ケンウッド「彩速ナビ」
2015年カーナビで行く圏央道-「寒川北ICー海老名JCT」
2015.07.03
カーナビの達人2015 SUMMER
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ハイレゾ音源の再生が可能に。
「彩」「速」に「高音質」が加わった!
彩り鮮やかな映像と操作レスポンスの速さに定評があるケンウッド彩速ナビ。2015年モデルは最上位グレードのタイプZがハイレゾ再生に対応。「彩」「速」に加えて「高品質」も身につけた!
いきなり測位テスト、その結果は?
東名高速よりも北側は昨年6月に相模原愛川IC~高尾山IC間が開通したことで、中央道から関越道を越えて、東北道の一歩手前の桶川北本まで一気につながった圏央道。ところが東名の南側は、新湘南バイパスに接続する茅ヶ崎JCTと寒川北ICまでは2年前に開通していたものの、海老名JCT~寒川北IC間は歯抜け状態。ここが、今年3月8日に開通したことで、関越や中央道、東名方面から湘南エリアへの移動がスムーズになった。その逆もしかり。すでに経済の活性化が数字で表れているようだ。
それを確かめるため、横浜から横浜新道を通って茅ヶ崎方面へ向かう。途中通る新湘南バイパスは、カーナビの達人にとっては思い出深い道。この高架下の道で、測位テストを行ってきたからだ。というわけで、急きょ、測位テスト。以前の本格テストでは藤沢側からスタートし、茅ヶ崎中央の手前でUターンして1周するコースだったが、今回は片道。Uターンせずに、そのまま茅ヶ崎方面へ向かう。それでも高架下をくねくね曲がりながら進む、カーナビの測位にとって厳しい道は健在。テストの結果は果たして?
いやはや、一生懸命、測位テストをしていた頃と比べると隔世の感がある。まったくズレることなく測位が安定しているのだ。以前なら、走行途中に高架の上の道にマッチングしたり、往路を走っているときに復路にマッチングしたり、交差点で止まった時の位置がずれていたり、測位を完璧にこなすナビのほうが珍しかったのだが、ケンウッド彩速ナビは、そんな難コースを走っているようなそぶりをまったく見せず、走行中の道を安定してトレースする。この道で、これほどの測位性能を示すのであれば、全国どこの道を走っても大丈夫だろう。そんな安心感がある。もちろん、そこには地図データに道路の傾斜データを組み込むなど、測位性能を向上させるための技術を、ケンウッド彩速ナビが採用しているおかげでもある。
ハイレゾ対応で音楽をスムーズに再生
と、試乗した機種の概要をまだお伝えしていなかった。試乗車の「プジョー3008」に搭載していたのは、ケンウッド彩速ナビの最上位シリーズ、タイプZの2DINモデル「MDV-Z702」。タイプZにはほかに横幅200mmのワイドボディー機「MDV-Z702W」というモデルもある。静電タッチパネルの7V型ワイドVGAモニターは、バックライトの透過率が高く、コントラストに優れた光沢パネルを採用したプレミアム・ファインビュー・モニターで、彩り鮮やかな映像には定評あり。OSにAndroidを採用することで、スマートフォンやタブレットのような操作感と操作レスポンスの速さも彩速ナビの持ち味のひとつで、操作のサクサク感は圧倒的だ。
クラウドのデータを利用して、音声で目的地検索等の操作が可能なVOIPUTをはじめとしたスマートフォンアプリとの連携も充実。Wi-Fiを装備し、Wi-Fi DMS機器とのワイヤレス接続にも対応している。そして、ケンウッド彩速ナビ タイプZ 2015年モデル最大のニュースが、ハイレゾ音源の再生に対応したこと。ハイレゾについては4ページ目でより詳しく説明するが、スタジオでレコーディングしたクオリティーのままで再生できるから、よりよい音で音楽が楽しめるのだ。このハイレゾ再生に対応しているのは、彩速ナビの中でもタイプZだけだ。
さっそく、音楽を聴きながらドライブする。ハイレゾ音源とCDクオリティーの音源を同じ曲で連続して保存したUSBを用意してくれていたので、それを聴くとハイレゾ音源の音のよさがよくわかる。音が滑らかで柔らかい感じなのだ。ハイレゾ音源は、高域の再生限界が20kHzに制限されたCDと違って、より高い周波数を再生できるから高域の伸びが素晴らしいなどとよく言われるが、それよりも素晴らしいのは全帯域にわたって密度が高く滑らかな音がすることだ。CDクオリティーの音源だと、ピンピンと耳に刺さるように聞こえるピアノの音もハイレゾ音源だと、その刺激が和らぎ耳当たりよく聞こえるし、CDクオリティーの音源だと音量を下げると痩せて聴くに堪えない感じになるボーカルも、ハイレゾ音源だとふくよかな歌声のまま耳にスーッと届いてくる。タイトル数は少ないし音源の購入価格が高いなど、まだまだハード先行の感がなきにしもあらずだが、一度よい音で音楽を聴いてしまうと、CDクオリティーの音源では満足できなくなってしまう。それだけ魅力は大きい。
