フォード・マスタング 50 YEARS EDITION(FR/6AT)
息づく野生馬のDNA 2014.12.23 試乗記 アメリカを代表するスペシャリティーカー「フォード・マスタング」の新型が日本に上陸。6代目のギャロッピングホースがどんな走りを見せるのか、ダウンサイジングターボエンジンを搭載した限定モデルを試した。まずは50周年記念の限定モデルから
1964年のデビューから50年目に登場した6代目マスタングには、5リッターV8、3.7リッターV6、そして新しい2.3リッター4気筒“エコブースト”の3つのエンジンがある。2015年後半に発売が予定されている日本仕様は、V8とエコブースト。ボディーは、クーペあらためファストバックとコンバーチブルが選べる。
今度のマスタングは、初めて海外市場に打って出るのが大きなニュースで、来る日本仕様は右ハンドルになる。だが、せっかく午年(うまどし)にモデルチェンジしたマスタングをそんな悠長に待っていられない(?)というファンのために、ひと足早く上陸するのが、この「50 YEARS EDITION」(465万円)である。
このクルマはファストバックボディーにエコブーストを搭載した左ハンドルの北米仕様ほぼそのもの。トランクリッドには大きなギャロッピングホースの50周年記念エンブレムが付く。限定350台のこれも発売は2015年春だが、米本国以外では世界最速のタイミングで開かれた試乗会で早速チョイ乗りをさせてもらった。試乗車はすべて空輸でお取り寄せ。ナンバーこそ付いているが、日本語版トリセツはまだできていない。
エコブーストのパワーに不足なし
新型マスタングの興味の焦点は、アメリカン・マッスルカーに4気筒はありか!? ということだろう。
チョイ乗り試乗の結論を言うと、パワーに不満はない。トーボードが深く、ペダルトラベル量の大きいアクセルを穏やかに踏む限り、ウズウズするような力感があるわけではない。だが、オープンロードに出て右足を深く踏み込めば、加速の迫力は十分だ。箱根ターンパイクの急坂でもDレンジのままグイグイ加速する。
パドルシフト付き6段ATに組み合わされる直噴2.3リッター4気筒DOHCターボは、最高出力314ps、最大トルクは44.3kgmを発生する。日本ではこの新型エコブーストが3.7リッターV6(309ps、38.7kgm)に取って代わるエンジンという位置づけだから、スペック的にも申し分ない。
ボア×ストローク=87.5×94.0mmというロングストロークユニットということもあり、特にシャープな回転フィールを持つわけではないが、6000rpm近くまで引っ張ると、V8エンジンのトップエンドみたいな音を発する。4気筒のダウンサイジングターボにも「マスタングサウンド」を吹き込んだという入念な音づくりの成果と思われる。
気分はスティーブ・マックイーン?
足まわりはリアにマルチリンクを採用し、ついに四輪独立懸架になった。ロワーアームやナックルアームなどをアルミ化したことで、旧型のリジッドリアアクスルよりバネ下重量もかなり削減されたはずである。
日本向け新型マスタングには、工場オプションの「パフォーマンスパッケージ」が標準装備される。より加速重視型のファイナルレシオ、専用ラジエーター、シャシー関係では専用チューンのサスペンション、19インチホイール+255/40ZR19サイズのタイヤ、大径ブレーキローター&キャリパーなどがその内容だ。
この日はあいにくの雨。ピレリPゼロのランニングインがまだ不十分だったのか、けっこうテールハッピーである。
新型にはエンジン/変速機の制御、トラクションコントロールの介入度などが4段階に変わるドライブモード切り替えが付いた。今や一般的な機構だが、トグルスイッチで入力させるところがちょっとカッコイイ。
おもしろいのは、ミューの低い路面だと、ノーマルモードでもその場旋回のようなターンをやらせてくれることである。トラクションコントロールがかなり自由放任なのだ。だれでも「ブリットごっこ」ができる。これもマスタングのDNAか。
4気筒でもやっぱり「アメ車」
箱根から下り、高速道路を少し走ってみようと、西湘バイパスに寄り道した。時間がないので、最初の出口で降りると、なんと反対車線には入り口がなかった。時計とにらめっこをしながら、混んだ一般道を戻る。
そんな状況でも、マスタングは無用にドライバーをアセらせない。なぜかは知らぬが、「ま、いいじゃないの」的オーラを出して、人を癒やしてくれるのは、やはりアメリカ車である。高効率な4気筒エコブーストに変わっても、そこは変わらない。
試乗車の「コンペティションオレンジ」は30台の限定色。全長4.8m、全幅1.9m超の大柄なクーペボディーに凄味(すごみ)を与えるいい色だ。
新型はクーペの名前をやめて、初代モデルの呼称「ファストバック」を復活させた。オリジナルマスタングのデザインアイコンがインストールされた後ろ姿を見ていると、70年代の「トヨタ・セリカ リフトバック」にそっくりだなあと思った。もちろんセリカLBがマスタングのファストバックスタイルをいただいたわけだが。
(文=下野康史<かばたやすし>/写真=河野敦樹)
テスト車のデータ
フォード・マスタング 50 YEARS EDITION
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4790×1920×1380mm
ホイールベース:2720mm
車重:1660kg
駆動方式:FR
エンジン:2.3リッター直4 DOHC 16バルブ ターボ
トランスミッション:6段AT
最高出力:314ps(231kW)/5500rpm
最大トルク:44.3kgm(434Nm)/3000rpm
タイヤ:(前)255/40ZR19 98Y/(後)255/40ZR19 98Y(ピレリPゼロ)
燃費:25MPG(約10.6km/リッター、EPA 複合モード)
価格:465万円/テスト車=470万6376円
オプション装備:メーカーオプションなし ※以下、販売店オプション ETC車載器(1万3392円)/フロアマット(4万2984円)
※燃費は本国仕様の参考値。
テスト車の年式:2014年型
テスト開始時の走行距離:3345km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター
参考燃費:--km/リッター
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下野 康史
自動車ライター。「クルマが自動運転になったらいいなあ」なんて思ったことは一度もないのに、なんでこうなるの!? と思っている自動車ライター。近著に『峠狩り』(八重洲出版)、『ポルシェよりフェラーリよりロードバイクが好き』(講談社文庫)。
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