カロッツェリア「サイバーナビ」
2015年カーナビで行く圏央道-「大栄JCTー神崎IC」
2015.07.02
カーナビの達人2015 SUMMER
![]() |
新採用の定額音楽配信サービスが快適な音楽クルーズを約束する
ARスカウターモードにスマートループアイ、ロードクリエイターなど、独自の機能を数多く搭載する、カロッツェリア「サイバーナビ」。2015年モデルは定額音楽配信で、エンターテインメント性を磨いた!
定額音楽配信サービスに対応
区間ごとに開通が相次ぐ圏央道のなかで、最も新しい開通区間が6月7日に開通した大栄JCT~神崎IC区間だ。大栄JCTは東関道の成田のすぐ先。神崎ICの北側は、つくば中央まではすでに開通しており、今回の大栄JCT~神崎IC間が開通することで、成田空港から都心を通らずに常磐道へ行けるようになった。また常磐道~北関東道経由、または常磐道~磐越道経由で東北道にもつながる高速道路網ができたし、順調に計画が進めば平成27年度中につくば中央IC~境古河IC間と、白岡菖蒲IC~桶川北本IC間も開通する予定。そうなると、東北道や関越道に行くのも都心を迂回(うかい)できるわけで、成田空港に到着した外国人観光客向けのツアーにも新たなルートの可能性が出てくる。経済効果がかなり期待できる開通といえるだろう。
この最新ルートを走ってみたのは、カロッツェリアの最上位グレード、サイバーナビ。6月から販売を開始した最新の2015年モデルである。試乗車の「ランドローバー・レンジローバー イヴォーク」に搭載していたのは、7V型ワイドインダッシュTVとナビ本体が独立した1DIN+1DINセパレートタイプの「AVIC-VH0999S」である。末尾のSはスカウターユニットを標準装備しているという意味で、スカウターユニットのないベーシックな「AVIC-VH0999」もある。なお、昨年までヘッドアップディスプレイを標準装備したモデルもあったが、今年のモデルではヘッドアップユニットはすべてオプション扱いになっている。
最新のAVIC-VH0999Sだが、ナビ機能自体は昨年モデルとほとんど変わっていない。「ナビ機能に関しては、昨年の時点でほぼ完成形だから」というのがその理由だ。確かに、自車位置の測位精度は群を抜いて優れているし、長年蓄積してきたプローブ情報をもとにしたスマートループ渋滞情報は、きめ細かく渋滞を表示できるだけでなく、目的地まで早く着くクオリティーの高いルートを提供してくれる。また、スカウターとプローブを組み合わせ、先の道路状況を車内にいながら写真で確認できるスマートループアイという機能もサイバーナビならでは。完成形というのもうなずける。
とはいえ、なにも新機能を加えなかったわけではない。2015年モデルに新たに加わったのは、ミュージッククルーズチャンネルというエンターテインメント機能。レコチョクと共同で開発した音楽定額配信サービスで、スマートフォンを利用して多彩な音楽をストリーミング再生できる。まあ、スマホアプリ利用の音楽ストリーミングなら、インターネットラジオを聴いたりすればいい話だが、チャンネルの多彩さとサイバーナビのタッチパネルで操作ができるあたりがミュージッククルーズチャンネルの持ち味。歌詞表示やノンストップミックス再生ができるのも特徴だ。
通信利用の音声検索が便利
そんなサイバーナビで新規開通区間をドライブする前に、まずは腹ごしらえ。暑い日は当然、そばである。さまざまな検索機能が使えるサイバーナビだが、ドライブ中に使い勝手がよいのはフリーワード音声検索。これはサーバーの検索データと音声認識エンジンを使い、通信ユニット経由で検索を行うクラウド型音声検索機能だ。試しに「近くのそば屋」と発声してみると、認識した結果が表示される。ここからはタッチパネルでの操作になるが、目的地設定まですべて音声で操作するよりも効率よくスピーディーに操作できるから気に入っている。また、音声の認識率も上がっている印象。聞けば、サーバーの音声認識エンジンを一新したという。見た目は変わらなくても、細かいところをリファインしているあたりが、さすがカロッツェリアである。
名前で選んだ「そば工房篠」は、何の目印もない分かりにくい場所にポツンとあったが、迷わず到着。地元産のそば粉を使い丁寧に作ったそばはおいしく、成田に到着した外国人パイロットや客室乗務員もわざわざ食べにくるような穴場の店のようだ。当たりの店を見つけた時はなんだかうれしいし、カーナビを褒めたくなる。
