ドイツメーカーは“総力戦”【上海ショー2015】
2015.04.22 自動車ニュース![]() |
【上海ショー2015】ドイツメーカーは“総力戦”
2015年4月20日に開幕した上海モーターショー。世界18の国と地域から2000社近くの企業が出展し、ワールドプレミア(世界初公開)は109台と世界最大級の規模を誇る。その中でもとりわけ力が入っていたのがドイツメーカー。新車やコンセプトカーがめじろ押しだった。
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■中国は北米より重要
上海ショーの会場をひとめぐりして、最も勢いを感じたのはやはりドイツ勢だった。中でもフォルクスワーゲン(VW)グループとBMWは他の主要メーカーの数倍はあろうかという広大なブースを構え、中国市場専用に開発したモデルや最新技術を投入したプラグインハイブリッド車(PHV)などをこれでもかとアピール。自社の持てるリソースを出し惜しみせず、“総力戦”で中国市場を制覇しようという意気込みが伝わってきた。
それも無理はない。例えば乗用車の世界シェアで日本のトヨタと首位を争うVWは、2014年の世界販売台数(約1014万台)のうち中国だけで実に36%(約368万台)を占めている。一方、トヨタの最大市場は言うまでもなく北米(2014年の販売台数約237万台)だが、世界販売(約1023万台)に占める比率は23%にとどまる。要するに、VWにとっての中国はトヨタにとっての北米以上に重要な市場であり、悲願の世界首位に立てるかどうかも中国次第なのだ。
■VWは水も漏らさぬラインナップ
今回の上海ショーではデザイン重視のSUVや環境技術をアピールするPHVなどのワールドプレミアが相次いだが、VWブランドはあえて高級セダンのコンセプトモデル「CクーペGTE」と小型ハッチバックの「グラン サンタナ」の2車種をお披露目した。一見地味なようでいて、背後には中国市場を上から下までくまなくカバーしようともくろむVWの野心が見え隠れする。
中国市場におけるVWブランドのラインナップは、昨年までBセグメントの「サンタナ」「ジェッタ」、Cセグメントの「ラヴィーダ」「サジター」、Dセグメントの「パサート」「マゴタン」、フラッグシップの「フェートン」という大きく4段階に分かれていた。そこに今年1月、CセグとDセグの中間に位置付ける新型車「ラマンド」を投入。これは1年前の北京ショーで初公開したコンセプトモデル「ニューミッドサイズクーペ」の市販モデルである。
CクーペGTEはこれと同様、Dセグとフラッグシップの間を埋めるために開発中の新型セダンのスタディーだという。一方、グラン サンタナはセダンだけでは取り込めない入門車の顧客の幅を広げるのが狙い。Bセグのハッチバックはすでに「ポロ」があるが、より大きく立派に見えるグラン サンタナの追加投入で、見栄えを重視する中国人の心をつかもうという作戦だ。こうしたラインナップの拡充で、まさに水も漏らさぬ態勢を敷こうとしているのである。
その一方、富裕層やより個性を求める顧客層はVWグループの高級ブランドのアウディがカバーする。上海ショーではPHVの高級SUV「Q7 e-tron」やステーションワゴンのコンセプトモデル「プロローグ オールロード」を初公開した。このあたりのすみ分けは本当によく練られている印象だ。
■BMWとメルセデスは若い世代にアピール
VWグループほどではないにしても、BMWやメルセデス・ベンツも中国市場への傾斜を強めている。BMWは2014年の世界販売(約211万8000台、傘下のミニやロール・スロイスを含む)のうち中国が21.5%(約45万6000台)を、メルセデスは世界販売(約174万台、傘下のスマートを含む)のうち中国が16%(約28万台)をそれぞれ占めた。VWがアクセルを踏み込むなか、同じドイツ勢が追随するのは自然な流れだ。
上海ショーでのBMWの売り物は高級SUV「X5」のPHVバージョンである「X5 xDrive40e」。2013年のフランクフルトショーで初公開された「X5 eDrive コンセプト」の市販モデルだが、わざわざ上海ショーでのワールドプレミアを選んだのは中国市場でのSUV人気と、環境技術を重視する中国政府への訴求を考えたものだろう。
ワールドプレミアではないが、BMW傘下のミニは1月のデトロイトショーで発表した高性能モデル「MINIジョンクーパーワークス」をブースの主役に据え、個性的なクルマを求める若い世代にアピールしていた。
メルセデスも負けてはいない。同社はクーペとSUVを融合したスタイリッシュな小型クロスオーバー「コンセプトGLCクーペ」を世界初公開。1年前の北京ショーでお披露目した「コンセプトクーペSUV」を進化させたもので、年内にも市販モデルが登場すると予想されている。メルセデスもBMWと同様、主力である高級セダンの顧客層より若い世代の中国人の心をつかみたいという狙いがあるようだ。
(文と写真=岩村宏水)
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