ホンダ・レジェンド ハイブリッドEX(4WD/7AT)
メチャメチャ気持ちいい 2018.03.29 試乗記 モデルライフ半ばのマイナーチェンジが施された、ホンダのフラッグシップセダン「レジェンド」に試乗。ボディー剛性の強化や4WDシステムの制御変更により追求された、“意のままになる走り”を確かめた。もはや意地の産物
レジェンドといえば、ホンダの最高級セダン。初代が出た時は、「クラウン」的なニッポンの高級セダンの対極をいくグローバルな香りが、とても進歩的に感じられたものだ。
あれから30余年。日本市場におけるレジェンドの存在感は、今やゼロに等しい。2017年の国内での販売台数は、わずか400台余り。月間ではなく年間の数字だ。
それでもまぁ北米では売れてるんだろうと思ったら、アメリカでも年間3000台程度で大苦戦しているという。それほどサイズの違わない「アコード」の100分の1レベル! 中国市場からはすでに撤退! そうだったんですか!
アメリカや中国で売れないホンダの高級セダンに、ビジネス的な存在意義はゼロだろう。それでも売り続け、かつ今回のように大きめなマイナーチェンジを施すのは、ホンダ全体の業績の良さが下支えする、フルラインメーカーとしての意地か。エライ!
このデザインはあんまりだ
とはいえ、現在の5代目レジェンドが登場した時、中身はともかく、私はそのデザインセンスのなさに驚嘆・落胆した。中でも最悪なのは、ぶっといV字型のメッキが入ったフロントグリルと、ブルーに光らせることもできる多眼型のLEDヘッドライトの組み合わせだった。「マジンガーZ」のコスプレとでも言えばいいでしょうか。
かつてグローバルな香りを漂わせたホンダの最高級セダンは、クラウンよりはるかに、というよりケタはずれに田舎くさいルックスに落ちてしまった。個人的に採点させてもらえば「0点」(個人の主観です)。こんなエクステリアを見せられたら、スーパーハンドリング4WDなんかもうどうでもいい! 人は見た目が9割! クルマも見た目が9割まではいかなくても5割くらい! あまりにもカッコ悪すぎる!
今回のマイナーチェンジは、そのルックスをかなり大幅に手直ししておりますが、実物はどうでしょう。
やっぱ0点でした。いや、マイナスかな……。フォルム全体に「エラ」が張りまくっていて、猛烈にセンスがない。グリルやヘッドライトをはじめとして、サイドもテールランプの中もトゲトゲと洗練されていないエラ的なエッジや尖(とが)りだらけ。
極めつけはフロントフード左右の峰だ。運転席に座ると、これがロッキー山脈のごとくそびえたって見える。左右の見切りを助けてくれる面もあるが、不格好すぎて絶句するしかない。近年のホンダデザインは、本当に当たりハズレが激しく、正直ハズレが多い。
まさにスーパーハンドリング
ここまでカッコ悪いと、もうどうしていいかわかりません! と思いながら試乗してビックリ仰天した。
走りがメチャメチャ気持ちいい!
なによりも気持ちいいのは、3.5リッターV6自然吸気エンジンのフィーリングだ。リリースによると、今回のマイナーチェンジでは何の変更もうたわれていないが、下から上まで全域でスムーズかつ快楽的。4000rpmあたりでスポーツVTECらしくバブルタイミングが切り替わると、「クワアアアアアァァァァァァァ~ン」と、超絶ホンダ的なレーシングサウンドがとどろく。
聞けば、スペックは変更ないけれど、サウンドコントロールは見直されたそうです。性能が同じでもサウンドが変わると、これほど感じ方が変わるんですね! 音質は「NSX」とほぼ同傾向ながら、レジェンドは自然吸気だけに快楽的には上! 久しぶりにホンダのエンジン屋魂を見せつけられた! 性能変わってないけどサウンドで! とにかくスゲエ! 近頃乗った高級セダンの中でダントツに気持ちいい!
エンジンがここまで気持ちいいと、フロントひとつ、リア左右ひとつずつ、合計3つのモーターの存在など正直どうでもよくなるが、エンジンと3つのモーターを精密に制御して紡ぎ出すスーパーハンドリング4WDの仕上がりはさらに自然になり、まさにスーパーハンドリング! 自由自在に曲がります! 高速道路のゆる~いコーナーでも路面に張り付いてキモチイ~! システム合計の最高出力は381ps、最大トルクは463Nmとのことですが、そんな数字もどうでもいい。とにかくめちゃめちゃキモチイ~!
