BMW X1 xDrive25i(4WD/8AT)
進化した走りとユーティリティー 2015.08.19 試乗記 BMWがラインナップするSUVの中で、最もコンパクトな「X1」がモデルチェンジ。新たにFFベースのプラットフォームが採用された2代目の実力を、オーストリアのアーヘンキルヒからリポートする。新たにFF系のプラットフォームを採用
Cセグメント系クロスオーバーとしては唯一の、FR系プラットフォームを用いたモデルとなっていたBMW X1。2009年秋のフランクフルトショーでのお披露目から、足かけ6年近くで実に73万台以上を販売したという。ざっくりならして1万台を上回る月販台数は、BMWの客筋や単価を考えれば、まずまずの成功といえるだろう。
2代目となるこのモデルが、一転してFFプラットフォームをベースに構築された理由に、社内的都合があったことは想像に難くない。BMWとMINIとでB~Cセグメントクラスのソリューションを共有化するという技術戦略に沿えば、このX1や、さもすれば次期型「1シリーズ」が“FFグループ”に属することは既定路線ともいえる。
一方で、市場の要求という見地から見ても、FFプラットフォームにしなければならない理由はあったはずだ。これまでのX1や1シリーズが抱える最大の問題は、FRプラットフォームでCセグメント級の車格を賄うがゆえに、スペースユーティリティーが大きくそがれることにあった。数的に圧倒的優位なFF勢のライバルと戦う上で、もう広さで商機は逃さない。その決意は「2シリーズ アクティブツアラー/グランツアラー」にも表れている。
もちろんこのX1もそうだ。「3シリーズ ツーリング」のアーキテクチャーをベースにしていた初代に対して、新型の全長はやや短めの4439mm。対して前後席間は最大で66mm長くなっており、その背後に備わる荷室の容量も505リッターと、初代に対して85リッターも拡大している。4:2:4のスプリットフォールディングとなる後席を畳めば、1550リッターとこちらも初代比で200リッター増のカーゴスペースが現れる寸法だ。ちなみに、背もたれを倒すにはアクティブツアラー系と同様、荷室からレバーひとつでの操作が可能となっている。
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
クリーンディーゼルの日本導入も期待大
このように、ユーティリティーを確認するほどにX1はアクティブツアラーとの共通項が多い。つまるところ、それのSUV版とも思えてくるわけだが、内装の意匠はまったく異なっていて、同じSUVの「X5」あたりのイメージにほど近いかたちでまとめられている。そして、さすがに静的質感はX5に及ばずとも、3シリーズあたりとなら比較しても遜色はなさそうなほど丁寧に作りこまれている。ちなみに前席の着座高は初代に対して36mm高められ、運転姿勢や視界などはいかにもSUV的なゆとりがもたらされる。が、それを十分にカバーする1598mmの全高は、1821mmの全幅と共に、都市部での駐車環境をある程度限定することになるだろう。
搭載されるエンジンはガソリンが3種、ディーゼルが4種の計7種類。いずれも最新のツインパワーターボテクノロジーにのっとったもので、気筒あたり約500ccの排気量となる。日本仕様としてどのグレードが設定されるかは未定だが、初代にも設定されていたガソリンモデルの「20i」「25i」あたりは投入されるだろう。共に2リッター4気筒の直噴ターボとなり、20iは192ps/28.6kgmを、25iは231ps/35.7kgmを発生する。8段AT、4WDとの組み合わせによる動力性能は、0-100km/h加速は20iが7.4秒の25iが6.5秒、最高速はそれぞれ223km/h、235km/hとなる。
初代の日本仕様においては設定のなかったディーゼルモデルも、アクティブツアラー、グランツアラーの動向をみるに、新型では導入が期待できそうだ。こちらは「18d」の場合で150ps/33.7kgmを発生、動力性能は0-100km/h加速が9.2秒、最高速が205km/hと必要十分といったところ。同じディーゼルではこの上に「20d」と「25d」が控えているが、性能や価格との折り合いからすれば、18dか20dあたりが検討されるグレードになるだろう。
