トヨタ・ヴェルファイア ハイブリッド エグゼクティブラウンジ(4WD/CVT)
日本の景気も引っ張って 2015.03.30 試乗記 2015年1月にフルモデルチェンジを受けたトヨタの高級ミニバン「アルファード/ヴェルファイア」。今回は、「大胆不敵」なるデザインテーマを掲げたヴェルファイアの最上級グレード「エグゼクティブラウンジ」で、その実力を確かめた。初期受注のハイブリッド比率は約26%
新型アルファード/ヴェルファイア発売1カ月(2月25日時点)での受注台数は、アルファードが約2万台、ヴェルファイアが約2万2000台で、合計4万2000台。そのうちハイブリッドは約1万1000台。月販目標の6倍ということで、さすがは今や国産高級車の定番にして、一部の層にはカリスマ的な存在感を持つクルマだけに、スタートダッシュは上々……以上の勢いといっていい。
ただ、ここで注目すべきは、そこではないと思う。
この初期受注でのアルファードとヴェルファイアの販売比率は「48:52」という計算になるが、先代の販売比率がモデルライフを通じてほぼ4:6で安定していたことを考えると、アルファード側の巻き返し感が強い。新型ヴェルファイアも従来どおりの上下2段階のヘッドランプでなるほどヴェルファイアだが、顔つきのインパクトは、今回はアルファードのほうが強い。先代ではずっとヴェルファイアに押され気味だったアルファードだけに、販売現場(=トヨペット店)からは「今度はアルファードも押し出しの強いデザインにしてくれ」という要望があったんだとか。
また、ハイブリッド比率は約26%。先代におけるハイブリッドの販売比率が約2割だったから、今のところは、じわりとハイブリッドが伸ばしている印象だ。つまり、初期受注から見える新型アルファード/ヴェルファイアの特徴は「モデルやグレード別の人気は、基本的には先代同様だが、アルファードとハイブリッドが伸びている」ということだ。
さて、今回の試乗車はそれでもアルファードより売れ行きのいいヴェルファイアに、新型で話題となった“最高級社長車シート”を備えたエグゼクティブラウンジである。エグゼクティブラウンジはハイブリッドとV6に設定されるが、今回はハイブリッドである。
小技上手のトヨタらしさも
今やすっかり「社長車」あるいは「国会議員車」の定番となったアルヴェル(アルファード/ヴェルファイア)だが、このエグゼクティブラウンジは、従来の社長シートである「エグゼクティブパワーシート」のアップグレード版となる。
メインとなる2脚のセカンドシートは「エグゼクティブラウンジシート」という商品名で、中央に通路が残されていたパワーシートに対して、新しいラウンジシートは室内幅ギリギリいっぱい。秘書やカバン持ちが3列目に座るには、いちいちラウンジシートを電動で前倒し&手動スライドさせなければならなくなった。3列目への乗降性は明らかに悪化しているが、絶対的な主役は2列目なので、これでよし。ただ、主役を待たせすぎるのも問題なので、3列目への乗降時間は「3秒」という目安で開発されたという。
とりわけ幅方向にはパワーシートよりはっきり広くなって、収納テーブル(さすがにディナーを食べられるほどの面積はなく、せいぜいお弁当レベルだが)まであつらえられたラウンジシートは、従来のパワーシートが新幹線グリーン車なみだとすれば、航空機国内線のスーパーシートあるいはひと昔前の国際線ビジネスクラスなみ。キャビンギリギリに押し込められたシート幅で、左右シート間にいやらしいスキマができてしまったが、そこに小物を落としても、自然と足元に転がり出る工夫があるのは、さすが日本のVIP心を知り尽くした小技上手のトヨタである。
ちなみにこのラウンジシートは前記のエグゼクティブラウンジ・グレードにだけ与えられる専用シートとなる。そのハイエンドVIPグレードの価格は、このハイブリッドの場合だと、なんと700万円超! シート以外の室内調度も専用部分が多く、しち面倒くさいオプションもほとんどないフル装備。すでに「クラウンマジェスタ」よりも高価で、「センチュリー」と「MIRAI(ミライ)」に次ぐ高価格トヨタブランド車である。しかも、従来のパワーシートが、副社長あるいは地方議員(?)用に残されているのも心憎い。それにしても、新型アルヴェルはすさまじいばかりのグレード数・仕様数である。典型的な勝ち組ビジネスだ。
滑るように走る
V6のエグゼクティブラウンジでは足まわりも専用のコンフォートチューンになるが、ハイブリッドは全車がコンフォート寄りの仕立てとなるために、エグゼクティブラウンジでも、基本的な乗り味はハイブリッド全車と共通だ。