目当ての店が簡単に見つかる
お昼時になったので、検索機能を使ってグルメスポットを探してみる。暑いので、そばといきたいところだが、ここは湘南。「この時期ならしらす丼でしょ」というわけで、しらす丼を食べられる店を探してみる。まずはVOIPUTで。ホーム画面のマイクのアイコンにタッチし、話しかけるだけで、目的の施設を探してくれる。通常なら、ここで近くのお店をいくつかリストアップしてくれるところだが、しらす丼では検索する範囲が狭すぎるのかうまくいかない。そこでNaviConの登場。まずスマホのブラウザで評判のお店の目星をつけて、NaviConで検索してみると、お店の場所が簡単に見つかった。それを彩速ナビに転送すれば、簡単に目的地設定ができるというわけ。カーナビ自体の50音検索を使う方法もあるし、ブラウザで調べた情報をもとに電話番号で検索する手もあるが、スマホで文字入力したほうが慣れているしスムーズなので使いやすい。
ルート探索は、推奨/距離優先/高速優先/一般優先/高速・距離の5ルートを同時に探索できる。ルートは一般道と有料道路で色分け。それぞれのルートの全行程を文字情報で見比べることもできる。
道案内だが、一般道の交差点拡大図は、地図をデジタルズームしたような感じ。ルート上の交差点や分岐点を先の先まで確認できる案内先読みガイドは、知らない道を走る時の安心感につながる。これは画面右上の次案内矢印にタッチすると表示される。音声案内だが、言葉よりもアラート音を多用している印象。例えば交差点で曲がるタイミングを教えてくれるジャスト案内は、交差点の直前で「ここを右です」などと教えてくれるのが一般的だが、ケンウッドの場合は「ポンポーン」という音で曲がるタイミングを教える。言葉の通知で慣れている身にとっては最初は戸惑うが、慣れてくるとこれで十分と思えてくるしタイミングがつかみやすい。地図のスケールも、50mとか100mなどあらかじめ決められた単位ではなく、120mスケールとか40mスケールなど、指先ひとつで自在に変えられるのもケンウッドならでは。これはピンチイン/ピンチアウトでスケールを調整した時に使える。
さて、茅ヶ崎西から新湘南バイパスに乗り、圏央道を東名方面へ向かってみる。寒川北から海老名JCTまでが、今年3月8日に新たに開通した区間である。交通量はまだ多くはなく、道はスムーズ。湘南に住む知人は「ここがつながったことで、都内へ行くのに原宿交差点を通らなくて済むようになり、非常に楽。所要時間も大幅に短縮できる」と言っていたが、湘南エリアに住む人の利便性が上がったのはもちろんのこと、埼玉や山梨など、海のない県から湘南への移動がものすごく楽になるメリットも大きいと思う。
それにしてもケンウッド彩速ナビの操作レスポンスの機敏さは見事としか言いようがない。一度、これを使ってしまうと、他のナビがもっさりと感じてしまう。有料にはなってしまったが、スマートループ渋滞情報をはじめとした情報取得もできるし、バージョンアップによってVICSワイドに対応するなど、ナビ機能も充実。操作性、ナビ機能、エンターテインメント機能のすべてがハイレベルな、バランスのとれたカーナビである。
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このナビだけの特徴
●グルメスポットの検索はスマホ連携が便利
クラウド型音声検索のVOIPUTなど多彩な検索方法で目的地の検索が可能なケンウッド彩速ナビ。そのうちのひとつがスマートフォンアプリのNaviConとNaviCon連携アプリを利用する方法で、今回はそれでグルメスポットを検索してみた。
今回はNaviConに直接、お店の名前を入力して場所を検索し、その位置データをカーナビに転送して目的地に設定したわけだが、NaviCon連携アプリには目的別、エリア別など、さまざまなものが用意されている。面白いところでは、「廃虚マップ」「にっぽん桜絶景」「発見!ニッポン城めぐり」「ダムナビ」などなど。中には有料のものもあるが、無料で使えるものが多いので、ぜひ活用したい。
●地図の更新方法は?
