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第308回:クルマの進化はここまできている! ~次期「メルセデス・ベンツEクラス」に見る安全技術

2015.08.20 エディターから一言 河村 康彦
次期型「メルセデス・ベンツEクラス」。正式発表前とあって、カムフラージュ柄をまとっている。
次期型「メルセデス・ベンツEクラス」。正式発表前とあって、カムフラージュ柄をまとっている。 拡大

安全技術や運転支援システムへの、長年にわたる取り組みで知られるメルセデス・ベンツ。これからの市販モデルには、どんな装備が組み込まれ、この先クルマは、どんな進化を遂げるのだろうか? ドイツの説明会で得られた、最新情報を報告する。

これまでと同様に、次の「Eクラス」にも、最新の安全装備や運転支援システムがたっぷりと盛り込まれることになる。
これまでと同様に、次の「Eクラス」にも、最新の安全装備や運転支援システムがたっぷりと盛り込まれることになる。 拡大
こちらは、スマートフォンをキー代わりに使う「Digital Car key」の説明図。個人を特定できる電子機器を生かした技術である。
こちらは、スマートフォンをキー代わりに使う「Digital Car key」の説明図。個人を特定できる電子機器を生かした技術である。 拡大
説明資料の中には、次期「Eクラス」とおぼしき、コンピューターグラフィックの映像も。
説明資料の中には、次期「Eクラス」とおぼしき、コンピューターグラフィックの映像も。 拡大

「これからの安全技術」に触れる

上に「S」、下には「C」という重要な基幹モデルを従え、自らも全ラインナップ中の中堅どころというポジションを盤石のものとしてきた「メルセデス・ベンツEクラス」。
そんなEクラスの現行モデル「W212型」も、デビューからはや6年半。そろそろ次期モデルもデビューへのカウントダウンがスタート、というタイミングが迫ってきた。

そんな新型のデビューは、おそらく2016年1月のデトロイトモーターショーになる……などとうわさされる中で開催されたのが、独ダイムラー本社主催によるイベント「TecDay Mercedes-Benz E-Class Intelligence&Safety」である。

ドイツはシュトゥットガルトの本拠地に隣接するスタジオ内に特設された舞台で行われたのは、前述のタイトルからも明らかなように、次期Eクラスに盛り込まれる予定の、主に安全に関わる先進技術にフォーカスしたワークショップだ。

さまざまなテクノロジーごとにスペースが分けられた会場内には、実際のアイテムがディスプレイされるとともに、担当するエキスパートが説明を行い、各国から訪れたジャーナリストの質問に答える、という趣向だった。
次期Eクラスとおぼしきモデルも展示はされていたものの、内外装ともに入念な擬装が施され、さすがにまだその全容が明かされることはなかった。もっとも、今回のイベントの趣旨からしても、車両そのものの概要が明かされなかったのは、やむを得ないところではあるが。

というわけで、ここからは、今回明らかにされた新技術のいくつかをかいつまんでお伝えしていこう。

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Remote Parking Pilot:
便利で安全な駐車を目指して

メルセデス・ベンツ車に限らず、現在販売中のさまざまなモデルで、すでにパーキングアシストの類いが多く採用されていることを知れば、技術面でのハードルは意外に高くはないのかもしれない。
が、“素人目”で見る限り、「無人のクルマが移動する」という点でインパクト大だったのがこのアイテムだ。

概要としては、「車両から降りたドライバーが、専用アプリをインストールしたAndroid、もしくはiOSのスマートフォンを使って、あらかじめ設定した駐車スペースへの入出庫を行う」というもの。スマホのディスプレイ上に「指先で円を描く」ことで車両はスタート。既存の超音波センサーに加えて、360度カメラからの情報を用いることで、障害物も避けられるという。

残念ながら、今回のイベントではその実演を見ることはできなかったが、その動作の映像を見ると、狭いガレージへの出し入れなどでは絶大な効果を発揮するであろうことは、すぐに理解できた。
駐車は縦列/並列ともに可能で、スペースへの出入りは、前方からも後方からも行える。スマホと車両間の通信はBluetoothによって行われ、相対距離3mまでが操作可能範囲になるという。

「市場を問わず、不特定多数が出入りするショッピングセンターの駐車場などでも使用に問題ナシ」と担当エンジニア氏は胸を張ったが、同行したインポーター広報氏によれば「日本では現在、国土交通省と協議中」とのこと。
なるほど、無人のクルマが動くとなれば誰もが不安を抱きそうであるが、車外から障害物を確認しながら操作ができるという点では、「死角がある車内から操作するよりむしろ安全」という見方もできそうだ。

■イメージ映像:スマートフォンを使った駐車支援システム

 

 
第308回:クルマの進化はここまできている! ~次期「メルセデス・ベンツEクラス」に見る安全技術の画像 拡大
「Remote Parking Pilot」の操作イメージ。ドライバーは、車両にリンクしたスマートフォンの画面を指先でなぞるなどして、車外からクルマの入出庫を行う。
「Remote Parking Pilot」の操作イメージ。ドライバーは、車両にリンクしたスマートフォンの画面を指先でなぞるなどして、車外からクルマの入出庫を行う。 拡大
「Remote Parking Pilot」を使えば、ドライバーがガレージ内で乗車・降車する必要がなくなるため、これまでより狭いスペースへの駐車も可能になるという。
「Remote Parking Pilot」を使えば、ドライバーがガレージ内で乗車・降車する必要がなくなるため、これまでより狭いスペースへの駐車も可能になるという。 拡大
 
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PRE-SAFE Impulse side:
被害は極力小さくしたい!