食事が済んだらいよいよ新規開通区間のドライブ。成田空港よりもさらに東側の大栄ICから東関道に乗り、成田方向に少し戻って大栄JCTから圏央道をつくば方面に向かった。
実は、今回の取材は、大栄JCT〜神崎ICが開通した6月7日の翌々日の6月9日。担当者に地図バージョンアップをお願いしておいたこともあるが、素早く地図に反映されているのには驚いた。新規開通道路は開通時にリアルタイムで更新されるし、地点データはほぼ毎月の頻度でデータが更新される。また、全データ更新も半年に1回できる。このデータ更新の頻度の高さは、サイバーナビが常に鮮度の高い地図を保てる秘訣(ひけつ)である。今回のドライブではお目にかかる機会はなかったが、一般道で地図にない新規開通道路を見つけた時、そこを走ると地図に道を書き加えることができ、次回その周辺を走る時には、その道を通るルートも引いてくれるロードクリエイターという機能も、サイバーナビにしかないありがたい機能である。
渋滞対応力はさすがサイバーナビ
大栄JCTから神崎ICまでは約10kmほど。常磐道と接続するつくばJCTまでも約50kmで、片側1車線の対面通行区間がほとんどだが、交通量が少ないためあっという間につくばに着く。途中はだだっ広い関東平野。神崎ICを越えるとすぐ利根川を渡って茨城県に入り、その先に進むと左手に巨大な大仏さまの後ろ姿が見えてくる。青銅製立像として世界一高いとギネスブックにも登録されている地上120mの高さを誇る牛久大仏だ。
つくば牛久ICで降りて市内に向かうと、いたる所が混雑しているのが地図上でわかる。その渋滞/混雑表示のほとんどは破線。これがスマートループ渋滞情報の表示。もしVICSなら、ほとんど渋滞や混雑は表示されていないはずで、ここまで細かい道の渋滞や混雑がわかるのはスマートループ渋滞情報ならではだ。これで、もしルート上に渋滞が発生して到着まで余計に時間がかかるようなら、すかさず時間を短縮できる新しいルートを提示してくれる。
今回、その恩恵にあずかったのは、自宅から成田へ向かう時。最初は、首都高4号線から都心環状線に入り、レインボーブリッジを渡って湾岸線〜東関道という、成田行きの王道のルートを提示していたのだが、途中で山手トンネルへ向かうルートに切り替わった。昨年の試乗時でも、同様のリルートがあり、見事に渋滞を回避できたので、サイバーナビが示すとおりに進んでみると、今回は山手トンネルから首都高3号線に入るのではなく、3月に開通した大橋JCT〜大井JCTを通って湾岸線に入るルートにリルートしたのだ。なるほど、距離は少し長くなるが、道路の流れは至ってスムーズ。都心環状の混雑を回避できるので、運転の疲労度も違う。今まで、浦安や幕張、成田方面へ行くには都心環状へ入るのが当たり前だったので、大橋JCT〜大井JCT間は羽田へ行くのに利用しても、逆方向へ行くことは考えたこともなかった。いいルートを教えてくれてありがとうという気分である。
このように、ナビ機能に関しては、素晴らしいの一語に尽きる。個人的には、道案内時のARスカウターモードはなくても困らないし、操作に対するレスポンスも決して早くはないなど、ライバルに比べて弱い面がないわけではない。ARスカウターモードを使わずに、通常の交差点拡大図に設定しておけば、多少操作がもたもたしても許せるのがサイバーナビ。ひとえに、カーナビとしての能力が突出しているから、というのが許せる理由だ。サイバーナビ搭載車から、レンタカーなど純正ナビ搭載車に乗り換えると、なんだか物足りないし不安になってしまう。それほどまでに、サイバーナビのナビ能力の魅力は絶大なのである。
このナビの特徴
●グルメスポットの検索はフリーワード音声検索で
グルメスポットの検索はフリーワード音声検索を利用。検索メニューの中のフリーワード音声検索にタッチすれば音声入力の待ち受け状態になるので、そこで検索したいワードを言う。すると認識した言葉がリスト表示される。「近くのそば屋」と言うと「近くのそばや」など、漢字変換するかしないかのワードが幾つかリストアップされるのはご愛嬌(あいきょう)。どれかひとつを選ぶと、近い順にそば屋がリストアップされる。上下キーを移動させると、自車位置からの位置関係が地図上で確認できる。昨年モデルも認識率は悪くなかったが、今年のモデルはサーバー上の認識エンジンを一新し、さらに高精度に認識する。
●地図の更新方法は?