ケンウッド彩速ナビの地図更新はSDカードでのバージョンアップが通常のやり方だが、年2回の更新で一回2万円かかる。毎回更新するとしたら、5年間で20万円の出費だ。ところが彩速ナビには「KENWOOD MapFan Club」というプログラムが用意されていて、スマホユーザーなら年額3600円のMapFanプレミアムに会員登録しておけば、2015年から最大5年間、年2回の地図更新が利用できる。MapFanプレミアムはスマートループ渋滞情報の取得など、そのほかの有料サービスも利用できるから、地図更新は実質無料だ。
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●専用ドラレコがカーナビと連携する
ケンウッド彩速ナビには「KNA-DR500」という専用のドライブレコーダーがオプションで用意されている。これを組み合わせることで、事故等、いざという時の記録ができるほか旅の記録も残せるといった、安心感と新たな楽しさが手に入る。
ナビ本体の正確な自車位置情報を映像に加えて記録できるのは、カーナビ連携ドラレコならでは。またKNA-DR500自体はモニターを装備していないが、カーナビのモニターで映像を確認できるので使いやすさも抜群。また、手動録画や再生などの操作も、カーナビのタッチパネルでできる。
エンジンオフで駐車場に止めている間に、クルマが衝撃を受けると録画を開始する駐車録画モードも車上荒らしや当て逃げ対策に有利。手ぶれ補正機能内蔵で映像には安定感がある。
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●ケンウッド「MDV-Z702」が再生可能なハイレゾってなんだ?
オーディオ好きの間では、このところ話題にのぼることが多いハイレゾ。ハイレゾとはハイレゾリューション、つまり高解像度のことをいう。CDのデジタル音声は、サンプリング周波数44.1kHz、量子化ビット数16bitで記録されているが、その数値よりも高い数値で記録されたものをハイレゾ音源といい、2015年ケンウッド彩速ナビ タイプZは、サンプリング周波数192kHz、量子化ビット数24bitのWAVまたはFLACファイルの再生に対応している。
サンプリング周波数とは音をデジタル化するとき、1秒間にどれくらいの間隔で区切って記録するかを示すもので、44.1kHzだと1秒間に4万4100回。それが192kHzだと1秒間に19万2000回も区切るわけだから、より原音に近い状態で記録できる。量子化bit数は、どれくらいの細かさで信号の大きさを記録するかを示すもので、16bitだと2の16乗で6万5000段階だが、24bitだと2の24乗の1600万段階以上。音の強弱の差もより細かく表現できるから、密度が高く滑らかな音が楽しめるというわけだ。ハイレゾ音源はJVCのサイトHD-MUSICやe-onkyoなど、さまざまなサイトからダウンロード購入できる。
基本性能
●ナビ機能の特徴
ケンウッド彩速ナビはOSにAndroidを採用しているため、一般的なカーナビとは操作方法が少し異なる。一般的にはメニューボタンを押して検索等の操作を始めるが、ケンウッド彩速ナビの場合、HOMEボタンを押してホーム画面を呼び出し、画面を右から左にフリックすることで、検索メニューを呼び出す。という具合に、一般的なカーナビの操作に慣れている人にとっては一手間かかるため、慣れが必要かもしれない。だが、動作がスピーディーでスムーズなので一度慣れてしまえば快適に操作できる。普段、スマホやタブレットを使い慣れている人なら、なおさらだ。
ホーム画面はAV画面と地図が2分割で表示されるが、スマホとナビをBluetoothでペアリングしておくとマイクのアイコンが表示され、VOIPUTにより音声での操作も可能になる。これを使えば、ホーム画面からワンタッチで検索にアクセスできるほか、音楽の検索も可能と、便利に使える。スマートフォンユーザーなら、ぜひVOIPUTやKENWOOD Drive Info.などのカーナビ連携アプリを活用したい。
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●渋滞対応の特徴
KENWOOD Drive Info.というスマホアプリは、天気予報やフリーワード検索、ガソリンスタンド価格表示といった無料で使える機能もあるが、有料でスマートループ渋滞情報の取得ができる。情報提供道路は全国約70万kmに及び、生活道路を除けばほとんどの道を網羅するというきめ細かさ。実際に走っているドライバーから情報を吸い上げるプローブ情報を活用しているから、渋滞にきめ細かく対応できる。
