスティックからグローバルへ。新型は120カ国以上の市場で販売される予定。
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従来型と比較して、ボディーサイズは全長が25mm、全高が35mm小さくなった。全幅だけが40mm広がっている。
従来型と比較して、ボディーサイズは全長が25mm、全高が35mm小さくなった。全幅だけが40mm広がっている。 拡大
試乗の舞台は米国ロサンゼルス。サンセット大通りを起点に、LAの西側をぐるりと一周するコースだった。写真はサンタスサナのハミングバードネストランチ。
試乗の舞台は米国ロサンゼルス。サンセット大通りを起点に、LAの西側をぐるりと一周するコースだった。写真はサンタスサナのハミングバードネストランチ。
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伝統に優雅さを少々

それにしても随分と長いローンチである。昨年12月にちょいとお披露目。その時はスペックを一切公表しなかった。その後、ニューヨークで正式な発表。この時は併せて50周年の記念イベントも行った。そしてようやく試乗できるクルマが完成し、北米市場で販売開始にこぎつけた。僕はクルマそのものを昨年12月のシドニー、そしてニューヨークと、過去2回見ている。シドニーの時はコンバーチブルのみ。そしてニューヨークでは50周年のアニバーサリーモデル。今回ようやく標準的な市販のクーペに遭遇することができた。

だが、その印象はこれまで2回とまるで違うものになった。これまでは先代のデザインを強く踏襲した典型的マスタングだと感じていたのだが、今回初めて屋外に持ち出して、遠くからじっくりと眺めてみると、まるで違うイメージを僕に植え付けてくれた。確かにフロントエンドはまごうことなきマスタング。ところがサイドビューはというと、特にウィンドウグラフィックなど、「おや、アストン・マーティン?」と思わせるエレガントなたたずまいを見せる。

そして試乗の間、散々見せられたリアビューは、ポルシェを彷彿(ほうふつ)させるどっしりとした下半身を持っていたのだ。エクステリアデザインを統括したフォードのモリー・カラム氏は、同社のデザインランゲージであるキネティックデザインを、このクルマには使っていないと話す。マスタングはあくまでもマスタングなのだと。

そのイメージはインテリアも同様。ダブルブロウと名付けられた左右対称なダッシュボードの形状はその典型だが、今回はそれを薄く見えるように作ることに苦労したと、インテリアをまとめたドイル・レトソン氏は話してくれた。薄いダッシュボードを実現した背景には、パッセンジャー側のエアバックをグローブボックスのふたに仕込むというアイデアがあり、そのアイデアを採用することで達成が可能となった。このあたりにもマスタングのこだわりが垣間見える。

ロングノーズ・ショートデッキのプロポーションは「マスタング」の伝統。新型ではそこに優雅さが加わっている。
ロングノーズ・ショートデッキのプロポーションは「マスタング」の伝統。新型ではそこに優雅さが加わっている。 拡大
ダブルブロウ(double-brow)と名付けられた左右対称デザインのダッシュボードに、3本スポークのステアリングホイールと、室内にも伝統が息づく。(写真=中村孝仁)
ダブルブロウ(double-brow)と名付けられた左右対称デザインのダッシュボードに、3本スポークのステアリングホイールと、室内にも伝統が息づく。(写真=中村孝仁) 拡大
後席の様子。空間的には「プラス2」の域を出ないが、シートの作り自体は大ぶりだ。(写真=中村孝仁)
後席の様子。空間的には「プラス2」の域を出ないが、シートの作り自体は大ぶりだ。(写真=中村孝仁) 拡大
ラゲッジルーム容量は13.5cu.ft.(約382リッター)。後席の背もたれは可倒式になっている。(写真=中村孝仁)
ラゲッジルーム容量は13.5cu.ft.(約382リッター)。後席の背もたれは可倒式になっている。(写真=中村孝仁) 拡大

軽快さが光る

使用した素材に関しても今回はワンランク引き上げられており、ダッシュボードにはアルミが使われている。このアルミ部分がダッシュを横一文字に通り、同時に丸形のメーター類とベンチレーターで構成されるシンメトリカルなデザインは、初代マスタング以来のDNAといっていいだろう。今回、エンジンスターターはプッシュボタン式に変わった。シフトレバー前のトグルスイッチの左端に付くのだが、最初は探すのに少々戸惑った。

フォード・ジャパン広報部の頑張りで一番気になるモデル、エコブーストのAT仕様に真っ先に乗ることができた。プッシュボタンスターターを押すと奏で始めるエキゾーストサウンドは、意外と低音が利いた、それなりに重量感のあるものだった。4気筒と聞いて抱いていた悪い予感は払しょくされた。

走りだしてもこの4気筒は結構いい音を出す。しかし、走りそのもののイメージは、実はマスタングではなかった。いい悪いは別にして、とにかく挙動が軽快なのだ。正直、重さというものをまるで感じない。それに2500rpmから4500rpmまでにわたって生み出される320lb.-ft.(434Nmあるいは44.3kgmに相当)の最大トルクは、本国仕様には設定される3.7リッターV6エンジンのそれを上回るし、はるかに低い回転域で生み出されるから、踏み込んだ瞬間から鈍足のイメージは皆無なのである。

少し前の空いたハイウェイで加速を試してみる。レブリミットは6500rpm。少なくとも6000rpmまではあっという間に吹け上がる。回転もざらつき感がなくスムーズだ。何よりもトルクがつかさどる領域から、出力がつかさどる領域へのつながり感が良い。正直な話、マスタングというクルマに乗って、初めて回転で引っ張る印象のモデルに遭遇した。これまではV6もV8もトルクでグイグイと押すタイプのクルマだったので、その違いは新鮮だった。