サイバーナビは購入から3年間、無料で地図の更新ができる。地図更新の仕方は、パソコンで地図データをダウンロードし、そのデータをSDカードを介してカーナビに転送するか、カーナビの通信モジュールを使ってダイレクトにバージョンアップ(差分更新のみ)するかの2通り。対応パソコンはWindowsのみで、パイオニアのサイトからナビスタジオという専用ソフトをダウンロードして利用する。通信でバージョンアップする場合は時間がかかるため、ルート走行しないときに行うとよいだろう。なお、全データ更新はパソコンを使ったダウンロードのみ。
![]() |
![]() |
●ドラレコ代わりにもなるスカウターユニットを標準装備
「AVIC-VH0999S」をはじめとした型番末尾が「S」のモデルはクルーズスカウターユニットを標準装備している。100万画素のカメラとスカウターユニット本体のセットで、カメラから取り込んだ映像を解析して前車との距離を測ったり、映像にルート等の映像を重ね合わせたり、赤信号を認識したり速度看板を認識して画面に表示したり、さまざまな表示でドライバーをサポートする。
それだけではなく、前方の映像を記録することも可能。カロッツェリアでは簡易ドライブレコーダーと呼んでいるが、衝撃を検知したときにその瞬間の15秒手前から5秒後まで計20秒間録画保存するイベント録画機能もあるし、連続録画、手動録画も可能。パソコンソフトのナビスタジオで地図との連動再生も可能だ。
●カロッツェリア・サイバーナビが新採用した
ミュージッククルーズチャンネルとは?
ミュージッククルーズチャンネルは、スマートフォンを利用した定額制音楽ストリーミングサービス。レコチョクが持つ130万曲以上の音楽配信基盤をベースに、カロッツェリアの楽曲レコメンド技術や高音質テクノロジーを組み合わせて、車内で手軽に新しい音楽に出会える機会を提供する。
定期的に更新されるおすすめチャンネルから好みにあったチャンネルが選べるほか、再生中の楽曲の情報をもとに、最大24種類のチャンネルを提案するレコメンドチャンネルもある。例えばレコメンドチャンネルに表示された1960年代というキーワードを選んでおけば、1960年代の音楽が次々と再生されるという具合だ。ヒッツや特選アーティストのチャンネルリストを見ると若い人向けの邦楽が中心という印象もあるが、うまくレコメンドチャンネルをセットしたり、マイチャンネルに登録したりすれば、懐かしの洋楽が次々と流れるようにセットすることもできる。スマホや別売のリアモニターに歌詞を表示したり、楽曲からボーカルをカットしたりすることもできるから、カラオケ代わりにも使える。CDなどのメディアいらずで音楽が楽しめるのもストリーミングの良さだ。
![]() |
![]() |
基本性能
●ナビ機能の特徴
サイバーナビならではの案内機能の特徴のひとつがARスカウターモード。ドライブカメラで捉えた映像の上にルートなどの誘導情報を表示したり、前を走る車を捉えて車間距離を表示したり、赤信号が青に切り替わっても動かないとポンポーンというアラート音で教えてくれたり、高速道路を走行時に車線を認識して、車線を跨(また)いだりはみ出したりしたときに色分けして注意を喚起してくれたりと、さまざまな機能がある。適切な車間距離をとることは渋滞の緩和にも寄与する。
実写映像の上に、ガソリンスタンドやコンビニ、ファストフード店などのランドマークやポップアップアイコンを表示するのも、ARスカウターモードの特徴。信号機のない横断歩道の手前にある◇マークを認識して、横断歩道があることを教えてくれる横断歩道予告検知表示も便利だ。また、速度標識を検知して、実写画像から切り取った速度標識を画面の左下に表示する機能もある。速度標識は割と見逃しがちなのでありがたい。パソコン上で速度標識の場所を確認できるのも便利だ。
![]() |
![]() |
●渋滞対応の特徴
長年蓄積してきたプローブ情報に基づくスマートループ渋滞情報を車内で取得できるのが、サイバーナビをはじめとしたカロッツェリア・カーナビの渋滞対応力の強み。サイバーナビは、渋滞の表示が可能な対象道路の総延長は全国約70万kmにも及び、生活道路や細街路を除けばほとんどの道が渋滞表示の対象になる。
