ホンダ・レジェンド 開発者インタビュー
クルマが好き、レジェンドが好き 2015.03.16 試乗記 本田技術研究所 四輪R&Dセンター第8技術開発室 第1ブロック
主任研究員
青木 仁(あおき ひとし)さん
ホンダのフラッグシップセダンのあるべき姿とは? 「スポーツハイブリッドSH-AWD」を携えて復活を遂げた新型「レジェンド」の魅力と、同車に込められた思いを開発者に聞いた。
趣味はもてぎでサーキット走行
――青木さんは、普段はどんなクルマに乗られているんですか?
実は、この5月に納車されるんですよ、新型「レジェンド」。今、来るのを楽しみにしているところです。
――それはおめでとうございます。中身はやっぱり「青木さんスペシャルバージョン」ですか?
いえいえ(笑)。そこはお客さまにお届けするクルマと同じものを、同じように買わせていただきました。「即金で!」と言いたいところですが、5年ローンです。それでも、大事にしていた「インテグラ タイプR」を手放さないといけなかったんですよ。
――タイプRに乗っていたんですか?
はい。「DC2」の後期モデルで、“00spec”と呼ばれているものです。10年くらい前に友人から買い取って、アシを替えたりしてずっともてぎ(ツインリンクもてぎ)で遊んでいました。私はホームサーキットがもてぎなんですけど、DC2の前に乗っていたシビックの時代も含めると、もう17年くらい通っていました。それこそ、もてぎができたばかりの頃からなので、走行クラブの会員ナンバーがむちゃくちゃ若いんですよ(笑)。
でも、自動車税納税のタイミングで、維持費の負担をかみさんに気付かれまして。なにせ、当時のわが家のマイカーは、先代のレジェンドに3.5リッターの「エリシオン」「フィット」、それにタイプRですからね! 自動車税だけでだいたい20万円でしょう(笑)。さすがにかみさんにしかられて、タイプRと、ずっと乗り継いできたレジェンドを手放すことにしたんです。「レジェンドは今回LPLやるし、これを機に新型を買えばいいや」と思って。
――お話をうかがっていると、青木さんは本当にクルマ好きなんですね。最近のホンダのLPLの中では珍しくありませんか? 皆さんクールで、プライベートでもクルマで遊んでいるというようなお話はあまり聞かないんですけど。
そうなんですか? それは調子悪いなあ(笑)。
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
歴代モデルを乗り継いだからこその思い入れ
――先ほど、「レジェンドは乗り継いできた」とおっしゃいましたが、それは初代からずっと?
ええ。初代は父が「息子が働いている会社のフラッグシップセダンなんだから、買うぞ!」といって購入したもので、新型に乗り換えるときに僕が引き取ったんです。それから20~30年でしょうか、ずっとレジェンドを乗り継いできました。だから、会社からこのクルマのLPLをやれと言われた時は、感慨深いものがありましたね。思い入れの深いクルマでしたから。
――レジェンドは時代に応じて性格がどんどん変わってきたクルマですよね? 初代は「ホンダが出したラージサイズセダン、しかもFFの!」ということで、あの時代、すごく人気を集めていましたが。
そうですね。ただ、ドライバーズカーであるというところ、そこだけはずっと変わっていません。やはりホンダが出すんですから、走りに軸足を置いたクルマであるべきだと。そこを究めようと、先代レジェンドに搭載したのが「SH-AWD」です。今回の新型については、それから10年もお客さまをお待たせしてしまったわけですから、一歩も二歩も、先を目指さなければいけませんでした。
技術開発が進めば、既成のものはどんどん古くなってしまいます。だからこそ私たちは、休まずに新しいものを提供していかなければなりません。やはり、このクラスのクルマを買われるお客さまは新しいものが好きですから。しかも、ただ単純に予想通りのことをやってしまうと、お客さまを「なんだ」と落胆させてしまう。「あ、今度はこういう手で来たか」と思われる、そういうものを用意しなければいけません。だから今回は、「スポーツハイブリッドSH-AWD」なんです。
普通、後ろにモーターを2基積んで、左右個別に駆動と発電を行うなんて考えないじゃないですか。私も最初に試作車に乗ったときは「目からウロコ」で、これは行ける! と思いましたね。あまりにもすごいクルマだったんで、「ものになるのかな?」って心配もしていたんですが(笑)。
基準は「お客さまに提供する価値があるか」
スポーツハイブリッドSH-AWDについては、モーターによる制御をどこまで主張するか、あるいは隠すかでも苦労しました。「こんな制御やっているんだよ」というのを前面に押し出すと、分かりやすくなる半面、お客さまにとって違和感になってしまう。かといって、主張がないと(制御を)やっているのかやっていないのかが分からなくなってしまう。そこをうまくバランスさせるのがすごく難しいところでした。
――確かに、本当に自然だったら気が付かないですしね。
はい。いろいろな制御のクルマに乗って、「どれが一番お客さまに提供する価値があるものなのか?」を議論しました。その中で絶対譲ってはいけないと考えたのが「オン・ザ・レール感覚」です。自分の思い描いたラインで走れるという感覚を、違和感なく感じていただけること。「意のまま」という言葉をトップに掲げてやってきました。
