アウディA4オールロードクワトロ(4WD/7AT)
「いいクルマ」としか言いようがない 2014.12.11 試乗記 2010年の登場以来、限定車として発売されては完売を繰り返してきた「アウディA4オールロードクワトロ」が、いよいよカタログモデルに昇格した。“道を選ばぬ万能車”の実力を確かめるために、東京~箱根のワンデイツーリングに出た。いざスタメン入り
A4オールロードクワトロがレギュラーモデルになった。2010年から毎年、限定輸入され、そのつど完売御礼ですでに1000台が売れた。これならイケると(?)、「A6オールロードクワトロ」ともどもの常備モデル入りである。
「しいていうなら、ライバルはA4オールロードクワトロです」と、先日、「レガシィ アウトバック」の試乗会でチーフエンジニアが言っていた。新型レガシィはついにツーリングワゴンをやめてしまったから、シリーズ内の立ち位置はA4オールロードクワトロとは違う。そもそも、価格がアウトバックは半値である。2倍の値段のクルマをライバル視しているのだから、日本車はおくゆかしい。
話を戻すと、「A4アバントクワトロ」にちょっと高い車高とSUVイメージを与えたのがオールロードクワトロである。最低地上高はプラス40mmの160mm。オーバーフェンダー風の処理でボディー全幅は15mm広がった。
見た目でいちばん違うのは後ろ姿で、オールロードのリフトアップしたテールにはストーンガードとディフューザーを兼ねたようなパネルが貼られる。
7段のSトロニックに組み合わされるエンジンはアバントクワトロと同じ直噴2リッター4気筒ターボ。チューンは若干高く、オールロードクワトロにはプラス13psの224psユニットが搭載される。
高級サルーンもかくやの乗り心地
試乗車のステアリングをあずかったのは夜だった。4枚のドアを開けたサイドシルには、“allroad quattro”と記したアルミのプレートが貼ってあるが、暗くて気づかなかった。つまり、外観の特徴も含めて、オールロードクワトロであることをそう意識せずに走り始めて、まず驚いたのは高級サルーンを思わせる乗り心地のよさである。
車高をリフトアップすると、突っ張ったように堅くなる例がままあるのに、オールロードにはそれがない。ベースのアバントクワトロより明らかにソフトで軽快だ。
標準のホイールセットは18インチ+245ヨンゴーだが、試乗車はオプションの19インチ+245ヨンマルの組み合わせ。であるにもかかわらず、タイヤのゴツゴツ感が這(は)い上がることもない。
装備表によると、“ノーマルサスペンション”のアバントクワトロに対して、オールロードは“ラフロードサスペンション”と記してある。だが、ラフロード用を匂わせるのは4cm高い車高だけで、乗り心地は終始、レッドカーペットの上を行くように滑らかだ。こんなに滑らかだと、ラフロードへ踏み入れる気持ちが萎(な)えてしまわないか。もうちょっとSUVっぽく、ワイルドとはいわないまでもスポーティーな乗り味に仕立ててもいいような気がしないでもないが、そうしないところがアウディ流なのだろう。
どこまでも仕立てよし
オールロードクワトロの車重は1770kg。アバントクワトロより40kg重いせいか、プラス13psをもってしても、動力性能はアバントクワトロに一歩を譲る。0-100km/h加速で言うと、6.6秒に対して6.8秒だ。とはいえ、ゼロヒャク6秒台といえば、どこへ出しても恥ずかしくない駿足(しゅんそく)ワゴンである。
100km/h時のエンジン回転数は7速トップでわずか1800rpm。フェザータッチのパドルでシフトダウンしてゆくと、3速まで落として、回転計の針が5000rpm近くまで上がったところで初めてエンジンの音がはっきり聴こえる。それくらいこの2リッター4気筒ターボは静粛性も高い。
最近のアウディの例にもれず、ステアリングは爽やかに軽い。オールロードクワトロにはアウディお得意の“ドライブセレクト”は付いていないため、操舵(そうだ)力を任意に重くすることもできない。乗り心地が滑らかで軽やかなことはすでに書いたとおりだ。オフロードもイケる車重1.8t近いステーションワゴンなのに、肩をいからせた重々しさとは無縁だ。どこまでも実に仕立てのいいクルマである。
東京~箱根のワンデイツーリングを中心に約390kmを走って、燃費は8.9km/リッターだった。すいたワインディングロードでは、無慈悲に走った。この速さと快適さを考えると、ワルくない燃費だと思う。
およそ欠点が見つからない
高速巡航中はずっと“アクティブレーンアシスト”のお世話になった。白線内走行をキープする自動操舵の腕前はかなりのもので、違和感もない。その点ではメルセデスのシステムに比肩する。てっきり標準装備かと思ったら、アダプティブ・クルーズ・コントロールなどとセットになった15万円のオプションだった。
試乗車にはパノラマサンルーフが付いていた。後席の天井まで届く開口部の大きなグラスルーフで、前3分の2はチルトと開閉がきく。運転席頭上のダイヤルを回すと、段階的に細かく開閉できるスイッチはふた昔前にアウディが最初に始めたもので、とても使いやすい。しかし、これも25万円のオプション。617万円もするクルマなのに、細かく取るなあ、なんていうのはビンボー人のやっかみだろうか。
でも実際、ケチをつけたくなるのはそんなことくらい。クルマそのものに関しては、欠点が見つからなかった。「いいクルマ」としか言いようがない。
高いといっても、アバントクワトロとの価格差は大きくなく、51万円差に収まる。どうせならオールロード、という需要が見込めるからこそのレギュラーモデル化だろう。
(文=下野康史<かばたやすし>/写真=高橋信宏)
テスト車のデータ
アウディA4オールロードクワトロ
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4720×1840×1495mm
ホイールベース:2805mm
車重:1790kg
駆動方式:4WD
エンジン:2リッター直4 DOHC 16バルブ ターボ
トランスミッション:7段AT
最高出力:224ps(165kW)/4500-6250rpm
最大トルク:35.7kgm(350Nm)/1500-4500rpm
タイヤ:(前)245/40ZR19 98Y/(後)245/40ZR19 98Y(ダンロップSP SPORT MAXX GT)
燃費:13.4km/リッター(JC08モード)
価格:617万円/テスト車=726万円
オプション装備:パノラマサンルーフ(25万円)/バング&オルフセン サウンドシステム(13万円)/アルミホイール 5スポークVデザイン マットチタンルック ポリッシュト 8J×19(アウディスポーツ)(18万円)/アシスタンスパッケージ(15万円)/レザーパッケージ/デコラティブパネル ビューフォートオーク ライトブラウン(38万円)
テスト車の年式:2014年型
テスト開始時の走行距離:1429km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(2)/高速道路(6)/山岳路(2)
テスト距離:386.6km
使用燃料:43.4リッター
参考燃費:8.9km/リッター(満タン法)/9.0km/リッター(車載燃費計計測値)

下野 康史
自動車ライター。「クルマが自動運転になったらいいなあ」なんて思ったことは一度もないのに、なんでこうなるの!? と思っている自動車ライター。近著に『峠狩り』(八重洲出版)、『ポルシェよりフェラーリよりロードバイクが好き』(講談社文庫)。
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