第89回:ロシア、メキシコの娯楽作から感動実話まで
冬休みに観たいクルマ映画DVD
2014.12.27
読んでますカー、観てますカー
ロシア製ナイトライダーは空を飛ぶ
『ナイトライダー』というと、ナイト2000こと人工知能を持った「ポンティアック・トランザム」が活躍するTVシリーズを思い出すかもしれない。しかし、あれはKnight Riderで、この映画はNight Rider。ロシア産のSF映画である。
それにしてもダサいタイトルを付けたものだが、ロシア語の原題を見たら “黒い稲妻”だったからこれでもまだマシになったほうである。主人公のディマ(グレゴリー・ドブリギン)は貧乏学生で、面白くもない日常を過ごしている。超かわいい新入生のナスティヤに心引かれるが、彼女は「メルセデス・ベンツCクラス」に乗る金持ちの友人になびいてしまう。
落ち込むディマだが、父親が誕生日プレゼントにクルマを買ってくれた。しかし、それは今や誰も乗らない旧ソ連時代の「ヴォルガ」だった。がっかりしながらも運転していると、ボログルマが突然空を飛ぶ。このクルマには冷戦下で研究が進められていた極秘テクノロジーが組み込まれていたのだ。
ヴォルガでモスクワの空を飛び回っていると、彼はたびたび悪事の現場に遭遇する。悪者どもに制裁を加えて正義を行う彼は“黒い稲妻”と呼ばれ、人々から英雄視される。しかし、彼は悪の組織から狙われるようになり……。お気づきのように、ストーリーはまんま『スパイダーマン』である。
それでも結構楽しめる作品に仕上がっていたのは、いつもアメリカの青年の悩みばかりを見せられていたのに対し、ロシアのさまざまな事情は新鮮に感じられたからかもしれない。ヴォルガなんて、ほとんど見たことないし。拾い物は、ナスティヤ役のエカテリーナ・ヴィルコワちゃん。正統派ロシア美人というのは震えるほどいい、ということを再確認した。
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マチェーテ、トラックでメキシコを駆ける
映画が始まる前に、まず『マチェーテ・キルズ・アゲイン・イン・スペース』の予告編が流される。『マチェーテ・キルズ』の続編という設定で、確かにラストでは宇宙に向けて飛び立つシーンが入っている。でも、だまされてはいけない。そもそもこのシリーズは、予告編からノリで生まれてしまったという経緯がある。
2007年のクエンティン・タランティーノ作品『グラインドハウス』に架空の作品『マチェーテ』の予告編が入れられていて、あまりに面白そうということで2010年に本編が製作されてしまった。岩石顔のダニー・トレホが主人公のマチェーテを演じ、山刀を振り回して悪党を殺しまくる。そりゃあ面白くないわけがない。
今回は、アメリカ大統領から依頼されたマチェーテが、世界戦争を引き起こそうとしている武器商人と戦う話だ。大統領役はチャーリー・シーン、武器商人役はメル・ギブソンと両方ともいわくつきの俳優だから、どちらにも正義はありそうにない。
前作に引き続き、脇を固める俳優陣も無駄に豪華。ジェシカ・アルバ、ミシェル・ロドリゲスは前回から引き続き出演している。ただ、出てきたと思ったらすぐ死んでしまうというぜいたくな使い方をしていたりするので、まばたきはできない。
キューバ・グッデン・ジュニア、レディ・ガガ、アントニオ・バンデラスの3人に共通点を見いだすのは難しい。しかし、作品の中ではなぜかとても濃い関係にある。自動車業界からも有名人が出演しているのでお見逃しなく。電気方面で活躍している彼である。
メキシコからアメリカ国境を越える話なので、古いトラックやバンがたくさん登場する。「GMC」や「シボレー」はもちろん、「インターナショナル・ハーベスター」なんていう珍品も走る。レディ・ガガは、「フォルクスワーゲン・ヴァナゴン」で激走していた。
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善人ステイサムはF-150に乗る