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
最新世代のフルタイム4WDの恩恵
試乗はガソリンの25iを中心に行ったが、そのフィーリングは初代とはやはり別物だ。ともあれ、広々とした車内と高い視点というSUVらしい特徴を押さえたことで開放感は一気に高まった。加えて、各部の摺動(しゅうどう)感も滑らかで各種のノイズレベルも低く、軽快感や上質感も一段上へと引き上げられたことがよくわかる。乗り心地はライバルに対すれば若干硬めの印象だが、決して不快ではない。適度な重みを持つ電動パワーステアリングのアシスト感も含め、BMWのユーザーには違和感なく受けいれられるだろう。
ただし、操舵(そうだ)フィールからして前軸の“荷重感”をできるだけ隠すようにしつらえてあったアクティブツアラーやグランツアラーに対すれば、より車重が重く、フットプリントが大きいタイヤを履く分、X1では前輪駆動ベースゆえの癖がステアリングを通してわずかにうかがえる。例えば交差点右折のように直角に曲がりつつやや強めの加速を要するシーンでは、BMWらしい繊細なフィールを望む御仁は操舵フィールに“濁り”を覚えることもあるかもしれない。
が、そのぶんワインディングロードでの振る舞いで強く感じるのは4WD的なライントレース性の確かさだ。新型の「Xドライブ」は、これまでのマグナシュタイア製から電子制御多板クラッチをリアアクスル直近に配置するハルデックスタイプとなった。共にフルタイム4WDではあるものの、各輪の回転差のみならず、車両の三軸姿勢や舵角(だかく)、アクセル開度、過去の運転履歴などから駆動配分のスタンバイを行うなど、新型の制御は最新世代のものに改められている。判定から実作動までに要する時間は0.1~0.15秒。定速走行など低負荷領域では積極的に前輪駆動を多用してロスを減らしつつ、状況に応じて駆動力がリアへと伝わる仕組みだ。オンロードでのドライビングでもこのシステムは発進時から積極的に介入し、低中速コーナーではブレーキベクタリングと協調しながら、アクセルの操作に応じて後輪側の駆動力が旋回を推し進めていることが、車体の動きからも伝わってくる。車格や重心から予想されるアンダーステアは非常によく抑えられているという印象だ。
今秋以降、BMWジャパンでは新型車の投入が重なるもようだが、そのラインナップの中には、どうやらこの新型X1も含まれている。ライバルひしめくセグメントゆえ、装備や価格面でもインパクトのある内容を期待しつつ、しばし待たれたしというところだ。
(文=渡辺敏史/写真=BMWジャパン)
テスト車のデータ
BMW X1 xDrive25i
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4439×1821×1598mm
ホイールベース:2670mm
車重:1540kg(DIN)
駆動方式:4WD
エンジン:2リッター直4 DOHC 16バルブ ディーゼルターボ
トランスミッション:8段AT
最高出力:231ps(170kW)/5000-6000rpm
最大トルク:35.7kgm(350Nm)/1250-4500rpm
タイヤ:(前)225/55R17 97W/(後)225/55R17 97W
燃費:6.4リッター/100km(約15.6km/リッター、NEDC複合サイクル)
価格:--円/テスト車=--円
オプション装備:--
※数値は欧州仕様のもの。
テスト車の年式:2015年型
テスト開始時の走行距離:--km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--
使用燃料:--
参考燃費:--km/リッター
拡大 |

渡辺 敏史
自動車評論家。中古車に新車、国産車に輸入車、チューニングカーから未来の乗り物まで、どんなボールも打ち返す縦横無尽の自動車ライター。二輪・四輪誌の編集に携わった後でフリーランスとして独立。海外の取材にも積極的で、今日も空港カレーに舌鼓を打ちつつ、世界中を飛び回る。
-