その情報に基づくルート探索もクオリティーが高いもの。スマートループで得た渋滞情報と区間旅行時間の情報に基づいて、目的地まで早く着くルートを導き出してくれるし、到着予想時刻も正確だから、ドライブの予定が立てやすい。またリアルタイムプローブにより、事故等の突発的な渋滞にも素早く対応。渋滞している道にそのまま進んだほうが早いのか、迂回(うかい)したほうが早いのかを判断して、迂回が早いと判断したときは新しいルートを提示してくれる。いざというときにはブースト機能により、目的地までより早く着くルートの探索も可能だ。
今回、サイバーナビはVICSワイドには対応していないが、スマートループがあればVICSワイドは不要ともいえる。
![]() |
![]() |
●操作性の特徴
スマートフォンのようにフリック&ドラッグ等で操作できるカーナビが増えたおかげで、それ以前のカーナビの主流だったタッチのみのカーナビは、いまや少数派といえるかもしれない。サイバーナビもフリックやドラッグの操作が可能だが、それは地図をスクロールさせるときのみ。メニュー操作等は従来どおりのタッチ式だ。だからスマホ操作に慣れた人は多少の違和感があるかもしれないが、慣れと好みの問題ともいえよう。
ボイスコントロールも使える。フリーワード音声検索は通信を利用し、サーバーの音声認識エンジンやデータから目的地を探してくるが、ローカルの音声認識も搭載しており、地図スケールの切り替えや、地図表示の変更、ソース切り替えといった操作も音声でできる。この音声認識は、ドライバーの声の質を継続的に自動学習するため、使い込むほどに認識率が高くなる。タッチパネルの操作レスポンスは決して早いとはいえず、今となってはもっさりした印象もあるサイバーナビだが、うまくボイスコントロールを使いこなすことで、スムーズな操作が可能になる。
![]() |
![]() |
●通信機能の特徴
「AVIC-VH0999S」はデータ通信モジュールを付属しており、スマートフォン連携以上の通信機能が使える。スマートループアイも通信を利用した機能のひとつ。ARスカウターユニットの映像をアップロードして、他のドライバーと共有できる機能で、これから行く先の交通情報を画像で確認することができる。以前は、2日前や3日前の画像もざらにあったが、最近は直近の画像が見られる場所は徐々に増えてきているようだ。
オンライン検索は、オープンしたばかりの店も見つけやすい。ラーメン好きには、ラーメンバンクの情報は魅力。全国2万4000件以上の人気ラーメン店を網羅しており、従来のカーナビの検索機能では見つけられない専門店も検索できるし、口コミやエッセイなどの情報もわかる。
天気予報のウェザーライブも取得可能。この天気の情報を渋滞予測データと照らしあわせてルート探索に反映させるきめ細かさもサイバーナビならではだ。テレビで見たスポットを検索できるテレビdeみーたや価格情報付きのガソリンスタンド検索などは、もはや当たり前。
---------------------------------------------------------------------
<機能表>
・地図メディア/容量:HDD/100GB
・ディスプレイ:7V型ワイドVGA
・地デジチューナー:フルセグ 4×4
・地図更新:最大3年間無料
・対応スマホ:iOS/Android
・Bluetooth:○
・Wi-Fi:-
こんな人におすすめ
もともとサイバーナビのユーザーなら、ほかのカーナビに買い換えた途端、物足りなくてがっかりすると思う。カーナビの買い換えを考えているサイバーナビユーザーなら、迷わず新しいナビもサイバーを選んだほうが後悔しないと思う。時間厳守がマストな仕事の人も、クルマを使って移動するならサイバーナビがベストだ。ミュージッククルーズチャンネルは、熱心な音楽好きというよりもむしろ、なんとなく音楽が鳴っていたほうが楽しいという雰囲気派に向く。なぜなら、音楽好きなら好きな音楽を積極的に聴くはずだし、好みじゃない音楽が突然鳴ったりすると、イライラするから(僕もそう)だ。
<カロッツェリア・サイバーナビ、その他のラインナップ>
サイバーナビのボディータイプは1DIN+1DINタイプの「AVIC-VH0999」のほか、8型モニター搭載の「AVIC-ZH0999L」、2DINタイプの「AVIC-ZH0999」、幅200mmワイドボディーの「AVIC-ZH0999W」の4タイプ。それぞれにスカウターユニットあり/なしのモデルがあり、スカウターユニット同梱(どうこん)のモデルは、「AVIC-VH0999S」のように型番末尾に「S」が付く。通信モジュールを同梱しているのも「S」モデルだけだから、サイバーナビの先進性を味わうなら「S」がオススメだ。
(解説=石田 功/写真=小河原 認)
