第1回:250ccのスクーターから2300ccのクルーザーまで
輸入バイク チョイ乗りリポート(前編)
2015.04.30
JAIA輸入二輪車試乗会2015
ゴージャスなアメリカンクルーザーから、「原付免許」で乗れる50ccのスクーターまで、世界各国のバイクを集めた「JAIA輸入二輪車試乗会」が、神奈川県・大磯で行われた。初開催となる今回は、40台の試乗車が集結。その中から、編集部がピックアップした注目モデルの走りをリポートする。
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Lツインの鼓動を存分に味わえる
ドゥカティ・モンスター821……138万9000円
やっぱりイタリアン、まずは見た目でやられてしまう。ドゥカティの肝ともいえるL型2気筒エンジンは、水冷になって主張が控えめになったけれど、そのエンジンをつり下げる赤いトレリスフレーム、なまめかしいカーブを描くエキゾーストパイプ、凝った造形のアルミダイカスト製リアスイングアームなど、見ているだけで満足できるのだ。
イエローのリアスプリングを丸見え状態にするなど、メカニズムがむき出しという二輪車ならではの魅力も忘れていない。
現行「モンスター」には「1200」と今回の「821」があるけれど、雨の中で自分のような素人ライダーが操るなら、101psを発生する821でも十分すぎるほどエキサイティング。水冷インジェクション化されたエンジンは、昔のドゥカティも知っている身からすると、あっけないほどの扱いやすさなので、ウエット路面でも気を遣うことはなかった。
ハンドリングも名前から想像するほど過敏ではなく、乗り心地は硬くないし、身長170cmの僕でも楽に足が着く。初めての大型二輪車として選んでも問題ないだろう。
それでもLツインならではの世界をこれでもか! というほど味わえる。821ccの2気筒というと、同じイタリアの四輪車「フィアット500ツインエア」が近いけれど、鼓動感はそれとは比較にならないぐらいピュアでダイレクト。それが2000rpmから7000rpmあたりまでという幅広いゾーンで味わえる。車体の中にエンジンが収まるクルマと、それがむき出しのモーターサイクルの違いを教えられる一台でもあった。
進化を遂げてもやっぱり「ベスパ」
ベスパGTS250……67万5000円
僕は15年ほど前のベスパを足代わりに使っている。50ccエンジン搭載車と同じ車体に150ccを積んだ車種なので力に余裕があるし、125ccを超えるので高速道路も通行可能。首都高速を使ってクルマの取材現場に行くこともある。ところが今回の試乗会で最新型の「GTS250」に乗ったら、愛車への愛がうせそうになってしまった。
知らない人にはどれも同じに見えるかもしれないけれど、ベスパは伝統的に大小2種類のボディーを用意している。現在では「プリマベーラ125/50」と「スプリント150」などがスモールボディーに、「GTS」シリーズがラージボディーに属する。
乗ったのは車名で分かるようにGTSシリーズの250ccモデルで、エンジンは水冷4バルブ・インジェクションという現代流のスペックを持つ。だから高速道路でも楽に流れをリードできるし、単気筒らしからぬ静かさと滑らかさにも驚く。ウインドスクリーンとトップボックスを取り付けた試乗車なら、車名のとおりグランツーリスモとしても活躍できそうだ。
それでいてベスパらしさは健在。エレガントな曲線で描かれたフォルム、グレーとベージュのシックなツートンカラーは、同クラスの国産スクーターには求め得ない世界だろう。しかも二輪車では珍しいモノコックボディーと、スクーターらしい小径ホイールにこだわった車体は、独特の乗り味をもたらしてくれる。スクーターはつまらないという先入観を持っている人こそ、ベスパを試してほしい。
強者の優しさ
アプリリアRSV4ファクトリーAPRC ABS……253万8000円
市販車で争われるモーターサイクルレースの最高峰、スーパーバイク世界選手権(WSB)で、2014年にダブルタイトルを獲得したのがイタリアのアプリリア。ベスパやモト・グッツィなどを擁するピアッジオグループの一員で、50ccから1200ccまでという欧州ブランドでもかなり幅広いラインナップを誇る。
今回乗った「RSV4ファクトリー」はWSBのレプリカマシン。クルマなら「フェラーリ458スペチアーレ」のような存在か。ウイリーコントロール(!)まで備えたAPRC(アプリリア・パフォーマンス・ライド・コントロール)など、先進の電子制御を満載したことも特徴となっている。
走る前からその手ごわさを痛感した。身長170cmの僕では、片足の爪先しか接地しないほどシートが高いのだ。実は二輪車は、四輪車とは逆に重心が高いほうがサーキットでは有利。コーナーでの切り返しが楽になるからだ。でもスタートすると不安が解消していった。コンパクトさを追求して65度 V型4気筒とした999ccエンジンが、とにかく扱いやすかったのが最大の理由。並列4気筒より低回転からトルクフルなのに、回せば4気筒ならではのスムーズさがメインになり、不等間隔爆発なのに振動はなし。おまけにイタリアンらしい高揚感もあって、スポーツユニットとして非の打ちどころがない。
ハンドリングも、かなりキツめの前傾姿勢とは裏腹にトリッキーさは一切なく、雨の中でも安心して操ることができた。強いマシンは扱いやすい。そのフレーズを思い出させてくれたイタリアンスーパースポーツだった。
往年の「アメ車」に通じるものがある
インディアン・ロードマスター……396万3600円
アメリカのモーターサイクルはハーレーダビッドソンだけじゃない。ここで紹介するインディアンは、ライバルより2年早い1901年に創業した、アメリカ最古の二輪車メーカーだ。第二次世界大戦後に一度生産終了に追い込まれるが、21世紀になって復活した。今回乗ったのはツアラーモデルの「ロードマスター」だ。
写真で分かるとおり、同じツアラーのハーレーよりクラシカルないでたちで、ステッチを利かせたレザーシートなど、仕立てはかなり凝っている。装備が至れり尽くせりなのはこのクラスの特徴のひとつ。ロードマスターもクルーズコントロールやオーディオ、シートヒーターなどを備える。それこそ四輪車に近い充実ぶりだ。
アメリカンモーターサイクルでありがたいのは重心もシートも低いこと。身長170cmの自分なら両足がべったり着く。406kgという車重に慣れればUターンも安心だ。この日のような悪天候では特に感謝したくなる。そのわりにサイドスタンドやシフトレバー、ブレーキペダルがやや遠いのは、大柄なアメリカ人を想定しているからだろう。
1811ccもの排気量を持つ空冷V型2気筒は、ハーレーと感触が違っていた。スロットル操作に対する反応も、Vツインならではの振動も、とにかくまろやか。乗り心地もかなりソフトで、昔の四輪のアメリカ車を思わせた。ハーレーでよく使われる「鉄馬」というフレーズは、このロードマスターには似合わない。ライバルとの明確な作り分けに感心した。
(文=森口将之/写真=三浦孝明)

森口 将之
モータージャーナリスト&モビリティジャーナリスト。ヒストリックカーから自動運転車まで、さらにはモーターサイクルに自転車、公共交通、そして道路と、モビリティーにまつわる全般を分け隔てなく取材し、さまざまなメディアを通して発信する。グッドデザイン賞の審査委員を長年務めている関係もあり、デザインへの造詣も深い。プライベートではフランスおよびフランス車をこよなく愛しており、現在の所有車はルノーの「アヴァンタイム」と「トゥインゴ」。
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