2.3リッター直4ターボエンジンを搭載する「マスタング エコブースト」。フロントグリルのネットがハニカムデザインになるところが5リッターV8搭載車との識別点。
2.3リッター直4ターボエンジンを搭載する「マスタング エコブースト」。フロントグリルのネットがハニカムデザインになるところが5リッターV8搭載車との識別点。 拡大
2.3リッター直4“エコブースト”ユニットは、3.7リッターV6(304ps)より強力な314psを発生する。
2.3リッター直4“エコブースト”ユニットは、3.7リッターV6(304ps)より強力な314psを発生する。 拡大
エンジンのスタート/ストップボタンはセンターパネルの下方、4連トグルスイッチの左隣にある。(写真=中村孝仁)
エンジンのスタート/ストップボタンはセンターパネルの下方、4連トグルスイッチの左隣にある。(写真=中村孝仁) 拡大
ステアリングを握る筆者。
ステアリングを握る筆者。 拡大

まずは来春、エコブーストから

ハミングバードネストに向かうワインディングロードは少々小石が浮いているものの、ハンドリングを試すには絶好の場所。マニュアルモードに切り替えて少し攻めてみた。そういえばフォードのクルマが、ちゃんとしたパドルシフトを装備するのはこれが初めてである。シフトフィール、ダウンシフトのタイミングなど、抜群とは言わないまでも十分に及第点を付けられる。

ハンドリングで何より印象的だったのは、S字コーナーなどでステアリングを切り返すと体感できるスムーズな荷重移動だ。それに旋回時の踏ん張り感。やはりリアが独立懸架になったことは大きなメリットを生んでいる。もちろん乗り心地にも効いている。

一方のV8モデルは問答無用のパワーでアメリカンマッスルを体験できるが、こちらは先代モデルを改良した印象が強く、しかもワインディングロードを食す機会もなかったため、今回は新しさを発見するまでには至らなかった。

そんな新型の日本市場への導入スケジュールだが、いつもならアメリカの発表から1年遅れが通例であるものが、今回は何とアメリカに遅れることわずか2週間で発表された。異例の早さである。しかも導入は2015年の2月ごろと、これまた異例の早業だ。

最初に導入されるのは、今回試乗したのと同じ2.3リッターエコブーストを搭載したAT。それも50周年のアニバーサリーエディションだ。とはいえ、アメリカで発売されているそれとは厳密には異なり、日本独自の仕様となる。販売は限定350台。ハンドル位置は左である。冒頭に記した通り、右ハンドルはまだテストが始まったばかりで、正式には「2016年モデル」での導入ということになりそう。具体的には、2015年10月が予定されている。またこのタイミングで、V8エンジン搭載車とコンバーチブルも導入される。それと同時に左ハンドルの設定がなくなり、日本仕様はすべて右ハンドルとなる予定である。

(文=中村孝仁/写真=中村孝仁、フォード・モーター・カンパニー)

5リッターV8エンジンを搭載する「マスタングGT」。フロントグリルの両端に、縦方向の桟(さん)が入る。
5リッターV8エンジンを搭載する「マスタングGT」。フロントグリルの両端に、縦方向の桟(さん)が入る。 拡大
441psと55.3kgmを発生する5リッターV8ユニット。
441psと55.3kgmを発生する5リッターV8ユニット。 拡大
スピードメーターには160mph(内側のkm/h表示では260km/h)まで刻まれている。
スピードメーターには160mph(内側のkm/h表示では260km/h)まで刻まれている。 拡大
「マスタングGT」のリアビュー。テールエンドの中央に「GT」と記される。一方、「マスタング エコブースト」では、ここに“ギャロッピングホース”マークが入る。
「マスタングGT」のリアビュー。テールエンドの中央に「GT」と記される。一方、「マスタング エコブースト」では、ここに“ギャロッピングホース”マークが入る。 拡大
フォード・マスタング エコブースト
フォード・マスタング エコブースト
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フォード・マスタング エコブースト(FR/6AT)/マスタングGT(FR/6AT)【海外試乗記】の画像 拡大

テスト車のデータ

フォード・マスタング エコブースト

ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4783×1915×1382mm
ホイールベース:2720mm
車重:1598kg
駆動方式:FR
エンジン:2.3リッター直4 DOHC 16バルブ ターボ
トランスミッション:6段AT
最高出力:314ps(310hp)/5500rpm
最大トルク:44.3kgm(320lb.-ft.)/2500-4500rpm
タイヤ:(前)255/40ZR19 96Y/(後)255/40ZR19 96Y
燃費:25MPG(約10.6km/リッター)(EPA 複合モード)
価格:--円/テスト車=--円
オプション装備:--

テスト車の年式:2014年型
テスト開始時の走行距離:--km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター
参考燃費:--km/リッター

フォード・マスタングGT
フォード・マスタングGT
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フォード・マスタングGT

ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4783×1915×1382mm
ホイールベース:2720mm
車重:1691kg
駆動方式:FR
エンジン:5リッターV8 DOHC 32バルブ
トランスミッション:6段AT
最高出力:441ps(435hp)/6500rpm
最大トルク:55.3kgm(400lb.-ft.)/4250rpm
タイヤ:(前)255/40ZR19 96Y/(後)255/40ZR19 96Y
燃費:19MPG(約8.1km/リッター)(EPA 複合モード)
価格:--円/テスト車=--円
オプション装備:--

テスト車の年式:2014年型
テスト開始時の走行距離:--km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター
参考燃費:--km/リッター

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