新型アルヴェルはセカンドシートにおける静粛性や乗り心地を大幅向上させるのが開発の大命題だったという。その努力は間違いなく功を奏していて、上下動や突き上げが別物のように抑制されているとともに、左右のロール量も減少しているので、整備された市街地や都市高速ではなるほど滑るように走る。
この新型アルヴェルはドライバーズカーとしてもシュアで快適、フトコロが深くなったフットワークが印象的。ハイブリッドは2.5リッター比で約200kg、V6より約100kg重く、きれいな路面ではなるほど重厚感があるが、わずかでも路面が荒れたり、速度域が上がったりすると、ドシバタする傾向は否めない。また、タイトなコーナーでは明らかに動きが鈍い。
ハイブリッドの体感的な動力性能は2.5リッターとV6の中間より、どちらかというと2.5リッター寄り。2.5リッターより信号発進では確実に力強いが、高速域での伸びを含めたトータル性能では、2.5リッターと大きな差は感じられない。ハイブリッド価格のモトを取るには、2.5リッター比だと10万km以上の走行距離が必要である。ドライバーズカーとしてなら、商品力と経済性のバランスは、やはり売れ筋の2.5リッターが頭ひとつぬけていると私は思う。
おっと、今回のテーマはエグゼクティブラウンジだった。まあ、今回はこのクルマをひとりでドライブするケースが多かったが、これは本来「おクルマを回しておきます」という裏方仕事の一場面にすぎない。またエグゼクティブラウンジを仕事に使うような地位の方々は、やはり都市部がメインというケースが大半だろう。その意味ではV6よりハイブリッドの利点が生きるシーンが多いし、対外イメージを考えてもハイブリッドが無難でございます。
アルヴェルの法人需要は2009年に「クラウン」のそれを上回って、その差は拡大傾向。しかも、この高価なエグゼクティブラウンジが予約受注では全体の1割(!)を占めたという。これを待っていたVIPはそれだけ多いということだ。となれば、ぜひともマジェスタ超えなんてケチくさい(?)ことをいわずに、1000万円オーバーのセンチュリー級のアルヴェル開発もぜひお願いしたい。今の若者が「いつかは」と憧れるアルヴェルこそが、日本の景気も引っ張ってほしい。
(文=佐野弘宗/写真=郡大二郎)
テスト車のデータ
トヨタ・ヴェルファイア ハイブリッド エグゼクティブラウンジ
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4930×1850×1950mm
ホイールベース:3000mm
車重:2240kg
駆動方式:4WD
エンジン:2.5リッター直4 DOHC 16バルブ
モーター:交流同期電動機
トランスミッション:CVT
エンジン最高出力:152ps(112kW)/5700rpm
エンジン最大トルク:21.0kgm(206Nm)/4400-4800rpm
フロントモーター最高出力:143ps(105kW)
フロントモーター最大トルク:27.5kgm(270Nm)
リアモーター最高出力:68ps(50kW)
リアモーター最大トルク:14.2kgm(139Nm)
タイヤ:(前)225/60R17 99H/(後)225/60R17 99H(ヨコハマ・ブルーアースE51)
燃費:18.4km/リッター(JC08モード)
価格:703万6691円/テスト車=718万7891円
オプション装備:ボディーカラー<ホワイトパールクリスタルシャイン>(3万2400円)/ツインムーンルーフ(フロントチルト&リア電動スライド+挟み込み防止機能付き)(11万8800円)
テスト車の年式:2015年型
テスト開始時の走行距離:832km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(2)/高速道路(7)/山岳路(1)
テスト距離:170.1km
使用燃料:16.9リッター
参考燃費:10.1km/リッター(満タン法)/10.5km/リッター(車載燃費計計測値)

佐野 弘宗
自動車ライター。自動車専門誌の編集を経て独立。新型車の試乗はもちろん、自動車エンジニアや商品企画担当者への取材経験の豊富さにも定評がある。国内外を問わず多様なジャンルのクルマに精通するが、個人的な嗜好は完全にフランス車偏重。
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