第272回:巨匠との思い出 ~自動車評論家 徳大寺有恒さんをしのんで(前編)
2014.12.25 エディターから一言クルマ好きならずとも広く知られた、自動車評論家の徳大寺有恒さんが、2014年11月7日にこの世を去りました。取材や私生活を通して長年親交のあったふたりのライターが、思い出深い〝巨匠の素顔”を紹介します。
食べるのも大好き
沼田 亨(以下「沼」):徳大寺さんが亡くなってひと月とちょっとたつけど、どう? 松本さんは、それこそしょっちゅう一緒に試乗会や発表会に行ってたから。
松本英雄(以下「松」):ちょっと不思議な感じですね。四十九日もこれからだというのに、亡くなったのがもっと前の出来事だったような気がします。
沼:最後に会ったのはいつ?
松:亡くなるちょうど1週間前。いつもの調子でいっしょに取材に行っただけに、知らせを受けたときには耳を疑いました。
沼:そりゃびっくりだよねえ。ところであらためて聞くけど、そもそも徳大寺巨匠とは、いつごろからの付き合いだったの?
松:90年代の後半から。最初は『NAVI』の巨匠の連載のために、担当編集からナローの「ポルシェ911」の調達を頼まれたので、僕が知り合いから借り出して取材に同行したんですよ。そのとき箱根まで巨匠を乗せたんだけど、「キミは運転がうまいな」と褒められて。
沼:たしかに松本さんは運転がうまいけど、中でも古いポルシェは得意だもんね。好きでナローや「356」に乗ってたから。
松:恐縮です。で、帰りに横浜で食事をしたんだけど、寄った店がたまたま子供の頃に親に連れられてよく行ったところだったので、昔好きだったハンバーグサンドを、メニューを見ないで注文したんですよ。すると巨匠もそれが好物だったようで、「ここのハンバーグサンドを知ってるなんて、キミとは気が合いそうだな」と言われて。
沼:それからずっとというわけだ。
松:そう。その2、3日後に「試乗会にいっしょに行かないか?」と電話がかかってきて。それから十数年、いろんなところへお供しました。最初のうちは、僕を試乗会に呼んでくれるメーカーやインポーターは少なかったので、巨匠のおかげでいろいろなクルマに乗ることができました。感謝しています。
沼:そのうちに先方から「徳大寺さんを連れてきてください」と、松本さんに連絡がくるようになって。あなたのことをマネージャーや秘書と勘違いしている人も少なくなかったよね。(笑)
松:そうなんですよ。「先生のスケジュールを……」とかいう連絡がきたり。亡くなったときも知らない人から電話がいっぱいかかってきて、びっくりしました。
沼:そうした仕事以外に、プライベートでもお付き合いがあったでしょ?
松:ええ。よく食事には行きましたね。
沼:巨匠も松本さんも食通だから。
松:僕も食べるのは好きだけど、さすがに巨匠はうまい店をよくご存じでしたね。飾り気のない街のそば屋から、高級レストランや料亭まで。知る人ぞ知る高級店で巨匠が丁重に扱われているのを見て、やっぱりこの人はダテに金を使ってないなと思いましたよ。
沼:そのいっぽうで、そば屋のオバちゃんとも楽しそうに話をしてたよね。われわれと取材に出掛けた先で食事をする際には、どんなところでも絶対に文句を言わなかったし。ファミレスが多かったけれど、日産の古いクルマを収めた座間事業所の記念庫に行ったときは、案内してくれた担当者に頼んで社員食堂で昼ごはんを食べさせてもらったじゃない?
松:ありましたねえ、そんなこと。まわりの、日産の社員の方々が不思議そうな目で見てた。向こうからすりゃ、迷惑な話ですよね(笑)。
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