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お手本のような乗り心地
乗り心地もすばらしくGOODだ。「曲げ」に4輪のトルク配分を使える分、足をしなやかにできる面もあるでしょうし、今回はボディー骨格の接着剤塗布範囲を拡大することで剛性を高め、ダンパー特性などのシャシーセッティングを変更し、世界的トレンドである「しなやかスポーティー」のお手本の仕上がりになっている。文句なし! サスペンションのモード切り替えはないけれど、そんなモン必要なし! これがベスト! 手放しで絶賛!
安全装備もより充実した。ホンダセンシングにトラフィックジャムアシストが初搭載され、65km/hまでの速度域でも、前走車との車間を保ちながら自車の走行車線をキープするよう、アクセル、ブレーキ、ステアリングの操作をアシストする。
ステアリングのアシスト力は弱めで、ドイツ系高級セダンやボルボのようにグイグイ曲げてはくれないが、結局現状どのクルマもステアリングホイールを握ってなきゃいけないのは同じなので、自動ステアリング操作は正直「なくてもいい」。優秀なアダプティブクルーズコントロールがあれば十分。レジェンドのそれは、車線を越えそうになると、音やステアリングの振動とともに戻すように働くイメージで、縁の下の力持ち的なアシスト感がかえって好印象でした。
ただ、ホンダセンシング自体の完成度は、相変わらず今ひとつで、左カーブで対向車に反応して一瞬自動ブレーキがかかるケースも散見された。そのへんは今後、クルマ選びの死命を制する部分だけに、精進をお願いしたいところです。
ホンダエンジンの信者にささぐ
ということで、マイナーチェンジを受けたレジェンドは、ルックスはさらに最悪になったが、走りの快楽に関しては、世界のEセグメントセダンの中でナンバーワンクラスといっていい。お値段は707万4000円のワングレードで、ドイツ系に対して明らかにお安いです。
これを一体どう評価すればいいのでしょう?
「このカッコが好きなら、とってもステキなお買い物」、そういうことでしょう!
レジェンドは、カッコはもちろんブランド力でもドイツ御三家に遠く及ばないが、「俺は人にどう見られようとカンケーない、俺がいいと思えばそれでいいんだ!」というパワフルな信念をお持ちのセダン好きなカーマニアにピッタリです。
なにしろ走りの気持ちよさはハンパじゃない。燃費はハイブリッドとしてはイマイチだけど(+ハイオク仕様)、このクラスでそれはあんまり関係ない。ホンダエンジンの信者さんにぜひおすすめしたい! NSXより気持ちいいです! だって自然吸気だもん!
(文=清水草一/写真=荒川正幸/編集=関 顕也)
テスト車のデータ
ホンダ・レジェンド ハイブリッドEX
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=5030×1890×1480mm
ホイールベース:2850mm
車重:1990kg
駆動方式:4WD
エンジン:3.5リッターV6 SOHC 24バルブ
モーター:交流同期電動機
トランスミッション:7段AT
エンジン最高出力:314ps(231kW)/6500rpm
エンジン最大トルク:371Nm(37.8kgm)/4700rpm
フロントモーター最高出力:48ps(35kW)/3000rpm
フロントモーター最大トルク:148Nm(15.1kgm)/500-2000rpm
リアモーター最高出力:37ps(27kW)/4000rpm(1基当たり)
リアモーター最大トルク:73Nm(7.4kgm)/0-2000rpm(1基当たり)
システム最高出力:382ps(281kW)
システム最大トルク:463Nm(47.2kgm)
タイヤ:(前)245/40R19 94W/(後)245/40R19 94W(ミシュラン・パイロットスポーツ3)
燃費:16.4km/リッター(JC08モード)
価格:707万4000円/テスト車=722万9520円
オプション装備:ワイヤレス充電器<フロント・リアセット>(5万4000円)/ドライブレコーダー<GPS/液晶モニター>(2万8080円)/フロアカーペットマット プレミアムタイプ(7万3440円)
テスト車の年式:2018年型
テスト開始時の走行距離:2044km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター(ハイオクガソリン)
参考燃費:--km/リッター

清水 草一
お笑いフェラーリ文学である『そのフェラーリください!』(三推社/講談社)、『フェラーリを買ふということ』(ネコ・パブリッシング)などにとどまらず、日本でただ一人の高速道路ジャーナリストとして『首都高はなぜ渋滞するのか!?』(三推社/講談社)、『高速道路の謎』(扶桑社新書)といった著書も持つ。慶大卒後、編集者を経てフリーライター。最大の趣味は自動車の購入で、現在まで通算47台、うち11台がフェラーリ。本人いわく「『タモリ倶楽部』に首都高研究家として呼ばれたのが人生の金字塔」とのこと。
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