――極論ですけど、クルマの味付けは制御次第でどうとでもなってしまう部分がありますよね? 回生ブレーキをもっと強くしたり……。
そうなんです。アクセルをちょっと離すだけでブレーキを強烈に利かせるような過激な設定も可能です。ただ、あのクラスのお客さまに本当にそれが望まれているかというと、そうじゃないと思うんですよね。
普段はハンドリングにたけたドライバーズカーとして運転を楽しみ、リラックスして走りたいときは、外と遮断された静かな空間で、例えばいい音楽を聞きながら、ゆっくり快適に移動する。そういった、相反する性格を併せ持つ二面性も、新型「レジェンド」の魅力であると考えています。
(インタビュー=下野康史<かばたやすし>/まとめ=webCG 堀田剛資/写真=田村 弥、本田技研工業、webCG)

下野 康史
自動車ライター。「クルマが自動運転になったらいいなあ」なんて思ったことは一度もないのに、なんでこうなるの!? と思っている自動車ライター。近著に『峠狩り』(八重洲出版)、『ポルシェよりフェラーリよりロードバイクが好き』(講談社文庫)。
-
アストンマーティン・ヴァンキッシュ ヴォランテ(FR/8AT)【試乗記】 2026.3.14 英国の名門、アストンマーティンの旗艦車種「ヴァンキッシュ」に、待望の「ヴォランテ」が登場。5.2リッターV12エンジンを搭載した最上級コンバーチブルは、妥協のないパフォーマンスと爽快なオープンエアのドライブ体験を、完璧に両立した一台となっていた。
-
プジョーE-3008 GTアルカンターラパッケージ(FWD)【試乗記】 2026.3.11 「プジョー3008」の電気自動車版、その名も「E-3008」が日本に上陸。新しいプラットフォームに未来感あふれるボディーをかぶせた意欲作だが、その乗り味はこれまでのプジョーとは明らかに違う。ステランティスのような大所帯で個性を発揮するのは大変だ。
-
ジープ・アベンジャー アップランド4xeハイブリッド スタイルパック装着車(4WD/6AT)【試乗記】 2026.3.10 「ジープ・アベンジャー」のラインナップに、待望の「4xeハイブリッド」が登場。既存の電気自動車バージョンから、パワートレインもリアの足まわりも置き換えられたハイブリッド四駆の新顔は、悪路でもジープの名に恥じないタフネスを披露してくれた。
-
三菱デリカD:5 P(4WD/8AT)【試乗記】 2026.3.9 デビュー19年目を迎えた三菱のオフロードミニバン「デリカD:5」がまたもマイナーチェンジを敢行。お化粧直しに加えて機能装備も強化し、次の10年を見据えた(?)基礎体力の底上げを図っている。スノードライブを目的に冬の信州を目指した。
-
ホンダCB1000F SE(6MT)【レビュー】 2026.3.7 ホンダから満を持して登場した、リッタークラスの4気筒マシン「CB1000F」。往年のCBをほうふつさせるスタイルと、モダンなパフォーマンスを併せ持つネイキッドスポーツは、先行するライバルを追い落とすことができるのか? ホンダ渾身(こんしん)の一台の実力に触れた。
-
NEW
いまこそ、かき回したい! 新車で買えるおすすめMT車はこれだ!
2026.3.16デイリーコラム改良型「トヨタ・ヤリス」に、新たに6段MTモデルが設定された。現実的にMT車はレアであり、消滅する可能性もある時代だが……。これを機に、いま新車で買えるMT車のなかで、特におすすめできるモデルをピックアップしてみよう。 -
NEW
第331回:デカいぞ「ルークス」
2026.3.16カーマニア人間国宝への道清水草一の話題の連載。首都高で新型「日産ルークス」の自然吸気モデルに試乗した。今、新車で購入される軽ハイトワゴンの8割はターボじゃないほうだと聞く。同じターボなしの愛車「ダイハツ・タント」と比較しつつ、カーマニア目線でチェックした。 -
ポルシェ・タイカンGTS(後編)
2026.3.15思考するドライバー 山野哲也の“目”レーシングドライバー山野哲也が「ポルシェ・タイカン」に試乗。後編ではコーナリングマシンとしての評価を聞く。山野は最新の「GTS」に、普通のクルマとはだいぶ違う特性を感じているようだ。 -
アストンマーティン・ヴァンキッシュ ヴォランテ(FR/8AT)【試乗記】
2026.3.14試乗記英国の名門、アストンマーティンの旗艦車種「ヴァンキッシュ」に、待望の「ヴォランテ」が登場。5.2リッターV12エンジンを搭載した最上級コンバーチブルは、妥協のないパフォーマンスと爽快なオープンエアのドライブ体験を、完璧に両立した一台となっていた。 -
テスラ・モデルYプレミアム ロングレンジAWD(4WD)
2026.3.13JAIA輸入車試乗会2026電気自動車(BEV)「テスラ・モデルY」の最新モデルは、これまで以上に無駄を省いた潔いまでのシンプルさが特徴だ。JAIA輸入車試乗会に参加し、マイナーチェンジによってより軽くより上質に進化したアメリカンBEVの走りを確かめた。 -
ルノーから新型車「フィランテ」が登場 仏韓中の協業が生んだ新たな旗艦はどんなクルマ?
2026.3.13デイリーコラムルノーが韓国で新型クーペSUV「フィランテ」を世界初公開! 突如発表された新たな旗艦車種(?)は、どのようないきさつで誕生したのか? フランス、韓国、そして中国の協業が生んだニューモデルの概要と、そこに込められたルノーの狙いを解説する。





