メルセデス・ベンツが提唱する「アクシデントフリー」のビジョンに向けた、事故を未然に防ぐためのアクティブセーフティー技術の総称がPRE-SAFE。今回初公開されたこのPRE-SAFE Impulse sideは、側面衝突からさらに効果的に乗員を守るための、サイドエアバッグの効果を補完するテクノロジー。具体的には、「側面からの衝突を直前に察知し、乗員をドアから遠ざけることで、より高い安全性を確保しよう」というアイテムだ。

乗員を“移動”させるのは、フロントシートバックのサイドボルスター部分に仕込まれたエアチャンバー。ミリ波レーダーからの情報を基に、このチャンバーを衝突直前に高圧空気で膨らませ、ドアからの空間を確保してサイドエアバッグの効果を高めるとともに、「乗員に衝突を予知させることで、“不意打ち”になった場合よりも傷害を減らす効果がある」と担当のエキスパート氏は説明する。

実は今回のワークショップでは、これに関連した「PRE-SAFE Sound」なる技術も発表された。こちらは何と、衝突直前にスピーカーから“専用チューニングされたノイズ”を発生させることで、衝突時の衝撃音による耳への悪影響を緩和しようというテクノロジーである。
ヘッドホンで試聴させてもらったところ、それはちょうど、放送時間が終了したテレビから「砂あらし画面」とともに流れる、ノイズのようなものだった。

それにしても、耳の機能までを保護しようというのは前代未聞のアプローチ。メルセデスの際限のない安全へのこだわりを、あらためて教えられた思いがした。

「PRE-SAFE Impulse side」の作動イメージ。横方向からの衝突前にエアチャンバー(写真の赤い部分)を膨らませることで、衝突後の安全性を一段と高める。
「PRE-SAFE Impulse side」の作動イメージ。横方向からの衝突前にエアチャンバー(写真の赤い部分)を膨らませることで、衝突後の安全性を一段と高める。 拡大
 
第308回:クルマの進化はここまできている! ~次期「メルセデス・ベンツEクラス」に見る安全技術の画像 拡大
こちらは、シートベルトにエアバッグの要素を持たせた「Beltbag」の展開イメージ。事故の際シートベルトにかかる圧力を分散することで、例えば高齢者や病人など、体の弱い乗員を保護できる。
こちらは、シートベルトにエアバッグの要素を持たせた「Beltbag」の展開イメージ。事故の際シートベルトにかかる圧力を分散することで、例えば高齢者や病人など、体の弱い乗員を保護できる。 拡大

Active Brake Assist:
250km/hからの衝突回避!?

ミリ波レーダーに加え、ステレオカメラからの情報も活用することで、いわゆる“自動ブレーキ”のシステムを大幅に拡張、進化させたのがこのアイテム。単なる前方の障害物のみならず、側方から接近する車両や歩行者も検知。ブレーキングによる衝突回避を試みると同時に、それで不足と判断された場面ではステアリングの操作も介入するという。

7km/hの低速から、250km/hの高速まで作動速度として対応するというのは、いかにも「アウトバーンの国生まれ」らしいシステムという印象。例えば、高速走行中の前方に突然渋滞の最後尾が現れるといった場面で、「減速のみでは衝突が避けられない」と判断されれば、隣のすいたレーンへの車線変更を試みる制御も盛り込まれている。

さらにそれでも衝突が避けられない場合でも、最大でマイナス90km/hの減速を行い、被害を最小限に食い止めるという。

次期型Eクラスは、ここに紹介した以外にも、レーンマークのない道路でもステアリングアシストを行う「次世代型のインテリジェントドライブシステム」が盛り込まれるほか、クラウドネットワークを活用し他メーカーと情報共有することを想定した「新たなテレマティクス」が採用されるなど、話題満載。

そうしたさまざまなアイテムを蓄積していくと、「なるほど、その先には“真の自動運転”が見えてくるんだな……」と、そんなことも考えさせられるワークショップであった。


■イメージ映像:自動ブレーキによる80km/hからの衝突回避 

(文=河村康彦/写真&動画=メルセデス・ベンツ)

次期「Eクラス」では、ブレーキングだけでなくステアリング操作もサポートすることで、一段と高度な衝突回避を行うという。
次期「Eクラス」では、ブレーキングだけでなくステアリング操作もサポートすることで、一段と高度な衝突回避を行うという。 拡大
車線のない道でも走行レーンをキープできることを示す、イメージ図。
車線のない道でも走行レーンをキープできることを示す、イメージ図。 拡大
84個ものLEDが用いられる、次期型「メルセデス・ベンツEクラス」のヘッドランプ。
84個ものLEDが用いられる、次期型「メルセデス・ベンツEクラス」のヘッドランプ。 拡大
多数のLEDでヘッドランプを構成することにより、配光の自由度が増す。図のように、対向車を避けての照射も可能となる。
多数のLEDでヘッドランプを構成することにより、配光の自由度が増す。図のように、対向車を避けての照射も可能となる。 拡大
 
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河村 康彦

河村 康彦

フリーランサー。大学で機械工学を学び、自動車関連出版社に新卒で入社。老舗の自動車専門誌編集部に在籍するも約3年でフリーランスへと転身し、気がつけばそろそろ40年というキャリアを迎える。日々アップデートされる自動車技術に関して深い造詣と興味を持つ。現在の愛車は2013年式「ポルシェ・ケイマンS」と2008年式「スマート・フォーツー」。2001年から16年以上もの間、ドイツでフォルクスワーゲン・ルポGTIを所有し、欧州での取材の足として10万km以上のマイレージを刻んだ。

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