第4回:長距離ドライブで実力を試す
小さくてもしっかり 2015.01.15 ボルボV40の“いま”を知る ボルボV40 T4 SE(FF/6AT)ボルボのスタイリッシュなハッチバック「V40 T4 SE」。足まわりを中心にリファインされたという、最新型の実力は? “ミスター・テスター”笹目二朗が蒲郡へのロングドライブで試した。
800kmのドライブへ
ボルボに限らず、同じモデルならば、派手な高性能仕様の方が話題には事欠かない。一般的なユーザーは、装備品も全部そろった高価格モデルを買った方が、後で追加するより面倒がないと思う。
そんな買い方ができる状況にある人は幸せだ。でも、職業柄多くのクルマに接してきた者としては、アレは要らない、コレはあったほうがいいなどと選別したくなる装備の例もある。実際に自分で買う、買わない(買える、買えない)とは別の話だとしても、そうしたことを考えるだけでも楽しく過ごせる。
現行型のV40に関して言えば、「もしボルボを買うならコレだな」と、まずこのカタチで登場した時に思った。スタイリングのまとまりがいい。やや“若向き”と感じられるが、シニアにとっても刺激があっていい。サイズも、大き過ぎないのが好ましい。エンジンは一番小さい排気量の1.6リッターで十分だ(6段MTの予定はないのかな……)。
内装はもっと簡素なものでいい、タイヤは細いほうがいい、などと考えると、T4というエントリーモデルが最も魅力的に思えたものだ。
その最新式となる、2015年モデルのV40で2日間の旅に出るとしたら、どこへ行こうか? 新たにチューンされた足まわりの乗り心地を試すには、冬タイヤが必要でない道がいい。この冬季にノーマルタイヤでの移動が前提となると――はるか遠方でなくともまだ行ったことのない景勝地へと考え、三河湾に面した蒲郡・竹島周辺を訪ねることにした。
実用的なチューンがポイント
概要から入ろう。一般的には、欧州車の中でもフランス車は、走行中の姿勢変化が少なくフラットで、乗り心地のいいものが多い。ドイツ車は本国の路面がよく管理されていることもあり、サスペンションストロークは短くとも十分で、極力動きの少ないまま空力特性上有利な姿勢を維持しようとする。だから、日本の路上では「硬い」と評されることも多い。
北欧車はそのどちらでもなく、中間的というか“いいとこ取り”のような性格を持っている。
ただ、日本の市場は特殊だ。多くの輸入車インポーターは、傾向として、高性能モデルにはドイツ的な味付けを好んで採用する。フランス車とてドイツ車を思わせるクルマが増えた。あえて高性能車は要らない、フツウに使う実用車でもっと乗り心地のいいクルマが欲しい……と考えるユーザーが少なからず存在するにもかかわらず、これまでは意にそぐわない仕様も多かった。仕様を決めるにあたっては、メーカーよりも販売店の志向が反映されることが多々あると思われるが、現地仕様の標準車などは、もっと実用的なチューンとされている例が多い。
さて、ボルボV40 T4に目を移そう。今回試乗したのは、1.6リッターエンジンを搭載するT4の中でも装備の充実したSEというモデル。単なる廉価版というわけではない。特に2015年モデルでは、乗り心地の改善が最大のポイント。サスペンションが「ダイナミック・シャシー」と呼ばれるややスポーティーな仕様から、快適性に配慮した「ツーリング・シャシー」になっている。
安全装備にも変化が見られる。ボルボというのは、これまでも3点式シートベルトや自動ブレーキの開発に積極的に取り組んできたように、安全性の権化みたいなもの。仕様や価格によってそれらの安全装備に差をつけることは日ごろの企業信条からして許せなかったのだろう。ボルボが「IntelliSafe10(インテリセーフ・テン)」と呼ぶ10種類以上の運転支援システムは全車に標準装備されている。このV40 T4 SEはリアビューカメラやカーナビも標準となり、価格は365万円へと少し上がった。
小手先のリファインではない
V40 T4 SEの履く50タイヤは、ハイトとしては今や高いほうであり、乗り心地にも貢献する。それでいて、決して操縦安定性を犠牲にしてはいない。サーキットなど極限状態でのグリップはともかく、一般公道で破綻をきたすようなことはない。17インチアルミホイールのリム幅を7.5Jから7.0Jに変更するなどして、回転半径を5.7mから5.2mへと縮めたのも価値ある改良点だ。もともとボルボは、FRの時代においても“小回りの利くクルマ”という点で定評があった。
ベーシックモデルT4の205/55R16タイヤはゴム部分のハイトが高く、リム径は小さく重量も軽いため、目地段差などに対するハーシュネスは他の仕様に比べ、格段に軽く感じられた。その点を個人的に気に入っていたのだが、今回のT4 SEは、「操縦性もココまでは欲しい」というレベルを守りつつ、一番ユーザーが気にするであろう見た目のよさなどを考慮し、最低でも17インチは確保しておきたかったのだろう。
タイヤ径を上げるというのは、見た目の流行だけによるものではない。ロールセンターの高さを上げてクルマの重心高に近づけることは、幾何学的に横力に対してロールしにくい位置関係を作り出す。これにより、バネやスタビライザーを固めることなくロールに対応でき、乗り心地にも貢献するのだ。