日産エクストレイルNISMOアドバンストパッケージe-4ORCE(4WD)【試乗記】 2025.12.3 「日産エクストレイル」に追加設定された「NISMO」は、専用のアイテムでコーディネートしたスポーティーな内外装と、レース由来の技術を用いて磨きをかけたホットな走りがセリングポイント。モータースポーツ直系ブランドが手がけた走りの印象を報告する。
-
アウディA6アバントe-tronパフォーマンス(RWD)【試乗記】 2025.12.2 「アウディA6アバントe-tron」は最新の電気自動車専用プラットフォームに大容量の駆動用バッテリーを搭載し、700km超の航続可能距離をうたう新時代のステーションワゴンだ。300km余りをドライブし、最新の充電設備を利用した印象をリポートする。
-
ドゥカティXディアベルV4(6MT)【レビュー】 2025.12.1 ドゥカティから新型クルーザー「XディアベルV4」が登場。スーパースポーツ由来のV4エンジンを得たボローニャの“悪魔(DIAVEL)”は、いかなるマシンに仕上がっているのか? スポーティーで優雅でフレンドリーな、多面的な魅力をリポートする。
-
ランボルギーニ・テメラリオ(4WD/8AT)【試乗記】 2025.11.29 「ランボルギーニ・テメラリオ」に試乗。建て付けとしては「ウラカン」の後継ということになるが、アクセルを踏み込んでみれば、そういう枠組みを大きく超えた存在であることが即座に分かる。ランボルギーニが切り開いた未来は、これまで誰も見たことのない世界だ。
-
アルピーヌA110アニバーサリー/A110 GTS/A110 R70【試乗記】 2025.11.27 ライトウェイトスポーツカーの金字塔である「アルピーヌA110」の生産終了が発表された。残された時間が短ければ、台数(生産枠)も少ない。記事を読み終えた方は、金策に走るなり、奥方を説き伏せるなりと、速やかに行動していただければ幸いである。
-
NEW
レクサスLFAコンセプト
2025.12.5画像・写真トヨタ自動車が、BEVスポーツカーの新たなコンセプトモデル「レクサスLFAコンセプト」を世界初公開。2025年12月5日に開催された発表会での、展示車両の姿を写真で紹介する。 -
NEW
トヨタGR GT/GR GT3
2025.12.5画像・写真2025年12月5日、TOYOTA GAZOO Racingが開発を進める新型スーパースポーツモデル「GR GT」と、同モデルをベースとする競技用マシン「GR GT3」が世界初公開された。発表会場における展示車両の外装・内装を写真で紹介する。 -
NEW
バランスドエンジンってなにがスゴいの? ―誤解されがちな手組み&バランスどりの本当のメリット―
2025.12.5デイリーコラムハイパフォーマンスカーやスポーティーな限定車などの資料で時折目にする、「バランスどりされたエンジン」「手組みのエンジン」という文句。しかしアナタは、その利点を理解していますか? 誤解されがちなバランスドエンジンの、本当のメリットを解説する。 -
「Modulo 無限 THANKS DAY 2025」の会場から
2025.12.4画像・写真ホンダ車用のカスタムパーツ「Modulo(モデューロ)」を手がけるホンダアクセスと、「無限」を展開するM-TECが、ホンダファン向けのイベント「Modulo 無限 THANKS DAY 2025」を開催。熱気に包まれた会場の様子を写真で紹介する。 -
「くるままていらいふ カーオーナーミーティングin芝公園」の会場より
2025.12.4画像・写真ソフト99コーポレーションが、完全招待制のオーナーミーティング「くるままていらいふ カーオーナーミーティングin芝公園」を初開催。会場には新旧50台の名車とクルマ愛にあふれたオーナーが集った。イベントの様子を写真で紹介する。 -
ホンダCR-V e:HEV RSブラックエディション/CR-V e:HEV RSブラックエディション ホンダアクセス用品装着車
2025.12.4画像・写真まもなく日本でも発売される新型「ホンダCR-V」を、早くもホンダアクセスがコーディネート。彼らの手になる「Tough Premium(タフプレミアム)」のアクセサリー装着車を、ベースとなった上級グレード「RSブラックエディション」とともに写真で紹介する。






