『ワイルド・スピード』第7作が2015年4月17日に公開されるのに向けて、映像のチラ見せが始まっている。悪そうな顔をのぞかせているのが、前作のラストでひどいことをしたジェイソン・ステイサムだ。ヴィン・ディーゼルとどんなバトルを繰り広げるのか楽しみだが、この『バトルフロント』では心優しいお父さん役である。
最初の登場シーンでは長髪をなびかせていたので、誰だかわからなかった。フィル(ステイサム)はアメリカ麻薬取り締まり局(DEA)の捜査官で、潜入捜査をしていたのだ。ハゲキャラの彼がロン毛だと、確かに身分がバレにくい。『ハミングバード』でも同じ登場の仕方だったから、これはすでにジェイソン・ステイサムあるあると言ってもいいかもしれない。
フィルは9歳の娘を育てるため、亡き妻の故郷であるルイジアナ州の田舎町に移住する。自然の中でのびのびと生活させたかったのだが、子供同士のトラブルが原因で、地元のチンピラに狙われるようになる。それが麻薬組織にまで飛び火し、DEA上がりの彼は危険な状況に陥ってしまう。
製作と脚本はシルベスター・スタローンで、彼がステイサムを主役に指定した。自分で演じるのはさすがに無理があり、『エクスペンダブルズ』仲間の彼なら大役を果たせると信じたのだろう。チンピラ役は、ジェームズ・フランコ。『スプリング・ブレイカーズ』ではぶっ飛んだヤクの売人をやっていたが、今回は気の小さい小悪党だ。ウィノナ・ライダーは汚れビッチ役でいい味を出している。
登場人物が乗っているクルマが、それぞれ見事に生活レベルや性格を反映している。「シボレー・トラック」「フォード・ブロンコ」「トヨタRAV4」などで、人物とのマッチングを確かめてほしい。フィルはもちろん、王道の「フォードF-150」で男らしさ満開だ。
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キャデラックより、命が大切
マッチョで有名なマシュー・マコノヒーだが、この『ダラス・バイヤーズクラブ』ではガリガリで貧弱な体をさらしている。なんと21kgも体重を落としたというからアッパレだ。HIV感染で余命30日を宣告された男を演じるため、衰弱した肉体を作る必要があった。
実話に基づいた作品で、マコノヒーが演じているのはロン・ウッドルーフというダラス在住の電気技師。酒と女に明け暮れる粗暴な生活を送っている典型的なロデオ・カウボーイ気質だ。ケガをして入院した際に血液検査を受け、HIV陽性だと知らされる。当時はエイズはゲイの病気だというのが一般的な受け止め方で、女好きのウッドルーフは信じない。根っからのゲイ嫌いでもある。
しかし、調べるうちに異性との性交渉でも感染することを知り、なんとか薬を手に入れて助かろうとする。未承認の薬は処方してもらえず、彼はボロい「ダッジ・モナコ」に乗ってメキシコに行き、違法な薬をトランクに満載して戻ってきた。
薬を求める患者は多く、ウッドルーフは世界中を駆け回って薬を集め、会員制で分け合う組織を作り上げる。商売としても成功し、彼の乗るクルマは「キャデラック・エルドラド」に変わっていた。しかし、法の秩序を乱す行為は政府から目の敵にされ、次第に追い詰められていく。
クルマが豪華になったところで、命を落とせば何の意味もない。彼はキャデラックに執着してなどいない。身勝手で偏見に満ちていた男が自分の利益を捨て、大嫌いだった同性愛者のコミュニティーに共感の目を向けるようになっていった。
(文=鈴木真人)
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鈴木 真人
名古屋出身。女性誌編集者、自動車雑誌『NAVI』の編集長を経て、現在はフリーライターとして活躍中。初めて買ったクルマが「アルファ・ロメオ1600ジュニア」で、以後「ホンダS600」、「ダフ44」などを乗り継ぎ、新車購入経験はなし。好きな小説家は、ドストエフスキー、埴谷雄高。好きな映画監督は、タルコフスキー、小津安二郎。
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