一方、インチアップするとバネ下からの入力も大きくなるため、対策も必要になる。単純にバネレートやダンパー減衰力を見直す程度では許容しきれない。サスペンションアームや取り付け部各所の強化も必要だ。単にブッシュを固めたくらいでは済まないし、大きくなったショックをいなすためのコンプライアンスをとり過ぎるとグニャグニャした動きになってしまう。「ハブボルトが合うから」「ホイールハウスが許容するから」といって無理やり大径タイヤをおさめた、いい加減な変更例も街で見かけなくもない。全部間違っているわけでもないがやり方がずさんなのだ。
ボルボはその辺のところをキチンとクリアしている。結果的に、他の高性能モデルに比べて、はるかに快適な乗り心地になっている。T4の16インチがもたらす当たりの柔らかさは捨てがたいところだが、例えば今回の試乗においても、蒲郡周辺にある三ヶ根山スカイラインのワインディングを走ってみると、やはり17インチホイールを履いたT4 SEの、足まわりの剛性感には見るべきものがあった。
確かな基本性能
過去のボルボのサスペンションチューンの中ではオーリンズダンパーの伸び側/縮み側の減衰力の比率に面白みもあったが、今回のモデルはその点、無難なところで破綻なくまとめられている。もちろん前提として強固なボディー剛性であるとか、サスペンション系全体の頑丈さが効いているわけだが、バネ下の重さはしっかりと受け止められる。
一部の日本車のように、ボディーの見た目は立派でもアシが貧弱な例はあるが、V40 SEでは嫌な振動がボディーに伝わらず、ドライバーがクルマの動きに遅れを感じることがない。ここでは“スカンジナビア生まれ”の強靱(きょうじん)さを、あらためて知らされることとなった。
強いて要望を言うなら、エアバッグ付きの太いグリップを持つステアリングホイールは、もう少し細身で軽いものにしてほしい。絶対的な重さは(アシスト量でどうにでもなるが)、回し始めの操舵(そうだ)感においてフリクションが大きく感じられてマイナス要因になるし、手の小さな筆者などは握っているだけでも疲労につながる。
もっとも、クルマ自体の取り回しそのものは容易で、オーバーハングの小さいハッチバックボディーはキビキビと軽快な動きをみせる。ヨー慣性でボディーの重さが残る感覚もない。
可倒式の助手席を含め、シートアレンジによっては長尺物も積めるなど、V40はワゴン並みの積載能力を有しており、これ一台でいろいろ使える多用途性も満たす。安全機能はまだ一度も試したことはないが、聞くところによれば「オレに任せろ」式に不自然に介入することはなく、最後のコントロール域までドライバーの意思が尊重されるようになっているらしい。小さなボルボでも大きなボルボと同じレベルで安心感が得られるのは、うれしいことだ。
大人3人に荷物を満載した今回の旅は、燃費には厳しかったようで、11.3km/リッターにとどまった。長旅の割に高速道路区間が少なかったこと、撮影に際して長めのアイドリングが必要になったことも原因だと思う。ちなみに、数年前にほぼ同じ仕様のV40で東京~岡山間を往復したときには、高速道路区間が16.6km/リッター、1640kmの総平均で13.5km/リッターを記録している。
今や燃費については、クルマが動いてない時にエンジンがどれだけ回っているか、あるいは交通環境により加速を伴う発進・停止がどれだけ要求されるかといったところが、大きなマイナス要因である。
クルマ自体の燃費性能はモード燃費など条件設定の確かな数字を信用したほうが正しい比較ができそうだ。ドライブコンピューターなどの数字も正確な例が増えており、今回、満タン法と車載燃費計の計測値は完全に一致した。
(文=笹目二朗/写真=荒川正幸/取材協力=蒲郡クラシックホテル)
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テスト車のデータ
ボルボV40 T4 SE
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4370×1800×1440mm
ホイールベース:2645mm
車重:1430kg
駆動方式:FF
エンジン:1.6リッター直4 DOHC 16バルブ ターボ
トランスミッション:6段AT
最高出力:180ps(132kW)/5700rpm
最大トルク:24.5kgm(240Nm)/1600-5000rpm
タイヤ:(前)205/50R17 93W/(後)205/50R17 93W(ピレリ・チントゥラートP7)
燃費:16.2km/リッター(JC08モード)
価格:365万円/テスト車=433万6000円
オプション装備:パノラマガラスルーフ(19万円)/歩行者エアバッグ(6万2000円)/モダンウッドパネル(2万1000円)/PCC<パーソナル・カー・コミュニケーター>キーレスドライブ(3万1000円)/パークアシストパイロット+パークアシストフロント(5万2000円)/プレミアムサウンド・オーディオシステム(12万円)/レザーパッケージ<本革シート+助手席8ウェイパワーシート>(21万円)
テスト車の年式:2014年型
テスト開始時の走行距離:800km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(3)/高速道路(6)/山岳路(1)
テスト距離:814.7km
使用燃料:72.0リッター
参考燃費:11.3km/リッター(満タン法)/11.3km/リッター(車載燃費計計測値)

笹目 二朗
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