渋滞情報は必要だが、有料なのはちょっと……という人はVICSを活用することになると思うが、ケンウッド彩速ナビ2015年モデルのタイプZおよびタイプXは本体プログラムのアップデートによりVICSワイドの利用が可能になる。VICSワイドとは従来のVICS情報に加え、一般道のリンク旅行時間の提供をFM-VICSで可能にしたもの。つまり、ビーコンがなくても渋滞を考慮したルート探索が可能になる。さらにとりあえず都内のみのサービスだが、タクシーを活用して得たプローブ情報も取得できる。ゲリラ豪雨等の情報も地図上に表示するようになり、かなり便利になりそうだ。
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●操作性の特徴
画面を指で払うフリックや画面を指でなぞるドラッグなど、スマートフォンやタブレットを操作するように扱えるカーナビはこのところ多いが、この操作レスポンスがダントツに素早いのがケンウッド彩速ナビだ。フリック&ドラッグが使えても反応が鈍くて「ナビだからしようがない」と思ってしまうものは多々あれど、ケンウッド彩速ナビはスマホと遜色ないスムーズさで、サクサクと操作できる。
これも、OSにAndroidを採用し、スマホを横に置きながら同等以上のレスポンスを得るべく開発したという努力のたまものだが、メニューをフリックで引き出したり、フリック&ドラッグで地図をスクロールしたりという動きが、実に気持ちいい。地図スケールの変更はピンチイン/ピンチアウトで可能。地図を親指と人差し指でつまむ感じにタッチし、指の間隔を広げれば詳細地図に切り替わるし、逆の動きで地図が広域側に切り替わる。ピンチイン/アウトで地図スケールを変えると、120mスケールなど、タッチパネルでは設定できない縮尺の地図を表示できるのも特徴だ。
●スマホ連携の特徴
音声検索のVOIPUTやKENWOOD Drive Info.など、スマートフォンアプリ連携はほかの項でも紹介してきたが、まだ紹介していない機能をここで紹介しておこう。KENWOOD Drive Info.には、ガソリンスタンド価格表示や駐車場満空情報、テレビdeみーたなどがある。このうち、ガソリンスタンド価格表示は無料で使える機能。駐車場満空情報やテレビdeみーたは、スマートループ渋滞情報とセットで有料になる。
ガソリンスタンド価格表示は、周辺のガソリンスタンドを検索したときに地図上に料金をポップアップ表示する機能。ハイオク/レギュラーの切り替えもでき、見知らぬ場所に出掛けたときでも安いガソリンスタンドを探しやすい。天気予報の情報も見られる。ホーム画面の天気アイコンをタッチすれば、現在地の天気の推移を時間ごとに見られるほか、全国の任意の場所の天気も確認可能。ドライブの予定を立てるのに便利だ。これはiPhone、Androidの両方で使えるが、iPhoneユーザーならiPhoneのSiriを使う感覚でメールのチェックやカレンダーの確認、メモ等の操作ができる。
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<機能表>
・地図メディア/容量:SSD/16GB
・ディスプレイ:7V型ワイドVGA
・地デジチューナー:フルセグ/4チューナー
・地図更新:最大3年間無料
・スマホ対応:iOS/Android
・Bluetooh:◯
・Wi-Fi:-
こんな人におすすめ
まず、ハイレゾ音源をクルマの中で聴きたいのなら、彩速ナビ タイプZがベスト。ほかにクルマでハイレゾを聴く手段がないわけではないが、手軽にハイレゾをハイレゾのクオリティーで楽しめるナビはタイプZのほかにない。またWi-Fi接続も含め、音楽が好きな人にはいい選択だろう。
スマホを愛用している人にも薦めたい。彩速ナビのユーザーインターフェイスはスマホやタブレットに通じるので違和感なく使えるし、スマホアプリとの連携も充実している。渋滞対応力や測位性能を含めてナビ機能も充実。ナビ機能からエンターテインメント性、操作性まで満遍なく高性能を求める人に向く。
<ケンウッド彩速ナビ、その他のラインナップ>
ハイレゾ音源が楽しめるタイプZにはもう1機種、MDV-Z702Wがある。これはMDV-Z702では画面の下にあるハードキーを画面右に移動し横幅を200mmに広げたモデルで、ワイドコンソール車にフィットする。タイプZよりワングレード下のタイプXはハイレゾ音源の再生に対応していないのと、タッチパネルが抵抗膜タイプに変わるのが大きな違い。こちらは7V型ワイドモニターを搭載した2DINサイズのMDV-X702と横幅200mmのMDV-X702Wのほかに、8V型モニターを搭載したMDV-X802Lがラインナップに加わる。よりリーズナブルなタイプLも3モデルある。
(解説=石田 功/写真=小河原 認)